Q 取締役は雇用保険に加入できますか?

【質問】

 

当社は、従業員30名ほどの中小企業ですが、先日、ある社員が取締役に就任しました。

 

ただ、取締役といって、仕事内容はほとんど変わらず、給与の額も若干増えた程度です。

 

ところで、取締役は、雇用保険に加入できない、という認識でしたが、先日、同業者の社長から、取締役であってもそのまま雇用保険に加入できる場合があると聞きました。

 

取締役に就任した社員は、社長の身内でもないので、今後、退社の可能性もあるので、できれば雇用保険に加入させてあげたいと思うのですが、どのような場合に取締役が雇用保険に加入できるのでしょうか?

 

【回答】

 

取締役でも労働者としての性格が強い場合には、雇用保険に加入できます。

 

ただし、兼務役員の証明証が必要となります。

 

【解説】

 

雇用保険は、退職などにより労働者が失業となった場合に、一定期間給付をすることで、退職者の生活の安定を図ることを主な目的とした制度です。

 

ところで、雇用保険は、その名の通り「雇用されている者」、つまり労働者を対象としている保険です。

 

そのため、個人事業や法人の代表取締役はもちろん、取締役や監査役等の役員も雇用保険には原則加入することはできません。(取締役等の会社との関係は、雇用契約ではなく、委任契約となります。)

 

 

しかし、中小企業の場合、取締役であっても、業務内容等の実態が、労働者と変わらない場合もあります。

 

そのため、取締役であっても、労働者としての性格が強い場合には、雇用保険の加入が認められてます。

 

ですから、今回のご質問では、業務内容や給与もほとんど変わらないとのことですので、労働者としての性格が考えられますので、雇用保険への加入は可能かと思います。

 

 

ただし、取締役が雇用保険に加入するには、労働者としての性格が強いことを客観的に証明する必要があり、具体的には「兼務役員雇用実態証明書」という書類を必要な添付書類と管轄のハローワークへ提出し、取締役であっても雇用保険へ加入できる証明をもらいます。

 

添付書類としては、賃金台帳、出勤簿(タイムカード)、労働者名簿、就業規則、賃金規程、登記簿謄本、決算書類、議事録、組織図等となります。(添付書類は全てコピーとなります。)

 

このように、取締役が雇用保険に加入するには、兼務役員雇用実態証明書により、労働者としての性格が強いことを証明されて初めて雇用保険に加入できることとなります。

 

 

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【ここがポイント】

 

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取締役が、雇用保険に加入するには、いくつかのポイントがあります。

 

① 労働時間が管理されている。

 

労働者であるためには、労働時間の管理をされている必要があります。

 

そのため、兼務役員雇用実態証明書の添付書類として、出勤簿又はタイムカード等の労働時間の管理状況が把握できる書類が必要となります。

 

② 報酬の支払い方

 

労働者の報酬は、通常、給料で支給されますが、取締役は、役員報酬として支払われます。

 

労働者性の判断は、基本的には客観的な書類で判断されるため、たとえ、実態が労働者と同じ業務を行っていても、報酬が全額役員報酬で支給されていたら、労働者性を否定されてしまう可能性が高くなってしまいます。

 

ですから、労働者としての身分が認められるためには、少なくとも報酬の2分の1以上が給料で支払われている必要があります。

 

なお、取締役が雇用保険に加入して、退職後、失業等給付を受給する場合には、受給額は給料として支給されていた額のみによって算出されます。

 

③ 決算処理について

 

兼務役員雇用実態証明書を提出する時に意外と盲点となるのが、決算処理です。

 

決算では、給料と役員報酬では、当然、別々に処理されます。

 

取締役の報酬が、給料で支給されていたら、その部分については、給料で処理されている必要があります。

 

 

しかし、実際には役員報酬で処理されているケースが多々あります。

 

これは、決算業務を行う税理士に、正しい情報が伝わらないために起こってしまいます。

 

ですから、取締役を雇用保険に加入させる場合には、報酬の決算処理にも注意する必要があります。

 

 

なお、兼務役員雇用実態証明書についての取扱いは、ハローワークによって異なる場合がありますので、詳細につきましては、事業所の管轄のハローワークへお問い合わせ下さい。

 

 

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