モデル就業規則を参考に就業規則を作成する際の注意点

今回はモデル就業規則を利用して就業規則を作成する際の注意点についてお話ししていきたいと思います。

 

経営者の中にはモデル就業規則やインターネット上の無料のテンプレートを利用してご自身の会社の就業規則を作成しようと考えている方もいらっしゃるかと思います。

 

就業規則は、健全経営を行っていく上で本当に必要不可欠なものですので、私はモデル就業規則や無料のテンプレートを利用して就業規則を作成することは決して悪いことではないと思います。

 

 

 

ただ、無料テンプレートやモデル就業規則は、その性質上、利用する際には注意すべき点がいくつかあります。

 

今回は、その注意点についてお話していきたいと思います。

 

 

業種によって潜んでいるリスクが違います

 

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まず、モデル就業規則や無料テンプレートは、通常、特定の業種を対象として作られているというものは非常に少ないです。

 

特に厚生労働省が公表しているモデル就業規則は、特定の業種を対象としているものではありません。

 

懲戒規定や服務規程等に関しては、どの会社でもある程度共通なところが多いですから、モデル就業規則や無料のテンプレートに記載されている事項で十分対応できるところがあります。

 

 

 

ただし、リスクという観点が必要になってくると思います。

 

これは、どういうことかと言いますと会社を経営していく上で、当然リスクが潜んでいます。

 

リスクは、業種によって当然、異なってきます。

 

 

 

例えば、運送業では車両事故です。

 

ここが一番大きな問題となってきます。

 

ですから、運送業の就業規則を作成する場合には、車両事故をどうすれば起こさないようにするか?という点について意識を高めていく必要があります。

 

 

 

それに対して飲食店の場合、食中毒が考えられます。

 

どうすれば食中毒を起こさないか?

 

そういったルール作りを就業規則に記載していく必要があります。

 

このように、業種によって抱えているリスクが違いますので、モデル就業規則や無料テンプレートを利用して就業規則を作成する場合には、そのモデル就業規則や無料テンプレートに書かれてる内容にプラスして、ご自身の会社に起こり得るリスクを考慮して就業規則を作られると良いと思います。

 

 

法律の基準を上回る規定には注意

 

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モデル就業規則や無料テンプレートの場合、よく法律の基準を上回った内容が記載されていることが多々見られます。

 

例えば、慶弔休暇です。

 

慶弔休暇というと従業員や従業員の家族に冠婚葬祭があった場合に、従業員に与える休暇のことですが、実は、慶弔休暇に関しては、法律に特段の規定がありませんので、慶弔休暇を設けるか否かは、会社の全くの自由となります。

 

ですから、慶弔休暇が無くても法律的には全く問題ありません。

 

 

 

ただ、多くのモデル就業規則や無料テンプレートには、慶弔休暇が書かれています。

 

そして、そのモデル就業規則や無料テンプレートを見た経営者が、そこに慶弔休暇の事項が書かれているから、「慶弔休暇は、就業規則に記載しなければいけないもの」と思われて、ご自身の会社の就業規則に記載すると、元々、義務ではなかった慶弔休暇が、労働者の権利となります。

 

そのため、後で、「慶弔休暇を辞めたい」とか「慶弔休暇の日数を減らしたい」と思ったとしても、労働者にとって不利益となりますので、経営者が一方的に変更することができなくなります。

 

ですから、このような点もモデル就業規則や無料のテンプレートを利用する際にはご注意していただければと思います。

 

 

相対的必要記載事項に注意する

 

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ところで、先程お話しした慶弔休暇に関係することですが、就業規則を作成する場合には「絶対的必要記載事項」と「相対的必要記載事項」の2つを考える必要があります。

 

絶対的必要記載事項とは、就業規則を作成する時には、必ず記載しなければいけない事項のことを言います。

 

それに対して、相対的必要記載事項は、会社内に定めがある場合に記載しなければいけない事項を言います。

 

 

 

先程お話しした慶弔休暇が これに当たりますので、多くのモデル就業規則や無料テンプレートに関して相対的必要記載事項は、労働基準法で約8つ定められていますが、この相対的必要記載事項のほとんどが、書かれているモデル就業規則や無料テンプレートが多いようです。

 

もちろん、ご自身の会社で、相対的必要記載事項であっても、会社が制度として設けると考えるなら、全然問題はありません。

 

ただ、先程の慶弔休暇の時にもお話しましたが、元々、相対的必要記載事項に関しては、会社に義務が無いので、それを敢えて入れるということは、これは、労働者の権利を与えることとなります。

 

 

 

一度、就業規則に記載した事項は、労働者の権利となりますので、一方的に経営者が それを廃止とか条件を低下することはなかなか難しくなります。

 

モデル就業規則とか無料テンプレートを利用して就業規則を作成する際には、相対的必要記載事項にはどのようなものがあるかを、正しく理解して作る必要があります。

 

 

まとめ

 

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最後に少し余談になりますが、今回、モデル就業規則や無料テンプレートを利用する際の就業規則の注意点について3つほどお話させていただきましたが、実際、私達社会保険労務士とかがブログ等でモデル就業規則や無料テンプレートについて少し批判的な内容の事を書いていたり話をしていることを、実際多々見られます。

 

実は、それについて厚生労働省から通達が来ています。

 

元々、法律より上回った基準を設けることは、これは決して悪いことではありません。

 

むしろ国としては、是非そういうことは進めて欲しい、でも、社会保険労務士が「モデル就業規則には、そういうこと書いてあるけど、別にそんなことやらなくて良いのだよ。」というように、あえて良くする方法をやめさせている、というように取られたところがありまして、そういうことは止めて欲しいということで、通達が出される結果となってしまいました。

 

 

 

ここで、誤解して欲しくないのですが、私も法律を上回った事項、例えば、賞与とか退職金、休職制度は、従業員にとって非常に大切なことですし、このような制度を入れていくということは、会社発展にとって非常に大切な事だと思います。

 

ですから、是非、積極的に検討していただきたいと思います。

 

 

 

ただ、それとは別の問題で、先程も書きましたが、一度ルールを決めてしまうと従業員の既得権になって、一方的に経営者が それを廃止や条件を下げることが出来なくなる事実もあります。

 

つまり、何を言いたいかと言いますと、安易に、退職金制度とか休職制度、今回お話した慶弔休暇こういう制度を入れて、それが後になって会社の負担となって業務に支障が出てしまっては、これは、ある意味本末転倒になってしまいます。

 

 

 

ですから、私は 福利厚生や労働条件を向上させることは、是非、やっていただきたいと思いますが、ただ、あくまでもご自身の会社の実状や体力に合ったものにして頂きたいのです。

 

安易に制度化してしまい、後で大きな負担となってしまうと、これはまた大きな問題となってしまいますので、ご注意下さい。