保険の免責額分を修理費として従業員に請求しているのですが・・・。

【質問】

 

当社は、運送業を営んでおり、10台以上のトラックを保有しています。

 

従業員が、業務中に事故を起こした場合には、保険の免責金額を修理費として請求しています。

 

先日、ある従業員から、これは労働基準法違反だ、と言われたのですが、本当でしょうか?

 

ちなみに、修理金額が、免責金額以上になっても、請求する額は、あくまで免責額だけで、修理費用が、免責金額以下の場合は、その額をを請求しています。

 


【回答】

 

労働基準法では、予め賠償額を定めることを禁止しています。

 

ご質問の内容から判断しますと、従業員の方が、指摘されている通り、労働基準法違反の可能性が高いです。

 

 

【解説】

 

労働基準法では、予め損害賠償の額を定める契約をしてはならないとされています。

 

これはどういうことかと言います、今回の、ご質問の例で言えば、実際に、事故が起きていない段階で、保険の免責金額を従業員に負担させる、という約束は、

 

まさに、予め賠償額を決めている、ということとなります。

 

 

 

ご質問の中にありますように、修理費が、免責金額を上回っても、免責金額のみ従業員に負担させることは、確かに、従業員にとっては、メリットがある場合が考えられます。
  
しかし、労働基準法は、従業員にとってのメリットの有無は関係なく、あくまで賠償の額を予め決める行為を禁止しています。

 

実際、運送業といった業務に車両を使用する業種では、このようなことが慣習的に行われているようですが、トラブルに繋がる危険性があるので、是非、この機会に、改善するようにして下さい。

 


 

ところで、誤解されないで欲しいのですが、労働基準法は、あくまで、「予め賠償の額を決める」行為を禁止しているのであって、従業員が、起こした事故によって、会社が被った被害額に応じた賠償を請求することは差し支えありません。

 

ですから、従業員が入社する場合には、万一、事故等を起こして車両等を破損させた場合に、過失等の割合に応じた修理費を負担する、といった趣旨の内容であれば、賠償の額が決まっていないので、覚書等を交すことは可能と言えます。
 

 


ただ、ここで1つ注意して欲しいことがあります。

 

先に、書いたように従業員が起こした事故に対して、従業員の過失等に応じて、修理費を負担させることは可能です。

 

となると、例えば、従業員が、単独で起こした事故の場合、事故自体は、100%従業員の過失となります。

 

ですから、修理費の100%を従業員に請求することも可能と思われます。

 

 
 
しかし、会社は、従業員を雇用し、利益を上げている訳ですから、従業員が、業務を行うにあたっては、従業員が、事故等を起こすかもしれない、というリスクの責任を負う必要があります。

 

つまり、事故が、飲酒運転などの従業員に重大な故意や過失がある場合には別ですが、通常に業務を行っている間の事故等については、事故自体過失は、100%従業員にあったとしても、修理費用を全額負担させることはできず、会社が、負担すべきリスクに相当する額は、差し引く必要があります。
 
 


ただ、難しいのが、会社が負担するリスクの相当する額がいくらなのか?

 

というものは法律で定めがあるわけではないので、明確な金額がわからないのが実情です。

 

ですから、もし、従業員が事故を起こし、修理費用を負担させる場合には、従業員に対して、請求する修理費用についての会社の考え方をよく説明して、従業員に納得してもらうことが、トラブルうを防ぐための現実的な方法かと言えます。

 

 

【まとめ】

 

s_380fafee303e21845f881c792c14654e_s.jpg

 

労働基準法では、あらかじめ損害賠償の額を定める契約を禁止しています。

 

これは、従業員に事故前から保険の免責金額などを負担させる取り決めが該当し、違法となります。

 

この法律は、従業員へのメリットの有無に関係なく、賠償額を事前に決める行為を一律で禁じています。

 

 

 

ただし、実際に事故が発生した場合、会社が被った損害額に応じた賠償を従業員に請求することは可能です。

 

例えば、従業員の過失割合に応じた修理費用を負担させる内容で覚書を交わすことは許されます。

 

 

 

ただし、従業員の過失が100%の場合でも、通常の業務中の事故であれば、会社はリスクを負うべきであり、修理費の全額を請求することは適切ではありません。

 

会社が負担すべきリスク相当分の具体的な額については法律で明確に定められていないため、事故後に修理費を請求する際は、会社の判断基準を従業員に説明し、納得を得ることが重要です。

 

これにより、トラブルを防ぐことが現実的な対応といえます。