労務管理用語シリーズ② 法定休日と法定外休日

今回は、法定休日と法定外休日についてお話したいと思います。

法定休日と法定外休日は、どちらも休日には変わりありませんが、それぞれ持っている意味が違います。

法定休日も法定外休日も割増賃金の計算や法定労働時間にも重要な影響を与える事項のため、法定休日と法定外休日の違いを正しく理解することは労務管理において重要なポイントです。

法定休日と法定休日

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まず 休日について、労働基準法の規定についてお話したいと思います。

労働基準法第35条において、使用者(使用者は会社とか経営者と思っていただければ結構です)は、「労働者に対して少なくとも1週間に1日又は4週間に4日の休日を与えなければならない」とされています。

つまり、法律上、会社は、労働者を1週間に1日又は4週間に4日だけ休ませれば良いとされています。

この1週間に1日又は4週間に4日、この必ず与えなければいけない休日のことを法定休日と呼びます。

ところで、「1週間に1日だけ休日を与えれば良い」と言われると、「少しおかしいのではないですか?」というように思われるかもしれません。

「実際多くの会社は。もっともっと休日多いじゃないですか?」

確かに、休日が1週間に1日となると、1週間は、1年間で52週か53週ありますので、法律通りに言えば、1年間に52日か53日しか休日を与える必要はありません。

しかし、現実には100日以上の休日を与えている会社もたくさんあります

では 何故そのようなことが起こるのか?と言いますと、労働基準法で定められている法定労働時間との関係で、1週間に1日又は4週間に4日以上の休日が必要となります。

法定労働時間は、1日8時間、1週間 一部例外で44時間がありますが、原則は40時間とされています。

仮に、1日の勤務時間が8時間であった場合で、1週間で5日勤務した時点で労働時間は、40時間になります。

ですから、法律上は、1週間に1日与えなければいけない休日を日曜日とすれば、日曜日だけ与えれば良いのですが、1週間に6日勤務する形となるので、労働時間は、トータルで48時間になってしまい、法定労働時間を超えてしまい、結果的に法律違反の形となってしまいます。

ですから、日曜日以外に最低でも、もう1日を休日にする必要があります。

日曜日を労働基準法第35条で定められている、必ず与えなければいけない休日とすれば、日曜日が法定休日となります。

そして、日曜日以外の休日を法定外休日と呼びます。

つまり、法定休日というのは、労働基準法で必ず与えなければいけない休日のことを言います。

そして法定外休日は、それ以外の休日を言います。

例えば、先程お話した法定労働時間との関係で与える休日又は夏休みとかゴールデンウィーク 年末年始等の福利厚生の一環として与える休日が考えられます。

何故、法定休日と法定外休日との区分が必要?

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では、何故 法定休日と法定外休日、同じ休日なのに、このように区分する必要があるのでしょうか?

それは、割増賃金の計算方法が違ってくるからです。

労働基準法第37条では「労働者を休日に労働させる場合には、最低でも3割5分以上の休日割増賃金を支払わなければならない」と規定されています。

ところで、この規定の休日ですが、これは法定休日のことを言います。

ですから、3割5分以上の割増賃金が必要となるのは、あくまで法定休日に労働させた場合となります。

例えば、勤務時間が1日8時間の会社で、土曜日と日曜日が休日で、日曜日を法定休日とすれば、土曜日は法定外休日となります。

労働基準法第37条で求められている休日割増は、日曜日に労働させた場合です。

ですから、日曜日に労働させた場合には、仮に時給1,000円とした場合、1時間当り1,350円(1,000円×1.35)の休日割増賃金が必要となります。

それに対して、日曜日は休んだけど、土曜日に出勤した場合には、土曜日は法定外休日となりますので、労働基準法第37条は適用されません。

しかし、土曜日にも労働した場合、1週間の労働時間は48時間となり、1週間の法定労働時間40時間を超える形となります。

労働基準法では法定労働時間を超えて労働させた場合には、2割5分増以上の割増賃金を払わないといけないと規定されているため、土曜日の労働については、1時間当り1,250円(1,000円×1.25)の割増賃金の支払で良いこととなります。

このように法定休日と法定外休日とでは、割増賃金の計算方法が違ってきます。

就業規則 賃金規程の記載方法に注意が必要です。

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私は、これまで数多くの就業規則の見直しや変更させて頂いてきましたが、

さすがに今は少なくなりましたが、昔に作られた就業規則を見ると、休日割増賃金の計算方法の規定が、

就業規則第〇〇条(割増賃金)

休日割増賃金

(基本給+〇〇手当+〇〇手当)÷1ヶ月の平均労働時間×1.35×休日労働時間

このような記載をしている就業規則を時々見かけました。

ここで、「休日労働時間」と記載をしてしまうと、法定休日も法定外休日も休日に変わりはないわけですから、法定外休日に労働させた場合でも3割5分の割増賃金を支払う必要が出てきます。

このような規定は、法律より上回った基準を設けているわけですから、法律的に全然問題ありません。

ところで、就業規則の変更 見直しの時に、このような記載では法定外休日に労働させた場合でも3割5分の割増賃金が必要になってしまうと経営者の方にお話すると、「そうだったのですか? 知らなかったです。だったら、法定外休日の割増率を1.25に変えれば良いのですね?」というように気軽に言われます。

しかし、私は経営者の方に、「社長さん 申し訳ありません、それが 会社が、変更を一方的にできないのです。」と言うと「何故ですか?法律は(1.25)で良いのでしょう?」 と経営者の方怪訝な顔をされます。

実は、労働基準法第1条第2項に、「労働基準法で定める基準は最低であるから、労働当事者は、この基準を理由に労働条件を低下させてはならない。さらに向上させなければいけない。」という趣旨の規定があります。

この規定のポイントは、「この基準を理由に労働条件を低下させてはならない」です。

つまり、先程の例で言いますと、労働基準法の基準が、法定外休の割増率が2割5分の割増となっているのだから、それを理由に今ある3割5分の割増率を2割5分に下げることは禁止されているのです。

ですから、会社が一方的に法定外休日の割増率を下げてしまえば、労働基準法第1条違反になってしまう可能性が高いというわけです。

就業規則を作る場合には、もちろん 法律の基準より上回った基準を作ることは、これは本当に喜ばしいことですが、ただ 1度作ってしまった基準は、会社が一方的に下げることが出来なくなってしまいます。

そのため、これから就業規則を作成する場合には、まず法律の基準がどこにあるのか?というのを正しく理解することが、重要なポイントとなります。

もし 休日割増賃金の規定が、「休日労働時間」というような記載となっていて、法定外休日の割増率を2割5分の割増率に変更したいのであれば、従業員に対して、経営的にどうしても法定外休日の割増率を下げたいから、何とか理解して欲しい、というように誠意ある対応をして、従業員全員の同意を得てその上で変更する必要があります。

経営者の方にとってはなかなか厳しいお話となりますが、ご理解していただければと思います。

まとめ

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今回お話しましたように、法定休日と法定外休日とでは休日割増賃金の計算方法が異なってきます。

休日は、労務管理において重要な事項の1つです、また労働者においても関心が高い事項ですので、正しく理解することが必要となってきます。

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