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固定残業代は就業規則に必ず明記を!

2018年12月5日

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本ブログでは、固定残業代についてお話ししたいと思います。

 

残業代の代わりに営業手当等の名目で固定に支給している会社もあるかと思います。

 

いわゆる、固定残業代制度と呼ばれる制度です。

 

近年、固定残業代制度に関するトラブルが、急増しています。

 

 

固定残業代制度は、正しい運用を行わなければ、非常にリスクが高い制度です。

 

実は、この制度を誤った認識で運用している経営者の方が非常に多いのが実情です。

 

ですから、今回のブログは、特に既に固定残業代制度を行っている経営者の方には、是非お読みいただきたいと思います。

 

 

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固定残業代制度とは?

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固定残業代とは、残業代(時間外割増賃金)を毎月定額で支払う制度です。

 

本来、残業代は、残業時間に応じて支払うものですが、固定残業代制度では、予め一定の額を残業代として固定して、毎月支払うこととなります。

 

 

ちなみに、固定残業代制度は、法律上の制度ではありませんので、固定残業代という用語も法律用語ではありません。

 

ですから、「定額残業代」や「みなし残業代」とも呼ばれたりしますが、基本的には、同じ意味です。

 

固定残業代制度のしくみ

 

固定残業代制度を用いる場合、通常は、次の2つの形態を取ります。

 

① 基本給等に予め一定額の残業代を組込んで支給する

② 「営業手当」や「職務手当」といった何らかの手当を固定残業代として支給する

 

ちなみに、固定残業代を手当で支給する場合の手当の名称ですが、これも法律に規定があるわけではないので、必ずしも「営業手当」や「職務手当」である必要はなく、名称は任意の名称で問題ありません。


固定残業代に対する誤解

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残業代を定額で支給する固定残業代制度そのものは、必ずしも違法ではありません。

 

ただし、違法にならないためには、正しい運用を行うことが必要です。

 

しかし、実際には、正しい運用がされていないケースが多々あり、従来から問題のある制度とされ、労働トラブルの原因となっていました。

 

 

正しい運用がされない理由は、経営者の固定残業代制度に対する誤解と正しい知識の欠如と言えます。

 

「固定残業代を支払っていれば、それで問題無い」と思っている経営者が、本当に多くいます。

 

 

しかし、これは明らかに間違いです。

 

そして、実際に、このような考えで固定残業代制度を使用しているとしたら、非常に危険なことなのです。

 

では、正しく運用するにはどのようにすれば良いのでしょうか? 

 

固定残業代制度を正しく運用するには? 

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固定残業代制度を正しく運用するには、次の3点に注意する必要があります。

 

①基本給に固定残業代が含まれている場合には、固定残業代として何時間分の残業代とし含まれているか就業規則等に明示する。また、固定残業代を手当として支給している場合には、その手当が固定残業代である旨を就業規則等に明示し、就業規則を適正な方法で周知等させることにより、労働者へ明確に表示する。

 

②実際の残業代が、固定残業代を上回った場合には、その差額を支給する。

 

③実際の残業代が、固定残業代より少ない場合でも、約束した固定額を支給する。

 

固定残業代制度を正しく運用するには、この3点が、遵守されていることが大前提となります。

 

それでは、個々にご説明したいと思います。 

 

①就業規則等への明示は不可欠です。

 

固定残業代制度を正しく運用するには、就業規則等に、固定残業代を明示することが必要です。

 

固定残業代を基本給に含める場合には、何時間分の残業代を含んでいるかを明示することが必要です。

 

就業規則に規定するには、例えば、「基本給には、残業代として30時間相当分が含まれるものとする。」といった文言となります。

 

ただし、金額については、同じ30時間でも基本給の額によって異なってくるので、「ただし、支給額については、個別雇用契約で明示する。」といった文言を入れれば良いでしょう。

 

 

また、固定残業代を営業手当、職務手当等の何らかの手当で支給する場合には、「営業手当は、固定残業代として支給する。」といった内容を就業規則に規定する必要があります。

 

 

つまり、重要なことは、固定残業代が、基本給に含む場合でも、手当として支給する場合でも、それが固定残業代として支給されていることがはっきりと明示され、特に、基本給に含む場合には、基本給と固定残業代とをはっきりと区別することができることです。

 

ですから、「基本給の中に残業代が含まれている。」とか「営業手当には、一部固定残業代が含まれている。」といった、固定残業代の額が、曖昧な場合には、適法とは認められない可能性が非常に高くなります。

 

 

ところで、先にも書きましたが、固定残業代制は問題の多い制度で、実際にトラブルとなり、裁判に至ったケースも多々あります。

 

実は、裁判で必ずと言って良い程、焦点となるのが、就業規則等への明示です。

 

そして、明示が無い場合には、固定残業代制度は、ほぼ否認されています。

 

ですから、就業規則等へ明示が無ければ、いくら経営者が、「残業代として、営業手当を支払っている。」と主張しても、まず認められないと言えます。

 

 

実は、固定残業代が否認されてしまうと、非常に恐ろしい結果となってしまうのです。

 

それにつきましては、後述したいと思います。

 

さらに、就業規則の正しい周知、労働条件通知書への記載等、労働者へ明確に明示することも必要です。 

 

②残業代に不足が生じた場合の差額支給について

 

先程、「固定残業代を支払っていれば、それで問題無い」というのは誤った認識です、と書きましたが、固定残業代を支給していても、実際の残業代が、固定額を上回った場合には、その差額を支給する必要があります。

 

例えば、固定残業代として月々5万円を支給していて、ある月の実際の残業代が、6万円の場合には、差額の1万円を支給しなければなりません。

 

つまり、たとえ、固定残業代制を用いていても、毎月の残業時間の管理は必要となってきます。

 

ですから、「固定残業代を支払っていれば、それで問題無い」という認識は、全くの誤りなのです。

 

 

なお、実際の残業代より不足が生じた場合には、差額を支給する旨を就業規則等に規定することも必要となります。

 

例えば、不足額を調整手当の名目で支給する場合には、「固定残業代として支給している営業手当が、実際の残業代より少なかった場合には、不足額を調整手当として支給する。」といった内容となります。 

 

③実際の残業代が、固定残業代より少ない場合でも、約束した固定額を支給する

 

②とは逆に、実際の残業代が、固定残業代より少ない場合が考えられます。

 

例えば、固定残業代として月々5万円を支給していて、ある月の実際の残業代が、4万円だった場合には、4万円だけ支払えば良いのでしょうか?

 

確かに、固定残業代が、実際の残業代より少ない場合には、その不足額を支払わなければならないのなら、固定残業代の方が多ければ、少ない実際の残業代だけを支払えば良いように思えますが、たとえ、実際の残業代より固定残業代の方が多くても、予め約束した固定額を支払わなければなりません。

 

つまり、固定残業制度は、全く残業しない場合でも、決まった固定額を支払わなければならず、また、足りない場合には、その不足額を支払わなければならない制度なのです。

 

 

固定残業代制度は、これら3つの要件を満たして、正しく運用をして初めて、適法とされます。

 

先程書きましたが、固定残業代が適法でないと判断されてしまった場合には、恐ろしい結果となってしまいます。

 

では、次に、固定残業代制度が、正しく運用されなかった場合についてお話ししたいと思います。 

 

 

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固定残業代制度のリスクとは?

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先程、固定残業残業制度を誤って運用してしまうと、恐ろしい結果となってしまう、と書きましたが、ここでは、固定残業代制度のリスクについてお話ししたいと思います。

 

繰り返しになりますが、固定残業制度は、先に挙げた要件を満たして、初めて適法となります。

 

例えば、基本給20万円で固定残業代として営業手当7万円を支給してしていて、営業手当が、固定残業代である旨を就業規則等に明記していなかった、つまり、固定残業代制度が、否認された場合にはどのようなことが起こるのでしょうか?

 

もし、労働者が訴えを起こし、裁判等で営業手当が、固定残業代として否認されれば、営業手当は、単なる手当に過ぎなくなります。

 

ということは、残業代を1円も支払っていない結果となってしまうのです。

 

7万円は、約45時間程度の残業代のつもりとして支給されていたかもしれませんが、結果的には、約45時間分の残業代が、全くの未払い状態となってしまいます。

 

 

さらに、ここで問題となるのは、固定残業代として否認された営業手当は、単なる手当に過ぎないので、残業代の単価を計算する場合に、当然、含めて計算されることとなります。

 

仮に1ヶ月の平均労働時間を170時間とした場合の残業代の単価は、

 

(基本給20万円+営業手当7万円)÷170時間×1.25=1,986円となります。

 

 

もし、毎月45時間の残業をしていたとすると、1ヶ月間の残業代未払い額は、

 

1,986円×45時間=89,370円となります。

 

 

ところで、残業代の請求時効は2年間なので、もし、2年分を支払うこととなると、

 

89,370円×24ヶ月=2,144,880円となります。

 

 

さらに、訴えは、労働者単独とは限りません。

 

もし、10人で訴えられた場合には、

 

2,144,880円×10人=21,448,800円となってしまいます。

 

 

もし、訴える労働者の人数が20人だったら・・・?

 

月の残業時間が、45時間でなく80時間だったら・・・?

 

考えただけでも、恐ろしくなってしまいます。

 

 

しかし、誤った運用をすることで、固定残業代が否認されてしまえば、このような結果となってしまうのです。

 

このように、固定残業代制度は、誤った運用をしてしまうと、多大な損失を生じさせてしまう恐れがありますので、制度導入の際には、必ず必要な要件を満たすようにして下さい。


また、既に制度を導入していて、正しい運用をされていない場合には、早急な改善が必要です。


固定残業代制度の落とし穴

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ところで、固定残業代制度を用いている場合で、①の固定残業代の明記はされていたけど、②不足分を支払っていなかった、というケースも考えられます。

 

このような場合には、仮に労働者から訴えられたとしても、不足分だけ支払えば良い、と思われるかもしれませんが、必ずしもそうではありません。

 

固定残業代制度は、あくまで先に挙げた必要な要件を全て満たして初めて適法とされます。

 

 

確かに、残業時間の管理もそれなりにしていて、知識不足等が原因で不足分が支払われていなかったのであれば、また、救済される可能性も考えられますが、残業時間も全く管理されていなくて、実際の残業代も全く計算されていないような場合には、固定残業代制度そのものが否認されてしまう可能性があります。

 

固定残業代制度そのものを否認されてしまえば、残業代が全く支払われていなかった、と判断されてしまいます。

 

そのため、固定残業代制度は、導入してからも残業時間の管理や残業代の正しい算出が必要となりますので、ご注意下さい。


固定残業代制度の厳格化について

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これまでお話ししてきましたように、固定残業代制度は、正しく運用されて初めて適法とされますが、現実には、誤った運用をされているため、多くのトラブルの原因となっています。

   

そのため、平成29年には最高裁判決を通達が出され、固定残業代について以下の解釈が示されています。

   

①残業時間に対する残業代を定額で支払う場合は、通常の賃金と残業代に当たる部分とが明確に区分されていいなければならない

 

②固定残業代が、実際の残業代より不足する場合には、不足額を支払わなければならない

  


それに伴い、厚生労働省でも、求人の申し込みの際には、固定残業代の適切な表示を求めるなど、固定残業代制度に対して明らかに以前より規制が厳格化されてきています。

 

>> 固定残業代を賃金に含める場合には(厚生労働省)

 

 

さらに、労働基準法の改正により、固定残業代制度についてさらに注意すべき事項があります。

  

労働基準法では、労働者に法定労働時間を超えて労働させる場合には、時間外労働及び休日労働に関する協定届(36協定)を所轄労働基準監督署に提出する必要があります。

  

協定の中で、1週間、1ヶ月、1年間の残業させることができる時間を決めるのですが、この時間には、大臣告示として上限時間が出されています。

  

具体的には、1週間15時間、1ヶ月45時間、1年間360時間(1年単位の変形労働時間制を用いている場合には、1週間14時間、1ヶ月42時間、1年間320時間)となっています。

  

 

この上限時間数を基に考えれば、固定残業代は、1ヶ月45時間(1年単位の変形労働時間制の場合は42時間)分しか支給できないこととなります。

  

ですから、基本給20万円の場合に、固定残業代を10万円支給するのは、月の平均労働時間を170時間とした場合、

  

20万円÷170時間×1.25≒1,470円

  

10万円÷1,470円≒68時間

  

約68時間分の残業時間に相当するため、本来で言えば、大臣告示に反する形となってしまいます。

  

ただ、この上限時間は、あくまで大臣告示であって、法律ではないので、上記のような固定残業代を支給しても、ある程度容認されてきました。

  

 

しかし、労働基準法の改正により、この上限時間が法律に明記されるようになりました。

   

そのため、この上限時間を超える時間に相当する固定残業代を支払うということは、法律に反する行為を行うとみなされてしまうと考えられます。

   

ですから、これまでお話ししてきた固定残業代制度が、適法となる要件を満たしていたとしても、残業時間の上限を超える額を固定残業代として支給してしまうと、固定残業代制度そのものが、否認されてしまう可能性が十分考えられます。

  

この点は、今後、特に注意が必要と言えます。 

 

 

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最低賃金との関係

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最後に最低賃金との関係についてお話ししたいと思います。

 

ここも重要なポイントですので、是非、お読みください。

 

最低賃金法により、毎月労働者に支払う給料は、最低賃金を上回っていなければなりません。

 

 

しかし、労働者に支払っている給料が、最低賃金を上回っているか判断する時に、労働者に支払っている給料全額を計算に入れることはできません。

 

こちらのパンフレットにありますように、最低賃金の対象とならない賃金が定められています。


>> 最低賃金 対象となる賃金は?

 

 

この中に、「所定労働時間を超える時間の労働に対して支払われる賃金」として残業代が含まれています。

 

固定残業代であっても、残業代には変わりはないので、当然、最低賃金の対象にはなりません。

 

ですから、固定残業代以外の最低賃金の対象となる賃金の合計が最低賃金額を上回っている必要があります。

 

 

1つ具体例でご説明したいと思います。

 

月給制の場合に、最低賃金を上回っているかの確認は、月の平均労働時間により、給料を時給額に換算します。

 

平成30年11月1日現在、東京都の最低賃金は、985円となっています。

 

東京都内の会社で、基本給20万円を支給していた場合、月の平均労働時間を170時間とすると、時給換算額は、

 

20万円÷170時間≒1,176円

 

となり、985円を上回っています。

 

 

しかし、同じ20万円でも、基本給が12万円で固定残業代が8万円の場合、固定残業代は、最低賃金の対象とはならないため、

 

12万円÷170時間≒705円

 

となり、最低賃金額を下回ってしまいます。

 

このような、固定残業代制度を用いる場合には、最低賃金にも注意が必要となってきます。 

 

 

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まとめ

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今回お話しましたように、固定残業代制度は、正しい運用をして初めて適法と認められます。

 

そして、近年、固定残業代制度の運用についての基準が厳格化されてきています。

 

 

もし、誤った運用により、固定残業代が否認されてしまった場合には、多額の残業代不払いが生じてしまう可能性があります。

 

固定残業代制度を用いる時には、必ず正しい運用を行うことが本当に必要となります。



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【関連記事】 >>就業規則を作成しない7つのデメリットとは・・・?

 


 

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