そもそも健康保険の扶養に入るメリットと扶養の範囲は?
今回は、健康保険の扶養に入るメリットと扶養の範囲について、ご説明したいと思います。
健康保険の扶養に関する業務は、労務管理において最も頻度が多い業務となります。
健康保険の扶養については法律が複雑で、様々なケースが出てくるため、経営者の方々には、非常に頭を悩ますところです。
しかし、健康保険の扶養は労働者にとって生活に直結する問題ですので、意識が非常に高いです。
そのため、健康保険の扶養の業務は手続きをスムーズに行うことが必要となります。
そのためには、健康保険の扶養に関して正しい知識を持っていることが重要です。
今回から数回にわたって、健康保険の扶養について経営者の方、事務担当者の方、そして労働者の方にも知っておいていただきたいポイントを細かくご説明したいと思いますので、今回のシリーズも是非お読みいただければと思います。
健康保険の扶養に入るメリット
まず健康保険の扶養に入ると、どんなメリットがあるのをご説明したいと思います。
健康保険の扶養に入ることは、非常に多くのメリットがあります。
ここでは、ご主人様が健康保険の加入者で、その奥様が健康保険の扶養に入るケースを基に健康保険の扶養のメリットについてご説明したいと思います。
奥様が、ご主人様の健康保険の扶養に入ると、奥様も健康保険の保険給付の一部を受けることができるようになります。
一番身近な例としては、風邪をひいて病院に行ったときに、健康保険の自己負担分、通常3割ですが、その3割だけ自己負担を払えば治療を受けたり、薬をもらったりすることができます。
また、出産や死亡等についての保険の給付を受けることができます。
さらに、奥様がご主人様の健康保険の扶養に入る場合、奥様に対して保険料が発生しません。
つまり、奥様自身は、保険料を払うことなく保険給付を受けることができるわけです。
さらに、奥様が、ご主人様の健康保険の扶養に入っても、ご主人様の保険料が上がることもありません。
健康保険の扶養に入ることで、保険料を払わずに健康保険の保険給付を受けることができる、このようなメリットがあります。
ですから、労働者にとって健康保険の扶養は、非常に重要な問題となってきます。
ここで用語について少し解説したいと思います。
ここまでご主人様が、健康保険に加入しているという言い方でご説明してきましたが、加入者のことを法律用語で被保険者と言います。
また、扶養に入る人は、法律用語では被扶養者となります。
正確に言うと、被扶養者と認定されることが正しい言い方です。
ですから、「奥様が、被保険者であるご主人様の扶養に認定される。」が、法律的には正しい言い方となります。
ただし、今回のブログでは、加入者や健康保険の扶養に入る、といった皆さんがよく使う言葉で説明していきたいと思います。
健康保険の扶養に入ることができる範囲とは?
それでは次に、健康保険の扶養の範囲についてお話ししたいと思います。
今ご説明しましたように、健康保険の扶養に入ること、つまり健康保険の被扶養者となることは、非常に大きなメリットがあります。
しかし、誰でも健康保険の扶養に入ることができるわけではありません。
法律で健康保険の扶養に入ることができる範囲が定められています。
法律では、健康保険の加入者の3親等内の親族が健康保険の扶養に入ることができると定められています。
下の図を見ていただけるとわかりますが、3親等内の親族というと、かなり遠い親族まで健康保険の扶養に入ることができます。
本人の父母、祖父母、曾祖父母ももちろんですが、配偶者の曾祖父母まで健康保険の扶養に入ることができます。このような形になります。
ここではまず、健康保険の扶養に入ることができるのは、加入者の3親等内の親族までと覚えておいていただければと思います。
扶養の範囲の注意点について
ここでは扶養の範囲についていくつか注意すべき点をお話ししたいと思います。
今ご説明したように、扶養に入ることができる範囲は、加入者の3親等内の親族と法律で決められています。
当然ですが、それ以外の人は、加入者の扶養にはいることはできません。
扶養に入ることができない範囲で注意すべき点ですが、おじさんとおばさんは健康保険の扶養に入ることができますが、おじさんとおばさんの子供、つまり加入者本人から見ていとこは、健康保険の扶養に入ることはできません。
それに対して、加入者本人の兄弟姉妹の子供、つまり甥や姪は健康保険の扶養に入ることができます。
ここは注意すべき点だと思います。
あまり遠縁の親族を健康保険の扶養に入れるケースは少ないですが、甥や姪やいとこのケースはよく相談を受けることがありますので、いとこは駄目ですが、甥や姪は大丈夫ということを覚えておいていただければと思います。
もう一つ、配偶者についてですが、通常の配偶者であれば婚姻届を出していますが、婚姻届を出していない場合でも、内縁関係が認められれば健康保険の扶養に入ることができます。
このケースは、結構あります。
内縁の夫、内縁の妻ということで、内縁関係を証明する書類が必要となります。
内縁関係を証明するための戸籍や住民票などが必要となりますが、内縁関係が認められれば正式な夫婦でなくても、配偶者を健康保険の扶養に入れることができます。
さらに、内縁関係が認められた場合には、その内縁の配偶者の子供と両親も健康保険の扶養に入れることができます。
ただし、正式な夫婦の場合は、健康保険の扶養に入れることができるのは祖父母まで可能ですが、内縁の配偶者の場合は子供と父母だけとなります。
いずれにしても、扶養の範囲で注意すべき点は、内縁関係でも配偶者を健康保険の扶養に入れられることと、甥や姪は健康保険の扶養に入れるけれど、いとこは駄目ということを覚えておいていただければと思います。
ただし、3親等内の親族であれば無条件に加入者の健康保険の扶養に入れるかというとそうではありません。
当然、いくつか条件があります。その条件につきまして、次回以降のブログでご説明していきたいと思います。
まとめ
今回お話しましたように、健康保険の扶養に入る、健康保険の被扶養者となった場合、保険料を納めることなく、健康保険の保険給付の一部を受けることができるようになります。
そして健康保険の扶養に入ることができる範囲は、本人から見て3親等内の親族が可能となってきます。
また内縁関係でも配偶者を健康保険の扶養に入れられることと、甥や姪は健康保険の扶養に入れることはできますが、いとこは健康保険の扶養に入れることができない、このようなところを、今一度確認していただければと思います。