社員を解雇すると助成金は使えない?

今回は助成金と解雇との関係についてお話したいと思います。

助成金 このブログをお読みのあなた様も一度は名前を聞いたことがあるかと思います。

実は、この助成金というのは、経営者にとって非常に魅力的な制度となっています。

しかし、経営者にとって非常に魅力的な助成金ですが、利用する時にいくつか注意すべき点がやはりあります。

その中で最も重要なポイントとなってくるのが解雇との関係です。

ですから助成金を利用する上では、この解雇との関係について正しく理解しておくことは非常に重要となります。

今回は、助成金と解雇の関係についてわかりやすくご説明していきたいと思いますので、是非、最後までお読みいただければと思います。

なお、ここでは、助成金についての詳しい説明は、割愛させていただきますけど、助成金につきましては、こちらの動画の方で詳しくお話してありますので是非、そちらの方をご覧になっていただければと思います。

>>実は意外と身近!助成金8つの誤解

助成金は雇用機会の維持及び増大に寄与した企業に支給

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最初に、助成金の目的についてお話したいと思います。

助成金は、雇用機会の維持又は増大を図った企業へ支給することで、労働者の雇用環境の向上を積極的に図る企業を支援することを主な目的としています。

例えば、助成金の中に特定求職者雇用開発助成金という助成金があります。

この助成金は、いくつかコースがありますが、その中の1つに就職困難者をハローワーク等を通じて雇用した場合に支給される助成金があります。

具体的に就職困難者というのは、60歳以上の高年齢労働者、母子家庭の母等及び一定の障害者となります。

就職困難者というのは、文字通り就職することがなかなか困難な労働者ですが、このような労働者を雇用することは、雇用機会の増大を図ったという形となりますので、助成金が支給されることとなります。

解雇は助成金の趣旨とは真逆

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今お話しましたように、助成金というのは雇用機会の維持又は増大を図ることを主な目的としています。

ですから、解雇というのは、雇用を喪失させてしまうわけですから、助成金の本来の趣旨からはちょうど真逆の位置になってしまいます。

従って、多くの助成金が、労働者を解雇した企業に対しては一定の制限をかける規定を設けています。

つまり、労働者を解雇した場合に、助成金を一定期間利用ができなくなってしまうケースが出てきますので注意が必要となります。

具体例を1つお話したいと思います。

先程、お話しました特定求職者雇用開発助成金という助成金ですが、この助成金は、就職困難者をハローワーク等を通じて雇用した場合に助成金が支給されますが、もし、労働者を解雇してしまった場合には、解雇を行った日前の6ヶ月間及び解雇を行った日以後の6ヶ月間のトータルで1年間、特定求職者雇用開発助成金の対象となる労働者をハローワーク等から雇用した場合であっても助成金を受けることができなくなります。

さらに、この特定求職者雇用開発助成金には、もう1つ制限がありまして、助成金の対象となる労働者を解雇してしまった場合には、さらに重いペナルティが課せられます。

対象となる労働者を解雇した場合には、解雇を行った日前の6ヶ月間及び解雇した日以降3年間、助成金の対象となる労働者をハローワーク等から雇用した場合であっても助成金を受けることができなくなります。(令和2年12月現在)

この特定求職書雇用開発助成金のように、従業員を解雇した場合には一定期間助成金を利用できなくなってしまう規定を設けている助成金が非常に多いのです。

利用できなくなる期間は、助成金によって様々ですので各助成金の規定を参照していただきたいと思いますが、ここでは、労働者を解雇すると、一定期間助成金を利用できなくなってしまう場合がある、ということをご理解いただければと思います。

雇用保険の離職理由に注意が必要です

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これまでお話してきたように、従業員を解雇した場合には助成金の利用が一定限制限されますが、助成金の利用が制限されるのは、正確には「解雇」ではなく「解雇等」です。

ここでは、この「等」についてお話していきたいと思います。

行政官庁が、その会社で解雇等が行われた否かの判断は、雇用保険資格の喪失原因で判断します。

雇用保険の場合、資格を喪失する原因を一般的には数字でその理由を表記しますが、「1、2、3」と雇用保険では3つ雇用保険の資格が喪失される原因を想定しています。

まず、資格喪失原因1ですが、これは離職以外での資格の喪失です。

具体的には転勤が挙げられます。

雇用保険は会社ごとに加入するわけではなく、本社、支社、営業所といった建物ごとに雇用保険に加入するのが基本となります。

ですから、例えば、本社から支社に転勤する場合、本社と支社とでそれぞれ雇用保険に加入して、雇用保険の加入事業所となっている場合には、本社では資格の喪失、支社では資格の取得の手続きをそれぞれ行う必要なります。

ところで、本社から資格を喪失する場合ですが、転勤は離職ではありませんので、このように離職以外で雇用保険の資格を喪失する場合には、喪失原因1を用います。

また、労働者自身の都合で退職する場合には、喪失原因2を用います。

そして、喪失原因3が、事業主の都合による離職となります。

助成金として利用が制限される「解雇等」というのは、この喪失原因 3 の場合なのです。

ですから、喪失原因に3が付いてしまうと、先程言いましたように助成金の利用が一定期間制限されるということが起こってきます。

では、この事業主の都合による離職ですが、具体的にどのようなものがあるのか?ということですが、もちろん解雇が挙げられます。

そして、解雇以外にも、退職勧奨による離職も喪失原因3となります。

退職勧奨というのは、従業員に対して退職届を出すことを勧奨し、従業員がそれに応じる形となります。

ですから、形上は、従業員が退職届を出すわけですから、自己都合退職の形になるのですが、雇用保険上は、退職勧奨も事業主の都合による離職となります。

また、有期契約の場合で、雇用期間が3年以上経過後に契約を更新しない、このような場合も喪失原因が 3 となるケースが考えられます。

喪失原因が3となる場合は、まだ他にもありますが、いずれにしても助成金の利用が制限されるのは、解雇だけではなくて、あくまでも喪失原因が 3 になる理由で、従業員が離職した場合です。

ここは、少し盲点とも言えるところです。

ですから、退職勧奨は解雇ではないのだから、助成金の利用が制限されることは無いと解釈してしまうと誤りになってしまいますので、この点もご注意していただければと思います。

解雇は経営判断を優先することが重要です

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ところで、少し余談になりますが、私は社会保険労務士として20年近く業務を行ってきましたが、長い経営活動をしていれば、やはりどうしても従業員を解雇せざる得ないケースが出てきます。

確かに従業員を解雇すると助成金が利用できなくなるというデメリットもあります。

しかし、経営的な観点からすれば、助成金が制限されるより解雇を優先する方が重要という場合も当然考えられます。

ですから、経営判断を最優先に考えることが重要となってきますので、この点もご参考になさっていただければと思います。

まとめ

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今回、お話しましたように、解雇等を行うと、一定期間助成金を利用できなくなってしまうケースがあります。

そして、助成金利用に制限がかかるのは、解雇だけでなく、退職勧奨や雇止め等による離職、雇用保険の喪失原因3の場合となりますので注意が必要です。

ただ、ケースによっては、解雇せざる得ない場合も考えられますので、あくまで経営判断を優先させることが重要となる場合もありますのでご参考になさって下さい。

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