夫ではなく子供を妻の扶養に入れることはできますか・・・?

 

【質問】

 

「健康保険に加入している女性従業員から、子供を夫ではなく、自分の健康保険の扶養に入れて欲しい」と言われました。

 

聞くと、その従業員に夫もいて、自営業を営んでいて収入もあるそうです。そのような場合でも、女性従業員の扶養に入れることができるのでしょうか?

 


【回答】

 

はい、その女性従業員の方が、ご主人様より収入が多ければ、子供さんを扶養に入れることは可能です。

 

 

【解説】

 

健康保険の扶養に入るには、年収が130万円未満である等の収入要件を満たす必要があります。

 

扶養の対象が、特に中学生以下の子供さんである場合は、通常は、収入が無いので、収入要件はクリアします。

 

ところで、通常は、子供さんを扶養に入れる場合、父親の扶養に入れるのが、一般的ですが、母親の扶養に入れることも可能です。

 

健康保険の扶養の場合、父親、母親両方に収入がある場合は、原則、収入が多い親が子供を扶養していると考えます。
 
 

 


ところで、健康保険の扶養に入ると、保険料を負担することなしに、一定の保険給付を受けることができます。

 

ですから、父親、母親両方が健康保険に加入していれば、どちらの扶養になっても、金銭的な負担が増えることはありません。
 
 


しかし、どちらかが、国民健康保険の場合には、事情が違ってきます。

 

国民健康保険の場合、「扶養」という概念がなく、「世帯全体で加入」という考え方をします。ですから、保険料も世帯全体で保険料が発生します。


 
つまり、世帯で、国民健康保険に加入する人数が多ければ、その分、保険料も高くなります。(保険料の決定は、加入人数以外にも、収入や資産によって決定されます。)
 

 

 

ところで、ご質問者様の従業員の方のご主人様のような自営業者であれば、現在は、国民健康保険に加入していると考えられます。

 

このような場合、子供さんを父親でなく健康保険に加入している母親の扶養に入れた方が、金銭的な負担は少なくなります。

 

実際、このようなご質問は最近増えてきています。
 
 

 


しかし、先程も書きましたように、健康保険では、父親と母親の両方に収入があった場合には、その子供は、原則、収入の多い方に扶養されているとみなします。

 

ですから、ご質問者様の従業員の方が、ご主人様より、収入が多ければ、従業員の方の扶養に入れることは可能ですが、ご主人様の方が収入が多い場合でも、たとえ、ご主人様が加入している保険が、国民健康保険であっても、子供さんを従業員の方の扶養に入れることはできません。

 

従って、まずご主人様の収入を申告してもらって、その額が、従業員の収入と比較する必要があります。
 
 

 


ところで、昇給等の理由で夫婦間の収入の大小が逆転する場合があります。

 

このような場合には、当然、扶養の変更の手続きが必要となります。

 

 

 

ただ、ここで注意しなければならないのは、健康保険の扶養についての年収の考え方は、過去の年収の大小ではなく、現時点から将来に向かっての年収の大小で判断されます。

 

例えば、夫の月収が15万円で妻の月収が30万円で、子供を妻の扶養に入れている場合で、ある時、夫の月収が昇給等の理由により月収35万円となったとします。

 

年収ベースで考えれば、夫が昇給等した時点では、妻の方が年収が多いのですが、健康保険の扶養の年収についての考え方は、先程述べましたように、現時点から将来に向かっての年収の大小で考えますので、夫が昇給等で月収35万円となった時点で、夫の方が妻より収入が多いこととなります。

 

従って、夫の月収が35万円となった時点で、子供さんの扶養を妻から夫へ変更する必要があります。

 

この点は、是非、正しく理解していただきたいと思います。
 

 


 
ちなみに、国民健康保険料は、その世帯で加入する人数(世帯割)、前年の所得(所得割)で決定されます。

 

なお、国民健康保険は、市町村が運営しているので、詳細につきましては、お住まいの役所等でご確認下さい。

 

 

【まとめ】

 

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健康保険の扶養に入るためには、被扶養者の年収が130万円未満であるなどの収入要件を満たす必要があります。

 

中学生以下の子供は通常収入がないため、この要件を満たします。

 

扶養者は一般的に父親が選ばれることが多いものの、母親を扶養者とすることも可能です。

 

父親と母親の両方に収入がある場合、原則として収入が多い方が扶養者とみなされます。

 

 

 

健康保険の扶養に入ることで、保険料負担なしに一定の保険給付が受けられます。

 

父親と母親の両方が健康保険に加入している場合、どちらの扶養に入っても金銭的負担に差はありません。

 

 

 

しかし、片方が国民健康保険に加入している場合は異なります。

 

国民健康保険には「扶養」の概念がなく、世帯全体で保険料を負担する仕組みであるため、世帯の加入者数が増えると保険料も増加します。

 

 

 

ただし、健康保険では収入の多い親が扶養者とみなされるため、母親を扶養者にするには母親の収入が父親を上回る必要があります。

 

また、夫婦間で収入の逆転が生じた場合には、扶養者を変更する手続きが必要です。

 

この際、過去の年収ではなく、現時点から将来の収入見込みに基づいて判断されるので注意が必要となります。