パパも取れる育児休業について

今回は育児休業についてお話したいと思います。

育児休業に関する法律が施行されてから、だいぶ長い年月が経過しています。

私が、社会保険労務士の仕事を始めて20年近く経ちますが、始めた頃には育児休業を取る従業員は、女性の従業員でも本当に稀でしたが、20年経った現在においては女性従業員を中心に多くの方が育児休業を取得されています。

本当に社会に浸透したと感じます。

ところで、現在、我が国では女性がより活躍できる社会を目指すということで、国が様々な政策を掲げて取組んでいます。

その中には子供を産んだ後、職場復帰しやすい職場環境を作る取組みも当然、含まれています。

ですから、育児休業は、労務管理の上で、今後ますます非常に重要なポイントになってきます。

今回は、育児休業についてわかりやすく解説してありますので、是非、最後までお読み下さい。

また、ブログの最後で、育児休業に関する助成金もご紹介していますので、こちらもご参考になさって下さい。

育児休業は男性も取得する権利が

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育児休業は、その制度自体は非常に複雑ですが、考え方としては、「労働者は、子供が1歳になるまで会社を休ことができる権利ある。」という非常にシンプルなものです。

しかし、先程言いましたように、制度自体が複雑であるため、いくつか注意すべき点があります。

ここでは、育児休業についてまず知っておくべき注意点についてご説明していきたいと思います。

育児休業に関する法律が出来た当時は、「育児休業は女性が取得するもの」といったイメージがありましたが、育児休業は、男性従業員にも取得する権利を有します。

さすがに、最近は、男性でも育児休業を取得できるという法律の存在を理解している経営者は増えてきましたが、まだまだ、男性の育児休業については、浸透していない面がありますので、まず、育児休業は女性だけでなく、男性も当然に取得できる、ということをご理解下さい。

ここで、1つ制度上の注意点に簡単にご説明いたします。

男性も女性も、子が1歳になるまで休業できる点は同じですが、男性と女性では育児休業を開始できる日が違います。

女性の場合は、出産日の翌日から、56日間(8週間)は、労働基準法上の産後休業となりますので、育児休業を開始できるのは、この産後休業が終わってから、つまり、出産日の翌日から57日目となります。

それに対して男性には産後はありませんので、出産の翌日から育児休業を開始できます。

一部例外規定があります

ところで、法律では、育児休業を取ることができない従業員、つまり、会社として育児休業を与えなくて良い従業員を定めています。

まず、日雇労働者です。

日雇労働者 日々雇用される従業員に関しては、会社は育児休業を与えなくて良いとされています。

さらにもう1つが、雇用期間の定めがある一部の有期契約の従業員です。

具体的には、育児休業取得の申出時に、入社1年未満の従業員でかつ子が1歳6ヶ月に達するまでに雇用契約が終了予定している従業員です。

ですから、有期契約の従業員であっても、育児休業申出時に、入社後1年を経過していれば育児休業を取得することが原則可能となります。

また、この例外規定は、あくまで有期契約の従業員が対象となりますので、労働時間や労働日数が正規従業員より短い労働者であっても、雇用期間に定めが無い従業員は、たとえ、入社1年未満であっても、育児休業を取得する権利を有することとなります。

ところで、実際、従業員が育児休業を取得できないケースは、稀なケースと言えます。

ですから、育児休業は、基本的には従業員の権利と考えることが必要かと言えます。

よく経営者の方で、育児休業に限らず、有給休暇とか割増賃金等について、正社員だけが対象あるいは社会保険に加入している従業員だけが対象というように誤解されている経営者の方が結構多いのですが、あくまでも育児休業の権利は、正社員とか準社員、パートタイマー等の身分で決まるものでもありませんし、社会保険等に加入しているかどうかで判断されるものでもありません。

繰返しになりますが、育児休業は、従業員の権利であり、女性であったとしても男性であったとしても取得する権利があります。

ここは、重要なポイントとなってきますので、正しくご理解していただきたいと思います。

パパママ育休プラスについて

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現在、国は、男性の育児休業の取得率を向上させるために様々な政策を打ち出しています。

その中の1つとして、10年位前から「パパママ育休プラス」と言って、夫婦で育児休業を取得した場合に、育児休業の取得期間は基本的に子が1歳に達する日までですが、このパパママ育休プラスを利用すると、子が1歳2ヶ月に達するまで育児休業を取得することが可能となります。

通常の育児休業の場合、子が1歳に達した時点で保育所が空いていない場合等には、育児休業を延長することができますが、このパパママ育休プラスは、保育所の空きの有無に関係なく、条件さえ満たせば権利として、2ヶ月間、育児休業を延長することができる制度です。

このパパママ育休プラスは、制度化されて10年位経ちますので、従業員にとってもかなり関心が高くなってきて、今後、パパママ育休プラスについても正しく理解しておく必要あるかと思います。

パパママ育休プラスについては、こちらの動画で詳しく説明してありますので、是非、ご覧になっていただければと思います。

育児休業の延長と育児休業給付金との関係

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育児休業は、従業員が子供を育てるために休む権利を与えるものですが、法律では休業期間中の給料については、特段の定めがありあせん。

従って、会社は、従業員が育児休業を取得することは認めなければならないのですが、休業期間中の給料については、必ずしも支給する必要はありません。

つまり、育児休業期間中は、無給であっても法律上は、特段問題ありません。

しかし、従業員側からすれば、無給の期間が1年間近く続くとなると、やはり経済的にも苦しくなってしまうため、雇用保険では、雇用保険に加入していて、一定の条件を満たしている従業員に対して、育児休業給付金制度を設けており、多くの従業員の方 利用しています。

ここでは、育児休業給付金の制度そのものについての細かい説明は、割愛させていただきますが、ここでは育児休業給付金と育児休業の延長との関係で、是非、覚えておいていただきたいポイントをお話したいと思います。

先程、少しお話しましたが、子が1歳に達した時点で保育所が空いていない等の理由の場合には育児休業の期間を6ヶ月間延長できます。

そして、育児休業が延長された場合には、育児休業給付金を受給できる期間の延長も可能となります。

ただし、育児休業給付金の受給期間を延長するには、条件が2つあります。

まず、1つは、先程、延長できるのは、保育所が空いていない場合と書きましたが、この場合の保育所は、あくまで認可保育所に限られます。

ですから、無認可の保育所に入れないから、育児休業を延長する場合には、育児休業給付金を延長することはできないこととなります。

さらに、もう1つは、育児休業給付金の手続きは、当然、ハローワークで行いますが、延長の手続きをする場合、子が1歳に達して時点で保育所に空きが無かったという証明書を提出する形となります。

ただ、証明書についてですが、通常、認可保育所に入る場合には区市町村を通じて申込みをするため万一、子が1歳に達した時点で保育園に空きがなく、入所できない場合には、その旨の証明書を区市町村が発行してくれます。

ただし、ここで注意すべき点があります。

それは、証明書は、あくまで子が1歳に達した時点で保育所に空きがないことを証明するものである必要があります。

常は、自分が住んでいる近くの保育所に入れることが多いため、ご自分が住んでいる区市町村を通じて申込んでおけばまず問題はないのですが、実は、この証明書の関係で過去に育児休業給付金の延長をすることができなかったケースありましたのでご紹介したいと思います。

私の顧問先のある従業員で育児休業を取得している方が、お子さんが1歳に達する少し前までは、A市に住んでいました。

通常であれば、A市に保育所の申し込みをすればいいのですが、もしかしたら、B市に引っ越しをする可能性が出てきたそうです。

しかし、B市に引っ越すことが決定するわけでもなく、A市、B市どちらの保育所に入れるか悩んでいたそうです。

結局、A市に保育所を申し込んだのですが、ただ、保育所を申し込んだ時期は、お子さんが1歳に達する前なのか達した後なのかは不明ですが、いずれにしても、申し込みの時期が遅くて、子が1歳に達する時点で保育所に入れない、という旨の証明書の発行がされず、子が1歳に1ヶ月の時点で保育所に入れない、旨の証明書が発行されました。

このような場合、子が1歳1ヶ月に達した以降の期間であれば、育児休業給付金をもらうことができると思われがちですが、育児休業給付金制度は、子が1歳に達した時点で保育所に入れない証明書がなければ、その時点でそれ以降の受給する権利を失ってしまうこととなります。

ですから、その従業員の方は、不幸なことに結局、育児休業給付金を延長することができませんでした。

稀なケースかもしれませんが、何らかの理由で、保育所の申し込みが遅くなってしまうケースも考えられますので、なるべく早い段階で保育所は申込んでおくというのは、是非、覚えておいていただければと思います。

両立支援助成金(出生時両立支援コース)について

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ここで両立支援助成金(出生時両立支援コース)をご紹介したいと思います。

現在、国は、男性の育児休業の取得率の向上を図っており、様々な政策を打ち出しています。

その中の1つが、先程お話したパパママ育休プラスですが、それ以外にも助成金の中において男性の育児休業取得率向上のために制度化しているものがあります。

それが、両立支援等助成金(出生時両立支援コース)となり、男性従業員が、一定日数以上の育児休業を取得した場合に利用できる助成金となります。

この助成金は、支給条件のハードルが低いために、比較的利用しやすい助成金と言えます。

助成金の詳細についてのご説明は、割愛させていただきますが、最も大きなポイントとしては、男性が、妻の産後8週間の間に育児休業を取り始め、そして育児休業の日数が、中小企業の場合、最低でも5日、中小企業以外の場合は、最低でも14日となる必要があります。

ただし、育児休業に日数に関して1点注意点があります。

育児休業は、通常暦日で計算されます。

ですから、ゴールデンウィークや年末年始等に育児休業を取得した場合に、育児休業の日数は、5日間取得しても、出勤日の休業が1日だけ、といったケースも考えられます。

例えば、5月2日から5月6日までの5日間育児休業を取得した場合、5月3日から5月6日までの4日間は祝日で、会社の公休日となっている場合、実際の出勤日を休業したのは、5月2日の1日のみとなります。

この助成金では、実際の出勤日に休業した日数を条件に加えています。

具体的には、中小企業の場合は4日間、中小企業以外では9日間は、出勤日に休業している必要があります。

従って、先程の例では、育児休業は5日間取得していますが、出勤日の休業が1日だけなので、助成金の要件を満たしていないこととなるので、助成金を受給することはできなくなります。

ですから、この助成金は、育児休業の期間だけでなく、実際の出勤日における休業日数にも注意を払う必要があります。

ただ、中小企業にとって育児休業5日、中小企業以外では9日はそんなに高いハードルではないので、この助成金は利用しやすい助成金かと思います。

なお、両立支援助成金(出生時両立支援コース)についての詳細につきましてはこちらをご参照下さい。

>> 両立支援助成金(出生時両立支援コース)(厚生労働省)

まとめ

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繰り返しになりますが、育児休業は従業員にとっての権利であり、会社は従業員の育児休業の申し出を拒否することはできません。

また、育児休業は女性だけでなく男性も取得することができます。

現在、国は、さらなる女性が活躍できる社会の実現、男性の育児休業取得の促進等を進めています。

そのため、今後、育児休業は今後益々労務管理において重要なポイントとなってくると考えられますので、是非、今後のご参考になさって下さい。

助成金無料相談のご案内

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当事務所では、助成金無料相談を行っておりますので、今回ブログの中でご紹介した両立支援等助成金はもちろん、他の助成金や助成金全般に関するご相談もお受けさせていただいておりますので、お気軽にご利用下さい。

これまで、300社以上の企業様のご相談に応じてきましたが、意外に多いのが、もう少し早くご連絡をいただければ、助成金を受給できたケースです。

助成金は、タイミングが重要で、少しの遅れが受給機会を逃してしまう結果となってしまう場合もありますので、まずは、相談してみることが重要です。

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