助成金利用には就業規則の整備は不可欠

助成金は、雇用保険の一環として行われている制度で、雇用の維持又は増大を図った企業に支給されるものです。

 

助成金は、後述しますが企業にとって非常に魅力的な制度ですが、助成金を利用するには、就業規則が不可欠となってきます。

 

 

ところで、助成金は、経営者にとっては、非常に複雑な制度であるため、なかなか利用されていないのが実情です。

 

そのため、少しでも多くの企業の助成金利用に繋がればと思い、本ブログでは、助成金制度の概要や就業規則との関係、助成金を利用するためのポイント等をわかりやすく解説してみました。

 

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助成金とは?

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助成金は、雇用保険の一環として行われている制度で、雇用の維持又は増大を図った企業に支給されるものです。

 

雇用の維持又は増大とは、例えば、高齢者や母子家庭等の母等の就職困難者を雇用すれば、雇用機会の増大を図ったこととなります。(ただし、ハローワーク等を通じて雇用する条件があります。)

 

また、非正規労働者を正規労働者等へ転換すれば、雇用の維持に当たります。

 

実際、助成金は、現在40種類程定められていて、どの助成金も何らかの形で、雇用の維持又は増大を目的とされています。

 

 

ところで、助成金は、企業にとって非常に魅力的な制度と言えます。

 

助成金の魅力は、大きく3つあります。

 

まず、助成金は、融資制度とは違うため、一度、受給した助成金は返す必要はありません。

 

 

さらに、助成金は、使用目的も問われていません。

 

例えば、先程ご紹介した、就職困難者をハローワーク等を通じて雇用し場合に受給できる助成金(特定求職者雇用開発助成金)ですが、この助成金の目的は、就職困難者の雇用機会の増大ですが、支給された助成金は、必ずしも雇用した労働者のために使用する必要はなく、設備等の購入や借入金の返済に充てるなど、どのような目的で使用しても構いません。

 

 

また、助成金は、仕入れ費用な人件費等の捻出もありませんので、受給した金額が、純益となります。(申請を依頼した場合の申請費用とは除きます。)

 

このように、助成金は、企業にとって非常に魅力的な制度ですので、有効活用していただきたいと思います。

 

助成金の原資は?

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ところで、助成金は、一体何を原資として運用されているのでしょうか?

 

税金?と思われるかもしれませんが、そうではなく、実は、会社が支払っている雇用保険料の一部が原資とされています。

 

 

助成金と一般の保険を同じに考えてはいけないかもしれませんが、自動車保険や傷害保険に加入していて、万一、事故に遭ったら、何の疑いもなく保険金請求するかと思います。

 

助成金もある意味同じで、せっかく保険料を支払ってしるわけですから。助成金を受給できる機会を逃してしまうのは非常に勿体ないことです。

 

 

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助成金と就業規則との関係

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助成金を利用するには、就業規則の整備が不可欠と言えます。

 

冒頭に、助成金は、雇用の維持増大を図った企業に支給される、と書きましたが、多くの場合、雇用の維持増大を図るための制度を導入することが受給する条件となります。

 

 

「制度を導入」とは具体的には、就業規則に規定を整備することとなります。

 

例えば、キャリアアップ助成金 正社員化コースでは、有期雇用労働者を正社員等へ転換できる制度を就業規則に規定したり、65歳超雇用推進助成金では、定年等の延長を就業規則の規定を変更することで行います。

 

このように、助成金を利用するには、まず就業規則が整備されていることが前提となります。

 

育児・介護休業規程の重要性について

 

助成金の中には、育児・介護に関連したものがいくつか制度化されています。

 

特に育児については、女性の社会進出の一層の促進が社会問題となっているので、その意味で育児関連の助成金は、かなりの数に上ります。

 

 

育児・介護関連の助成金を利用する場合には、就業規則の他に育児・介護休業規程が必要となってきます。

 

育児・介護休業規程は、基本的には法律の規定をそのまま規程の形にすればよいので、厚生労働省で公表している、雛型をそのまま使用して差し付けありません。

 

>> 育児・介護休業等に関する規則の規定例[簡易版]

 

ちなみに、詳細版も公表されていますが、助成金利用においては、簡易版での使用の問題無いかと言えます。

 

 

ただし、育児・介護休業規程については、1つ注意すべき点があります。

 

育児・介護休業規程の基となる、育児・介護休業法は、頻繁に法律改正されます。

 

助成金を利用するには、当然、最新の法律に基づく規程内容になっている必要があります。

 

ですから、過去に作成した育児・介護休業規程をそのまま使用してしまうと、現在の法律の基準を満たしてない内容となっている場合があり得ますので、注意が必要となります。

 

就業規則が無い場合には?

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これまでお話ししてきたように、助成金を利用するには、就業規則や育児・介護休業規程の整備が必要となります。

 

ところで、労働基準法では、常時10人以上の労働者を雇用している事業場には就業規則の作成義務を課しています。

 

ということは、労働者が常時10人未満の事業場には、就業規則が無くても法律的に問題ないこととなります。

 

また、就業規則を作成しなければならない事業場でも、実際に就業規則が無い場合も多々あります。

 

 

では、就業規則が無い場合には、助成金は利用できないのでしょうか?

 

結論から言うと、現時点では、就業規則が無い場合にも助成金の利用は十分可能です。

 

例えば、キャリアアップ助成金 正社員化コースでは、実際に正社員に転換する前までに、転換制度を定めた就業規則を作成し、届出れば支給条件を満たすこととされています。

 

 

多くの助成金の場合、今、お話したように、「正社員に転換するまでに」のようにある時期までに就業規則を整備すれば、受給可能となります。

 

作成義務がある事業場で就業規則が無い、というのは法律違反の状態ですが、基本的には助成金では、その点は問われないこととされています。

 

ただし、助成金ごとに支給条件が異なりますので、利用する際には必ず行政官庁等にご確認下さい。

 

 

モデル(雛型)就業規則を使う際の注意点

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ところで、助成金を利用するには、就業規則や育児・介護休業規程の整備が必要となりますが、就業規則や育児・介護休業規程の中で助成金の支給不支給の判断の対象となるのは、あくまで助成金に関連する規定です。

 

それ以外の規定については、どのような規定内容であっても、助成金の支給・不支給の判断には影響を与えません。(ただし、労働時間や有給休暇等の労働基準法等の法律に定めがある規定については、法律の基準を満たしていることが必要です。)

 

となれば、専門家に就業規則の作成を依頼せずに、とりあえず、モデル(雛型)就業規則等を利用して、就業規則を整備しようとお考えになる経営者の方もいるかと思います。

 

 

就業規則の本来の目的は、労働トラブルを防止し労働者が安心して働くことができる職場環境の維持等にありますので、助成金だけの目的として就業規則を作成する、というのは多少疑問も残りますが、ただ、専門家に依頼すれば、それなりの費用もかかりますし、実際、モデル(雛型)就業規則を利用しても、助成金を受給することは可能ですので、モデル(雛型)就業規則をとりあえず利用するのも、ある程度、やむを得ないのかもしれません。

 

 

ただ、モデル(雛型)就業規則を利用する際に、注意しなければならない点があります。

 

モデル(雛型)就業規則を利用したからと言っても、就業規則の体裁が整えば、正式な就業規則となります。

 

そこに書かれている内容は、労働者の権利と義務となります。

 

 

モデル(雛型)就業規則には、例えば、慶弔休暇のように法律の基準を上回る規定が記載されている場合もあります。

 

しかし、先程お話ししたように、一旦、就業規則として定めてしまえば、慶弔休暇は、労働者の権利となります。

 

現在、慶弔休暇制度がなく、特別導入を考えていない会社には、大きな負担となってしまいます。

 

ですから、たとえ、モデル(雛型)就業規則を利用する場合であっても、その内容をよく確認して利用することが必要となります。

 

 

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助成金利用の3つのポイント

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最後に、助成金を利用するためのポイントを3つお話ししたいと思います。

 

申請手順の重要性

 

助成金を確実に受給するためには、まず、申請手順を正しく理解することが重要です。

 

これはどういうことかと言いますと、助成金は、どんなに支給条件を満たしていても、申請手順を誤ってしまえば、助成金を受給することが出来なくなってしまいます。

 

 

例えば、キャリアアップ助成金 正社員化コースでは、対象となる労働者を正社員等へ転換する前までに、キャリアアップ計画書を管轄のハローワーク等に提出する必要があります。

 

もし、キャリアアップ計画書を提出する前に、転換してしまえば、他の条件を全て満たしていても、助成金を受給することはできなくなってしまいます。

 

 

このように助成金は、「~の前までにこの書類を提出すること。」とか反対に「~の後にこの書類を提出すること。」といった特定の日付に関連した条件が定められているケースが非常に多いので、正しく理解することが必要となってきます。

 

適正な労務管理

 

助成金は、それぞれ様々な支給条件が定められています。

 

助成金を受給するには、支給条件を満たすことはもちろんですが、それ以前に適正な労務管理が行われていることが前提となります。

 

 

適正な労務管理とは、割増賃金の支払い、労働時間の管理、賃金台帳や出勤簿等の作成といったことが法律通り正しく行われている必要があります。

 

特に昨今、割増賃金の支払いについては、かなり細かいところまでチェックされますので、注意が必要です。

 

確実な添付書類の提出

 

助成金を申請する際には様々な書類を添付する必要があります。

 

これは個人的な考えですが、私は、いつも添付書類について社長様にお願いしていることがあります。

 

例えば、65歳超雇用推進助成金では、就業規則の変更業務を社会保険労務士に依頼する必要があるのですが、依頼した証明として社会保険労務士に支払った手数料に関する書類を添付する必要があります。

 

助成金の条件としては、領収書と現金出納簿又は銀行振込の依頼書と支払いの事実が記載されている通帳の該当ページ(いずれもコピーです)を添付する必要があります。

 

 

これは、実際にあったことですが、ある社長様が、銀行の振込依頼書を紛失してしまったのです。

 

その社長様が、「依頼書がなくても、通帳を見れば、先生にお金を支払った事実は確認できるではないですか?」と言われました。

 

確かにそうなのですが、助成金は、事実がわかる、わからないではなく、要求されている書類を全て揃えることが必要なのです。

 

特に見積書や納品書等は、発行されてから助成金を申請するまでの間の期間が長い場合が多々ありますので、必要な書類は確実に保管しておくことが重要です。

 

 

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まとめ

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今回のブログでは、助成金と就業規則との関係を中心にお話ししてきました。

 

繰り返しになりますが、助成金は、企業にとって非常に魅力的な制度ですので、是非、積極的に利用していただきたいと思いますので、本ブログをご参考いただければと思います。

 

 

ところで、助成金は、ブログの中でもお話ししましたように、国の制度の1つであるため、非常に複雑な制度です。

 

さらに、労務管理等の知識も必要となるので、経営者自らが申請するのは、多くの時間と労力を要してしまう場合もあります。

 

ですから、専門家に申請業務を依頼するという選択肢も検討されると良いかと思います。

 

専門家に申請を依頼すれば、費用がかかってしまいますが、費用対効果や受給の確実性を考慮すれば、専門家に依頼することは、決してマイナスにはならないかと思いますので、その点を申し添えさせていただきます。

 

 

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