任意継続 国保 退職後の手続きここだけは知っておきたい!
今回は、任意継続被保険者と国民健康保険について退職前に知っておくべきポイントについてご説明したいと思います。
会社を辞めた後、健康保険を抜ける際、任意継続被保険者か国民健康保険のどちらかを選択することになりますが、その際の手続きで必ず知っておくべき点があります。
今回は、国民健康保険や任意継続被保険者の手続きに関する重要なポイントについて解説します。
特に任意継続被保険者については、手続きを誤ると取り返しがつかない事態になる可能性がありますので、注意が必要です。
今回の内容は、経営者や事務担当者だけでなく、従業員の方も是非お読みいただければと思います。
なお、最初に一つご了解していただきたいことがあるのですが、これからご説明する任意継続被保険者に関しては、全国健康保険協会の制度を基に説明いたします。
したがって、各企業が設立している健康保険組合などの場合は、今回の内容とは異なる可能性がありますので、その点については了解いただければと思います。
国民健康保険への加入手続きのポイント
会社を辞めた後あるいは健康保険を抜けた後に、親族の中に健康保険の加入者いて、その加入者の扶養に入ることができれば、それが最も得策といえます。
しかし、当然健康保険の扶養に入れない場合もあります。
その場合には、任意継続被保険者か国民健康保険を選ぶ形となりますが、どちらを選ぶ場合でも手続きを行う際に、必ず知っておくべきポイントがあります。
これから、そのポイントについてご説明したいと思います。
最初に、国民健康保険についてご説明したいと思います。
国民健康保険に加入する場合、退職の翌日から14日以内に手続きをしなければならないとされていますが、実際には、14日を過ぎても実際には国民健康保険に加入することが可能です。
ただし、退職後一定期間経過後に国民健康保険に加入する場合には、注意すべき点があります。
事例を基にご説明していきたいと思います。
ここでは、令和6年の3月31日に会社を退職し、健康保険を抜けたという前提でお話しします。
令和6年の3月31日に退職し、本来であれば翌日の4月1日から国民健康保険に加入できるのですが、忙しくて手続きができず、気が付いたら令和6年の5月1日になっていた。1か月間、国民健康保険に加入しなかったというケースです。
そして、5月1日に国民健康保険の手続きをしようとしたとき、1か月間病院に行かなかったため、この期間の保険証は必要ないと考え、令和6年の5月1日から国民健康保険に加入したいと考えるかもしれません。
しかし、国民健康保険への加入には一つのルールがあります。
それは、健康保険を抜けた翌日からでなければ国民健康保険に加入できないということです。ですから、令和6年の5月1日に「今日から国民健康保険に加入したい」と言っても、それはできません。
加入するのであれば、令和6年の4月1日から国民健康保険に遡って加入しなければなりません。
したがって、当然その期間の保険料も支払わなければなりません。
もちろん、令和6年の4月1日に加入した場合と、令和6年5月1日に遡って保険料を支払う場合、トータルの保険料は同じかもしれません。
しかし、5月1日に過去1か月分の保険料を支払う場合、その1か月間病院に行っていなければ、無駄な保険料を支払ったように感じてしまうでしょう。
これが、もし令和6年の6月や7月に手続きを行った場合、最初に支払う保険料の金額がさらに大きくなってしまいます。
ですから、国民健康保険の加入手続きは、退職後速やかに行う必要があります。
また、国民健康保険は、健康保険を抜けた翌日からでないと加入できないというルールがありますが、それを証明する書類が必要です。
この書類が「脱退連絡票」で、会社が発行します。
この書類は、退職した労働者が令和6年3月31日に退職したことを証明するものです。ですから、この書類がないと国民健康保険に加入することはできません。
ところで、日本年金機構のホームページを見ると、日本年金機構も健康保険を抜けたことを証明する書類を発行してくれることがわかります。
しかし、会社が脱退連絡票を発行してくれない場合、日本年金機構に証明書を求めようとしても、年金機構がその労働者が健康保険を抜けた手続きが完了していることを確認できないと、証明書を発行してくれません。
実際、脱退連絡票を出してくれない会社が、すぐに健康保険の脱退手続きを行うとは、なかなか思えないものです。
そのため、退職して健康保険から抜ける場合には、この脱退連絡票を必ず会社からもらうことを忘れないで下さい。
経営者や事務担当者の方も、労働者が退職して健康保険を脱退した際には、この脱退連絡票を速やかに発行するよう心掛けて下さい。
任意継続被保険者への加入手続きのポイント
次に任意継続被保険者への加入手続きのポイントについてご説明したいと思います。
任意継続被保険者の手続きは、非常に重要なポイントです。
任意継続被保険者は、手続きの申請期限が退職日の翌日から20日以内と定められています。
例えば、令和6年3月31日に退職した場合、退職日の翌日から20日以内、つまり令和6年4月20日までに、手続きをしなければなりません。
ところで、労務管理の手続きに関しては、多くのものに申請期限が設けられています。
しかし、多くの手続きでは、申請期限を過ぎても手続きが可能な場合がほとんどです。
国民健康保険も、14日以内という期限が設けられていますが、実際には14日を過ぎても加入することができます。
しかし、任意継続被保険者の申請期限は、退職日の翌日から20日以内が厳格に守られます。
例外が認められるのは、大規模な災害等、労働者の力ではどうしようもなかった場合に限られます。
単に忙しくて手続きを忘れてしまった場合は、任意継続被保険者になることはできません。
退職後の保険料が任意継続被保険者の方が安くても、申請期限を過ぎてしまった場合は、任意継続被保険者になることはできなくなります。
このため、任意継続被保険者の申請期限は非常に重要なポイントですので、是非覚えておいて下さい。
経営者や事務担当者の方も、退職する労働者が任意継続被保険者になりたいと言った場合には、申請期限に気をつけるようアドバイスをしてあげてください。
さらに細かい点として注意すべきことですが、この20日以内の考え方です。
先程ご説明したように、令和6年3月31日に退職した場合、令和6年4月20日が申請期限となりますが、申請手続きの完了は、申請書が令和4年4月20日までに、健康保険協会に届いていることが必要となります。
ところで、健康保険協会は全国の各都道府県に1つ設けられています。
例えば、静岡県では静岡市に健康保険協会がありますが、浜松市や沼津市、富士市のように静岡市から遠い地域の方は、郵送で手続きを行うことになります。
最近、土曜日の郵便配達がなくなり、郵便の配達が以前と比べて遅くなっています。
そのため、郵送で手続きをする場合は、余裕を持って行うことが必要となりますので、この点も是非覚えといて下さい。
いずれにしても、任意継続被保険者の申請期限は非常に重要となります。
そして、さらに任意継続被保険者について、注意すべきポイントがあります。
任意継続被保険者の手続きは、今ご説明した通り、退職日の翌日から20日以内に行う必要があります。
しかし、実際に保険証が発行されるのは、従来では、会社が、任意継続被保険者加入者の健康保険の脱退の手続きを行い、それを健康保険協会が確認した後でした。
例えば、4月15日に健康保険協会に申請書が届いても、勤めていた会社が、健康保険の脱退の手続きが遅れてしまい、例えば5月20日に手続きが完了したとすると、従来の制度では5月20日以降にようやく保険証が発行されることになりました。
しかし、これでは労働者に不利益が生じるため、現在の制度では、健康保険を抜けた日を確認できる書類を任意継続被保険者の申請時に同封すれば、健康保険の脱退手続きが完了する前でも保険証が発行されるようになっています。
この場合、証明書として有効な書類は、退職証明書、雇用保険の離職票、健康保険の資格喪失届などです。
これらの写しを申請書に添付すれば、従来よりも早く保険証が発行されることになります。
ただし、注意が必要なのは雇用保険の離職票です。
雇用保険の離職票は、退職日の翌日から10日以内に手続きを行う必要があると法律で定められていますが、実際には10日以内に手続きができない場合もあります。
例えば、退職日が賃金計算期間の末日であった場合、最後の1ヶ月間の給与額が必要になるためです。
そして、月末締めで翌月25日払いの会社の場合、給与額の計算が終わるのが、賃金締め切り日から20日後になるケースもあります。
そのため、雇用保険の離職票を待っていると、任意継続被保険者の申請期限である20日を過ぎてしまう可能性があります。
早く保険証が欲しい場合は、退職証明書か健康保険の資格喪失届を会社から早めにもらうのが良いと思います。
もちろん、すぐに離職票を発行してもらえば良いのですが、時間がかかる場合もあるため、退職証明書や健康保険の資格喪失届を優先してもらう方が賢明かと思います。
なお、健康保険を抜けた日を証明する書類の添付がない場合は、従来通りの扱いになります。
つまり、健康保険の脱退手続きが確認されてから保険証が発行されることになります。この点もぜひ覚えておいてください。
最後に、任意継続被保険者についてもう一つお伝えしたいことがあります。
任意継続被保険者に加入する際、どの健康保険協会に申請するかという点ですが、現在お住まいの都道府県の健康保険協会に提出します。
会社が加入していた健康保険協会ではありませんので、注意が必要です。
例えば、会社が東京都にあって東京都の健康保険協会に加入していた場合でも、お住まいが神奈川県横浜市であれば、神奈川県の健康保険協会に任意継続被保険者の申請書を提出することになります。
この点も合わせて覚えておいてください。
国民年金との関係について
最後に任意継続被保険者、国民健康保険と国民年金の関係についてご説明したいと思います。
国民年金の加入は、健康保険を抜けた後にも関係してくる事項です。
特に任意継続被保険者を選択した場合には、盲点となりやすいので、引き続きお読みいただければと思います。
健康保険に加入している場合、基本的には厚生年金にも同時に加入することになります。
ちなみに、この二つを合わせて社会保険と呼びます。
健康保険と厚生年金は基本的に同時に手続きを行う形になります。
そのため、退職して健康保険を抜けると、同時に厚生年金も抜けることになります。
ですから、健康保険を抜けた後、国民健康保険を選んだ場合は、厚生年金ではなく国民年金に切り替わります。
次に退職後任意継続被保険者になった場合ですが、ここは注意が必要です。
任意継続被保険者を選んだ場合でも、年金は国民年金になります。
在職中は健康保険と厚生年金がセットで加入になりますが、退職後は、任意継続被保険者というのは健康保険の制度であり、たとえ任意継続被保険者を選んだとしても、厚生年金には引き続き加入できないのです。
そのため、任意継続被保険者を選んだ場合でも、年金は国民年金になるという点が盲点となる部分です。
ところで、国民健康保険を選んだ場合、手続きは市区町村の役所の窓口で行いますが、国民年金も同じ窓口で手続きできる場合が多いです。
全ての市区町村で確認したわけではないので断言できませんが、国民年金の手続きも市区町村で行うため、通常は国民健康保険の手続きを行えば、同時に国民年金の手続きも行ってくれます。
ですから、国民健康保険を選んだ場合は問題ありませんが、任意継続被保険者を選んだ場合には注意が必要です。
任意継続被保険者の手続きは、先程ご説明したようにお住まいの都道府県の健康保険協会に申請書を提出して行います。
ここで覚えておいていただきたいのは、任意継続被保険者の手続きを行ったからといって、国民年金の手続きが自動的に行われるわけではないということです。
国民年金の手続きは、自分で別途行わなければなりません。
そのため、任意継続被保険者を選んだ場合、健康保険と国民年金の二つの手続きを行う必要があります。
この点は多くの人が盲点となりがちです。もし任意継続被保険者の手続きだけを行い、国民年金の手続きをしていない場合、国民年金の未納期間が増えてしまうことになりますので、ぜひ覚えておいてください。
また、経営者や事務担当者の方も、退職する労働者が任意継続被保険者を選んだ場合、必ず市区町村で国民年金の手続きを行うようアドバイスして下さい。
まとめ
今回は、任意継続被保険者および国民健康保険の手続きに関して、必ず知っておいていただきたいポイントをお話しさせていただきました。
国民健康保険の加入する場合、必ず健康保険を抜けた日の翌日から加入となります。
そのため、手続きが遅くなるほど、初回に納める保険料が多くなるため、注意が必要です。
そして、任意継続被保険者を選択した場合、最も重要なのは申請期限です。
申請期限は厳格に適用されるため、退職日の翌日から20日以内に、お住まいの都道府県の健康保険協会に申請書が届くように、早めの手続きを行うようにして下さい。
繰り返しになりますが、申請期限を過ぎると、任意継続被保険者には基本的になれないので、この点は忘れずに覚えておいてください。
また、経営者や事務担当者の方も、退職する労働者が任意継続被保険者の申請をする場合、申請期限に注意するようにアドバイスをお願いします。
さらに、国民年金との関係にも注意が必要です。
特に、任意継続被保険者を選んだ場合、国民年金の手続きを忘れてしまうことが考えられますので、この点も必ず確認していただければと思います。