労務管理用語シリーズ⑥ 解雇と退職勧奨について

今回のブログは、解雇と退職勧奨についてお話したいと思います。

 

解雇も退職勧奨も、それぞれ会社が従業員との雇用を終了したい時に用いるものですが、どちらも大きな労働トラブルに発展する可能性を秘めています。

 

というのは、解雇も退職勧奨も往々にして労働者の意に反して行われるケースが多いためです。

 

ですから、経営者の方は、解雇と退職勧奨について正しく理解して、適切な運用をする必要があります。

 

今回のブログでは、解雇と退職勧奨について、わかりやすく説明していきたいと思います。

 

「雇用」の仕組みとは?

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冒頭で、解雇も退職勧奨も会社が、「労働者との雇用を終わらせる時に用いる」ということを言いました。

 

ですから、解雇と退職勧奨を理解する前に、会社が労働者を雇用するということは、一体どのようなことなのか、ここをまず正しく理解する必要があります。

 

 

経営者の方は、あまり意識されないのですが、会社が労働者を雇用するということは、会社と労働者との間で契約を結ぶということなのです。

 

契約ですから、当然 権利と義務が発生します。

 

では 労働者と会社との間にどのような権利と義務が生じるのでしょうか。

 

 

労働者の義務というのは、労働力の提供です。

 

では、何処に提供するのか、と言いますと、これは使用者となります。

 

使用者というのは法律用語で、会社又は経営者と思っていただければ結構です。

 

従って、労働者は使用者に労働力を提供する義務があります。

 

 

それに対して労働者の権利ですが、それは提供した労働力に対する対価を受取ることです。

 

労働の対価とは、法律用語で賃金と言いますが、通常は給料と呼ばれています。

 

つまり 労働者は給料をもらう権利があるわけです。

 

 

これを使用者側から見れば逆になります。

 

使用者は、労働者から労働力の提供を受ける権利があって、使用者は労働者に対して労働の対価の支払をする義務がある、このような権利関係となります。

 

そして、この契約を一般的に、労働契約または雇用契約と言います。

 

会社は、労働者との間に先程ご説明した権利義務に基づく労働契約又は雇用契約を結ぶ、これが雇用となります。

 

 

ところで、契約ですから、当然、契約が終了するケースがあります。

 

労働者から使用者に対して、労働契約を解約する場合、これは、退職の申し出と言われています。

 

退職の申し出は、使用者がそれに合意すれば、労働契約は解約されることになります。

 

 

それに対して使用者が労働者に対して、労働契約を解約することを解雇と言います。

 

解雇の場合は、使用者が一方的な意思表示によって労働契約を解約することができるとされています。

 

ですから、解雇の場合には、労働者の合意は必要ありません。

 

解雇の注意点

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ここでは、解雇に関する注意点について解説したいと思います。

 

解雇について、まず注意しなければいけないのが、労働者にとって解雇されるということは、突然 生活の糧を失ってしまうこととなります。

 

ですから、労働基準法等では 解雇を行う場合には一定の制限を設けています。

 

労働基準法では、労働者を解雇する場合には、30日以上前に解雇の予告を行うか、あるいは、即日解雇する場合には、平均賃金の30日分以上の支払い(解雇予告手当)が必要となります。

 

 

何故 このような法律が定められているかと言いますと、労働基準法では、労働者と使用者は、「対等な立場である」とうたってはいますが、労働者の方が、当然立場的には弱いわけです。

 

ですから、解雇されてしまうと、労働者は、突然、生活の糧を失ってしまうこととなってしまいます。

 

ですから、法律では使用者に、少なくとも1ヶ月分の生活保障を求めているために、解雇予告期間または解雇予告手当の規定を設けています。

 

なお、平均賃金については、詳細についてのご説明は、ここでは割愛させていただきますが、平均賃金の30日分とは、時間外割増賃金等を含んだ、通常の給料の1ヶ月分というようにイメージしていただければ良いかと思います。

 

 

また、労働契約法でも、解雇に関して規定を定めていて、使用者が労働者を解雇する場合には、合理的な理由がない場合は解雇してはいけない、とされています。

 

解雇は、経営者の一方的な意思表示によってできるわけですから、これを無制限に認めてしまうと、やはり、労働者にとっては生活が、非常に不安定となってしまうため、解雇するのであれば、それ相応の理由がある場合に限る、と法律で規定されているわけです。

 

ただ その合理的な理由というのは、法律で基準が設けられていないので、どのような場合が合理的な理由となるか というのは非常に難しいところがあります。

 

ですから、この問題を掘り下げていくと、非常に話が長くなってしまいますので、ここでの説明は割愛させていただきたいと思いますが、労働契約法において、労働者を解雇する場合には、一定の合理的な理由が必要ということは、覚えといていただければと思います。

 

退職勧奨について

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次に退職勧奨についてお話したいと思います。

 

退職勧奨とは、使用者が労働者に対して退職の申し出をするように促す、使用者が労働者と交渉して自主退職を促す行為のことを言います。

 

例えば、ある従業員が多額なお金を横領して、それが発覚した場合には、会社側は、労働者に対して懲戒解雇を行うことが可能です。

 

しかし、懲戒解雇により、その従業員の経歴に傷がついてしまうのを考慮し、今ここで退職の申し出をすれば解雇をしない、というように労働者本人に退職の申し出を促す行為を言います。

 

また、退職勧奨は、このような懲戒解雇の場合だけでなく、「少し会社の経営が苦しいから 退職してくれないか 」というような整理解雇等の様々なケースで使われます。

 

 

ただし、この退職勧奨は、今お話しましたように、会社側から退職を促す形ではありますが、最終的には労働者の意思によって退職の申し出がされたとみなされますから、解雇には該当しません。

 

ですから 退職勧奨は、解雇ではありませんから、先程お話しました労働基準法で定められている解雇予告手当等の規定は適用されない形となります。

 

あくまでも形としては、労働者本人の意思表示によって労働契約が解約されるという形となります。

 

 

ところで、この退職勧奨は、法律に定められている規定ではないため、退職勧奨に同意する 同意しないかを判断できるのは、あくまでも労働者です。

 

ですから 労働者は、必ずしも会社からら受けた退職勧奨に応じる必要はありません。

 

ここで注意が必要なのですが、もし労働者が退職の勧奨に応じなかった場合に、会社が脅迫、高圧的な態度あるいは詐欺的行為等によって、無理矢理、労働者から退職の申し出をさせた場合には、これは強制退職と言って違法行為となってしまいます。

 

ですから 労働者が、裁判等に訴えて退職勧奨の交渉において、脅迫行為や詐欺行為があったと認められれば、その退職の申し出は 結果的に無効となり、違法行為となってしまいます。

 

従って、退職勧奨に応じるかどうかの判断は、あくまで労働者側にありますので、過度な退職勧奨を行うと本当に大きなトラブルになり、現実 大きなトラブルが発生していますので、退職勧奨を行う場合には、十分注意して行う必要があります。

 

退職勧奨と雇用保険

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ここでは退職勧奨について、是非、覚えておいていただきたい注意点についてお話したいと思います。

 

先程お話しましたように、退職勧奨は、結果的に本人の申し出による退職となりますので、労働基準法の解雇予告及び解雇予告手当の支払いの規定に関して適用を受けないこととなります。

 

ですから、労働基準法では、解雇と退職勧奨を別のものとして取り扱っています。

 

 

しかし、今回 お話するのは、他の法律のことです。

 

他の法律において、解雇と退職勧奨の取扱いについて、1つ注意すべき法律があります。

 

それが雇用保険です。

 

雇用保険は、主な制度の目的として、労働者が退職した場合に、一定期間保険給付を行うことを目的としています。

 

よく「失業保険をハローワークでもらう」という言い方をしますが、まさにあれです。(なお、失業保険というのは正しい言い方ではなく、正式には失業等給付と言います)

 

 

ところで、雇用保険に労働者が加入した場合に、それを一般的に「資格を取得した」と言い、反対に退職等で雇用保険から抜ける時、それを「資格喪失」と言います。

 

雇用保険では、資格を喪失する原因として、3つを想定していて、「1 2 3」と数字で表します。

 

資格喪失原因 1 は、離職以外の理由での資格を喪失する場合です。

 

雇用保険の加入条件は、1週間に20時間以上の労働及び 31日以上の雇用見込みとなります。

 

ですから、例えば、雇用した時には、1週間40時間働いていたが、様々な理由で1週間15時間しか働くことができなくなった場合には、雇用保険の加入条件を満たさなくなったため、資格を喪失する必要があります。

 

しかし、この場合離職しているわけではありません。

 

このような場合に、資格喪失原因は「1」となります。

 

ちなみに、転勤も同じような考え方をします。

 

 

そして、次に先に資格喪失原因「3」をお話します。

 

資格喪失原因「3」 は事業主の都合による離職とされています。

 

解雇は 当然事業主の都合による離職となりますので、解雇によって雇用保険資格を喪失した場合には、資格喪失原因は、「3」となります。

 

 

最後に資格喪失原因「2」ですが、これは、資格喪失原因「3」以外の離職となります。

 

つまり、労働者自身の都合により退職する場合は、資格喪失原因は「2」となります。

 

このように雇用保険では、資格の喪失原因をその理由によって分けています。

 

 

ところで、資格喪失原因の「2」と「3」は、 同じ離職ですが、資格喪失原因「2」と「3」とでは、何が違うかと言いますと、これは、先程も言いました退職した後にもらうことができる失業等給付についての取扱いが違ってきます。

 

当然 資格喪失原因「3」 の方が、労働者にとっては不利な立場で退職しているので、資格喪失原因 「3」 の方を失業等給付では優遇しています。

 

 

では、解雇と退職勧奨に関して、雇用保険において何を注意しなければいけないのか、についてですが、先程も言いましたように、資格喪失原因「3」には、解雇が該当します。

 

問題となるのは、退職勧奨です。

 

退職勧奨は、最終的には労働者の意思によって退職の申し出をするわけですから、形式上は本人都合の離職となります。

 

従って、繰返しになりますが、労働基準法に定められた解雇予告や解雇予告手当の支払は、退職勧奨の場合には必要ありません。

 

ですから、退職勧奨は、資格喪失原因「2」となるのが妥当と思われるかもしれませんが、雇用保険では、退職勧奨は、離職理由「3」に該当します。

 

というのは、結果的に労働者の都合による退職となったとしても、あくまでもその過程において、事業主からの働きかけによる離職とみなすため、退職勧奨も資格喪失原因「3」に含めているのです。

 

 

ところで、退職勧奨が、事業主の都合による離職 喪失原因「3」とされたとしても、資格喪失原因「2」と「3」の違いは、先程言いましたように、失業等給付の取扱いが、労働者に有利になるだけですから、会社にはあまり影響がないのでは、と思われるかもしれませんが、実は 会に社大きく影響するものが1つあります。

 

それが、助成金制度です。

 

 

助成金制度は、雇用保険の制度の一環として行われていて、雇用機会の維持や雇用機会の増大を図った企業に支給されるものです。

 

助成金制度につきましては、ここでの説明は割愛させていただきますが、助成金制度は、今、言いましたように「雇用の維持または増大」を主な目的としているため、解雇はその目的からすれば、真逆となります。

 

ですから、労働者を解雇した場合には、一定期間、助成金の利用を制限する条件を定めている助成金が非常に多いのです。

 

つまり、労働者を解雇してしまうと、助成金を利用することができる条件を満たしたとしても、助成金を利用できない、ペナルティが課せられてしまうこととなってしまいます。

 

 

ところで、助成金が、ペナルティを課すかどうかの判断をどこでするかと言いますと、この資格喪失原因で判断するのです。

 

つまり 資格喪失原因「3」で労働者が離職した場合には、ペナルティの対象となってくるのです。

 

ですから、先程も言いましたように、退職勧奨により労働者が離職した場合には、資格喪失原因「3」となりますので、助成金を一定期間利用できなくなってしまうケースが出てきます。

 

 

労働者を解雇してしまうと、助成金利用できないことを知っている経営者の方は多いのですが、退職勧奨は、労働者本人による退職の申し出になるのだから、別に助成金には影響しない、と思われている経営者の方もいるかと思います。

 

しかし、退職勧奨により労働者が離職した場合でも、助成金の利用制限の対象となりますので十分注意していただく必要があります。

 

 

そして、最後に余談ですが、経営者の方に、助成金の利用制限のお話をすると「それだったら やっぱり、従業員を解雇とか退職勧奨しない方がいいですね」というように言われる方もいますが、ただ 経営的に判断して問題がある労働者がいた場合には、助成金より解雇あるいは退職勧奨を行う方が経営的には重要、必要ということも十分考えられます。

 

ですから 私は個人的には経営者の方に「あまり助成金にこだわるのは良くないです」と言っています。

 

ただ 安易に労働者を解雇や退職勧奨を行ってしまって、助成金が利用できなくなってしまうというのも、確かに勿体ない話です。

 

ですから、仕組みをよく理解していただいて、どちらが経営的に必要かというのを判断していいただければと思います。

 

まとめ

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今回は、解雇と退職勧奨についてご説明させていただきました。

 

退職勧奨は、結果的には労働者本人による退職の申し出となるため、労働基準法の解雇予告期間や解雇予告手当の規定の適用は受けないこととなります。

 

しかし、過度な退職勧奨は、不法行為とみなされ違法行為となってしまう場合がありますので、十分ご注意下さい。

 

また、助成金制度では、退職勧奨により労働者が離職した場合でも、解雇同様、助成金を一定期間利用できない場合がありますのでご注意下さい。

 

 

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