年収130万円未満の誤解とは?
今回は、健康保険の扶養入るための年収条件である、年収130万円未満についてご説明していきたいと思います。
こちらの動画で、健康保険の扶養に入るための条件として、生計維持と同一世帯についてご説明しています。
◆健康保険 扶養に入る条件とは? まず!生計維持と同一世帯
⇒ https://youtu.be/4aDncr1n0Ec
しかし、健康保険の扶養にはいるためには、収入の条件もあります。
具体的には、年収が130万円未満であることが条件です。
この年収130万円未満については、よく聞く言葉かと思いますが、多くの経営者や労働者の方が誤解しているようです。
健康保険の扶養に入るためには、この収入の条件、つまり年収130万円未満を正しく理解する必要があります。
今回は、健康保険の扶養に入るための年収条件、年収130万円未満について詳しくご説明したいと思いますので、是非最後までお読みいただければと思います。
なお、最初にお断りさせていただきたい点が二つあります。
まず今回お話する内容は、全国健康保険協会(通称「協会けんぽ」)の制度を基にご説明させていただきます。
そのため、企業などが設立する健康保険組合の場合と、今回の説明と内容が異なる場合もあります。
ですから、このブログをお読みのあなた様が、健康保険組合に加入されている場合には、ご自身が加入されている健康保険組合に確認して下さい。
そして、年収130万円未満ですが、60歳以上や特定の障害者の場合は、この条件が緩和されて年収が180万円未満でも扶養に入れる場合があります。
今回は、年収130万円未満という言葉で、ご説明させていただきますので、60歳以上や特定の障害者に該当する場合は180万円未満に置き換えていただければと思います。
年収130万円未満の年収とは?
健康保険保の扶養に入るための条件、年収130万円未満についてですが、そもそも年収というのは、いつからいつまでの収入を指すのか?についてですが、実は多くの経営者の方や労働者の方が誤解しています。
多くの方は、年収を1月1日から12月31日までの1年間の収入と思っています。
しかし、それは間違いです。
なぜそのように思われるかというと、所得税の配偶者控除や扶養控除を算定する場合の収入が1月1日から12月31日までの1年間の収入をもとに判断されるため、それと同じように考えられているのです。
しかし、健康保険の扶養の年収条件の年収は、1月1日から12月31日までではありません。
では、いつからいつまでか?と言いますと、現時点から今後1年間に得る収入を指します。
つまり、過去の収入ではなく、あくまでも現時点から1年間に得る収入です。
ここが非常に分かり難い点ですので、具体的な事例でご説明したいと思います。
AさんとBさんという女性がいたとします。
AさんとBさんともにご主人様がいて、Aさんご主人様もBさんのご主人様も、健康保険の加入者とします。
まず、Aさんのケースです。
Aさんは会社員で月収が150万円のキャリアウーマンです。
しかし、何らかの理由、例えばお子さんができたなどの理由で、10月31日に勤めている会社を退職し、その後は専業主婦となって無収入になるケースを見てみます。
10月31日に退職ですから、1月1日から10月31日までの10ヶ月間の収入は、当然130万円を超えています。
月収150万円ですから、1ヶ月で130万円を超えてしまいます。
10ヶ月間で1,500万円の収入を得ていることになります。
しかし、1月1日から10月31日まで1,500万円稼いでいるAさんですが、10月31日に退職して、その後専業主婦となった場合、11月1日時点では、向こう1年間に稼ぐ収入はゼロです。
ですから、このケースでは、Aさんは11月1日からご主人様の健康保険の扶養に入れることになります。
過去にいくら収入があったとしても、11月1日以降は無収入となるため、1年間に稼ぐ収入はゼロという考え方になります。
それに対してBさんのケースです。
Bさんは専業主婦として10年間、ずっと無収入でいたとします。
そして、その間ご主人様の健康保険の扶養に入っていたとします。
ところが、Bさんは、お子さんも大きくなったため、11月1日からパートタイマーである会社に就職したとします。
そして、その就職先の労働条件は月収15万円で働くことになったとします。
このようなケースでは、11月1日に就職した時点でBさんは月々15万円稼ぐこととなります。
つまり、11月1日から向こう1年間に対して月々15万円で年間180万円稼ぐことになります。
したがって、年収130万円を超えてしまうわけです。
この場合、Bさんは11月1日の時点でご主人様の健康保険の扶養から抜けなければいけないという考え方になります。
ところで、Bさんは、11月1日時点では実際にはまだ収入を得ていません。
しかし、健康保険では、11月1日時点で今後1年間に稼ぐお金が130万円以上とみなすこととなります。
ですから、11月1日の時点で、年収130万円未満という条件を満たしていないとみなされるため、ご主人様の健康保険の扶養から抜けなければならないこととなります。
このように健康保険の年収というのは、過去の年収ではなく、あくまで現時点から今後1年間に得る収入の額を指します。
ところで、130万円を12ヶ月で割ると、1ヶ月あたり10万8333円となります。
従って、1ヶ月10万8333円以上の収入を得ることが確実となった時点で健康保険の扶養に入ることはできない、という考え方となります。
健康保険の扶養の年収に関しては、多くの方が誤解しているところですので、是非正しくご理解いただければと思います。
130万円についての注意点
ここでは、年収130万円未満の金額についての注意点等についてご説明したいと思います。
まず、130万円という金額についてですが、給与所得者の場合は総支給額となります。
税金や保険料を引いた後のいわゆる手取り額ではありません。
税金や保険料が控除される前の総支給額が算定の対象となります。
そして、ここで注意していただきたいのは、非課税交通費も含める点です。
所得税の配偶者控除や扶養控除を計算する場合には、非課税交通費を入れませんが、健康保険の扶養の年収条件の場合には非課税交通費も含めて算定します。
ここは多くの方が誤解する点ですので、ご注意いただければと思います。
そして、給与所得以外に収入がある場合には、その収入も合算して130万円未満かどうかを判断します。
給与所得以外の収入として代表的なものが年金収入です。
年金収入に関して注意すべき点は、障害者年金と遺族年金です。
障害者年金や遺族年金は、税法上非課税ですが、健康保険の扶養の年収には、遺族年金や障害年金の金額も含めて算定することとなります。
ですから、給与所得以外に遺族年金や障害年金を受け取っている場合には、それらを合算して年収条件の基準を満たしているかどうか判断することになります。
先程ご説明して非課税通勤費と同じ考え方をするので、ご注意下さい。
次に自営業者の事業所得についてご説明したいと思います。
通常、自営業者の場合、売上げから様々な経費を引いて所得を算出します。
しかし、健康保険の扶養の場合には、経費として認められるのは売上原価だけです。
つまり、売上から売上原価を控除した金額を収入とみなします。
売上原価とは、商品を仕入れた場合の仕入れ費や製造原価などのことです。
人件費や広告費は、経費として認められません。
ですから、私のような士業やコンサルティング業のように売上原価がない業種の場合、売上イコール収入となります。
例えば、売上が100万円で、人件費や広告費が100万円の場合、税法上は、所得はゼロになります。
しかし、健康保険の扶養を判断する場合には、100万円が収入として見なされます。
もしそれ以外に年金収入や給与収入が、仮に50万円あれば、年収は150万円となるため、健康保険の扶養に入ることはできません。
このような考え方になります。
ですから、自営業者の場合や給与所得者でも給与所得以外に事業所得がある場合は注意が必要です。
そして、さらに注意していただきたいのが、今お話しした考え方は全国健康保険協会の制度の考え方です。
各企業等が設立している健康保険組合については、自営業者の収入の算定方法がそれぞれ独自に定められており、正直、これより厳しい制度を設けているところもあります。
加入者が健康保険組合に加入している場合は、その健康保険組合の制度をよく確認していただければと思います。
最後に一点注意していただきたい点があります。
今回お話ししましたように、健康保険の扶養に入るには、年収130万円未満であるという条件があります。
年収が130万円以上となった時点、つまり、今の時点から今後1年間に得る収入が130万円以上となった時点で、健康保険の扶養に入っている方は健康保険の扶養から外れる必要があります。
この手続きは、各個人の判断に任されています。
各個人は、自分がこれから1年間に130万円以上稼ぐことが確実となった時点で、健康保険の扶養から外れる手続きを行わなければなりません。
しかし、年間130万円以上収入を得ることが確実なのに、そのまま健康保険の扶養に入り続けていると、健康保険協会はマイナンバー等により扶養に入っていることが正しくないと判断し、過去にさかのぼって健康保険の扶養を取り消されるケースも考えられます。
この点は、ご注意していただければと思います。
まとめ
今回は、健康保険の扶養に入るための収入の条件、年収130万円未満についてご説明いたしました。
健康保険において年収の考え方は、今の時点から今後1年間に稼ぐ収入の金額をいいます。そしてその収入が、130万円未満であるということが条件となってきます。
そして、その年収には、給与所得者の場合は、非課税交通費を含めた総支給額、そして年金収入の場合は、非課税である障害者年金、遺族年金の額も含めます。
また事業所得者の場合は、売上原価のみ経費として売上から控除できる、このようなところを注意していただければと思います。
いずれにしても、健康保険の扶養の手続きをする場合、この年収条件は、非常に重要なポイントとなってきますので、是非正しく理解していただければと思います。