解雇トラブルに巻き込まれないための2つの視点

企業が、解雇した従業員から、不当解雇で訴えられて多額の損害金や和解金を支払った、というニュースがテレビや新聞で報道されることがあります。

 

解雇トラブルは、他の労働トラブルと比較にならない位、経営者に精神的なストレスを与えてしまいます。

 

また、解雇トラブルは、解決するのに多大な時間と労力を要してしまうため、経営的に考えても大きな損失と言えます。

 

そのため、無用な解雇トラブルを起こさないための知識を知っておくことは、経営者にとって重要なポイントであると考えます。

 

 

 

では、解雇トラブルに巻き込まれないためにはどうすれば良いのでしょうか?

 

今回は、解雇トラブルに巻き込まれないための2つの視点についてお話ししたいと思います。

 

 

いきなり解雇する事態を避けることが重要です

 

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私は、かねがね無用な解雇トラブルを起こさないためには、2つの視点からの知識を理解することが重要だと考えていました。

 

解雇トラブル起こさせないための2つの視点とは、1つ目が、解雇トラブル自体を起こさないという視点。

 

もう1つの視点が、万一、解雇トラブルが起こってしまった場合でも、解雇の正当性、妥当性を少しでも高める、というものです。

 

それでは、それぞれについて具体的に説明していきたいと思います。

 

 

 

まず、最初の視点である「解雇トラブル自体を起こさせない」についてですが、これは、言葉だけ聞けば、当たり前のことですが、実は、多くの経営者の方が意識されていないと言えます。

 

重大な犯罪を犯した場合は別として、経営者が、従業員を解雇しようと考える時は、多くが、従業員の能力不足や問題行動が原因と言えます。

 

このような場合、多くの経営者が、その労働者に対して最初の数回は、注意するのですがその後は、何もしない場合が圧倒的に多いと言えます。

 

そして、何処かの時点で、これ以上は我慢できない、ということで、解雇に至ってしまいます。

 

 

 

ご存知のように、日本は、労働者保護の風潮が非常に強いため、解雇トラブルで裁判になった場合には、経営者には非常に厳しいのが現状です。

 

特に能力不足といった主観的な要素が強い解雇では、経営者の主張が認められるためには、余程の説得力の強い証拠が必要となります。

 

ところで、能力不足や問題行動を起こす従業員に対する対処法は、解雇だけではありません。

 

 

 

通常、就業規則には、懲戒処分として、解雇以外にも訓戒や始末書の提出、減給や出勤停止といった規定が定められます。

 

つまり、いきなり懲戒解雇処分をするのではなく、段階的な懲戒処分を課していくことが重要なのです。

 

その過程で、従業員が改善の方向に向かうなどの解決への道が開ける可能性が出てきます。

 

 

 

いきなり解雇してしまうために、従業員も感情的になってしまうために大きなトラブルとなってしまうわけであって、段階的に懲戒処分を課すことで、従業員に対して改善の機会を与え、その都度、話し合いを重ねて行けば、解雇という結果にならずに、何らかの解決策を見出すことは十分可能です。

 

当たり前のことですが、従業員を解雇しなければ、解雇トラブルは起こりません。

 

 

 

ですから、能力不足や問題行動を起こす従業員に対しては、解雇ではなく、可能な限り、それ以外の懲戒処分によって対応することが、解雇トラブルに巻き込まれないためには、本当に重要となってきます。

 

また、このような対応は、次にお話しする、「解雇の正当性、妥当性を高める」についても深く関係してくるのです。

 

 

客観的な証拠が必要となります

 

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では、次に解雇トラブルに巻き込まれないためのもう1つの視点である、「解雇の正当性、妥当性を高める」についてお話ししたいと思います。

 

先にお話しした、いかに解雇トラブルを起こさなようにしても、解雇せざる得ない状況となってしまう場合も考えられます。

 

ところで、解雇トラブルは、解雇された従業員が、訴えてきた場合に初めてトラブルとなると言えます。

 

 

 

つまり、解雇におけるトラブルは、あくまで民事的な争いなので、行われた解雇が、正しいのか正しくないのかの判断は、法律の基準があるのではなく、裁判等によって判断されます。

 

ですから、解雇トラブルが起こってしまった場合には、いかに裁判等でその正当性、妥当性が認められるかがポイントとなってきます。

 

そして、解雇の正当性、妥当性が認められるためには、客観的な証拠が重要となります。

 

では、客観的な証拠とはどのようなものでしょうか?

 

 

 

客観的な証拠とは、実は、先にご説明した、始末書の提出や減給といった解雇に至るまでに行われた懲戒処分の事実が、客観的な証拠となってきます。

 

つまり、解雇に至るまで間に、会社としてもいろいろと手を尽くしたが、それでも解雇せざる得なかった、という事実があって、初めて解雇の正当性、妥当性が、認められる可能性が出てきます。

 

解雇トラブルにおいて、経営者にとって厳しい結果となってしまうのは、もちろん、労働者保護の風潮が強いこともありますが、それとは別の次元の問題で、裁判等になった場合に、客観的な証拠が不足していることに因るところも大きいと言えます。

 

 

 

これは、私も解雇の相談を受けた時に、度々経験するのですが、経営者は、従業員の問題点を延々と訴えるのですが、訴えるだけで客観的な証拠が、全くと言っていいほど無い場合が非常に多いのです。

 

仮に、経営者の言うことが本当であっても、口頭で言っているだけでは、裁判等では、十分に戦うことはまず不可能と言えます。

 

ですから、解雇の正当性、妥当性を高めるために、客観的な証拠というものが必要となってくるという認識を持つことが重要なのです。

 

 

 

ところで、もうお気づきかと思いますが、最初にお話ししたように、解雇トラブル自体を起こさないために懲戒処分を段階的に行っていくことが重要と書きましたが、実は、懲戒処分を段階的に行うことで、結果的に客観的な証拠も積み上がってくることとなります。

 

ですから、解雇トラブルに巻き込まれないための最も重要なポイントというものは、問題のある従業員を放置しておくのでなく、会社として解決のために積極的に動くことと言えます。

 

 

改善の機会を与えることに主眼を置くことが最重要と言えます

 

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さて、最後に解雇トラブルについて別の角度からお話ししたいと思います。

 

これまでお話ししてきた内容は、いかにトラブルを防止するかという、いわばネガティブな視点でお話ししてきました。

 

 

 

しかし、会社にとってもせっかく縁あって雇用した従業員ですので、できれば長期にわたって勤務してもらいたいと思うところはあるかと思います。

 

解雇に至るまでに、段階的に懲戒処分を課すということは、確かに客観的な証拠を積上げるという意味があります。

 

しかし、それは同時に、従業員に改善の機会を与えるということでもあります。

 

 

 

解雇トラブルに巻き込まれないための最もハッピーな結果は、従業員に不本意でも退職届を出させることでも、裁判等で勝ことでもなく、従業員に気持ちよく働いてもらい成果を出してもらうことではないかと思います。

 

ですから、まずは、解雇ありきでなく、従業員をいかに改善させるかに主眼を置いて、結果的に叶わなければ、解雇を視野に入れる、といった感じで考えるのが良いかと思います。

 

そうすれば、結果的に客観的な証拠も積み上がっていることとなります。

 

 

まとめ

 

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解雇トラブルを避けるためには、二つの視点からの知識が重要です。

 

一つ目は、解雇トラブル自体を起こさないことです。

 

従業員の能力不足や問題行動に対し、いきなり解雇するのではなく、就業規則に定める段階的な懲戒処分(訓戒、減給、出勤停止など)を課し、改善の機会を与えることが大切です。

 

これにより、解雇に至らず解決できる可能性があります。

 

 

 

二つ目は、万一トラブルになった際に解雇の正当性・妥当性を高めることです。

 

段階的な懲戒処分は、客観的な証拠として積み上がり、裁判などで会社の主張が認められる可能性を高めます。

 

つまり、問題のある従業員を放置せず、会社として積極的に改善を促すことが、解雇トラブルを回避し、従業員との良好な関係を築く上で最も重要と言えます。