Q 社員を雇用した際の労災保険と雇用保険の加入条件は?

【質問】

 

当社では、この度、初めてパートタイマーを1名雇用しました。

 

社員を雇用した場合には、労災保険や雇用保険に加入しなければならないと聞きました。

 

具体的には、どのような手続きをすれば良いのでしょうか?

 

また、正社員ではなくパートタイマーでも労災保険や雇用保険に加入しなければならないのでしょうか?

 

加入条件が決められているのでしょうか?

 

【回答】

 

労災保険は、正社員、パートタイマー等に関係なく、労働者を1人でも雇用した場合には、必ず加入しなければなりません。

 

また、雇用保険の加入条件は、労働時間が1週間20時間以上及び31日以上雇用見込みがある労働者を雇用した場合に、加入義務があります。

 

【解説】

 

経営者の方が、初めて労働者を雇用した場合に、戸惑うものの1つに保険加入があります。

 

保険加入に戸惑う理由の1つに、用語の複雑さにあると思います。

 

ここでは、最初に各保険の概要と用語について整理したいと思います。

 

 

労働者を雇用した場合に、関係してくる保険制度は、労災保険、雇用保険、健康保険、厚生年金保険の4つです。(介護保険は、健康保険に含まれます。)

 

まず、簡単にそれぞれの保険制度について簡単に説明したいと思います。

 

① 労災保険

  

労災保険は、労働者の業務中又は通勤中の怪我や病気に対して保険給付を行う制度です。

 

② 雇用保険

 

雇用保険は、労働者の失業や雇用継続に対して保険給付を行う制度です。

 

よく、「会社を辞めたら失業保険をもらう。」といったことを聞くかと思いますが、まさにそれを行っている制度です。

 

ただし、失業保険という言い方は全くの誤りで、正しくは失業等給付と言い、「失業保険」という保険があるわけではありません。

 

③ 健康保険

 

労災保険が、労働者の業務中の怪我や病気に対しての保険給付であるのに対して、健康保険は、労働者の業務外における怪我や病気に対しての保険給付制度です。

 

④ 厚生年金保険

 

厚生年金保険、労働者の老後や障害に至った場合や死亡した場合の遺族に対して生活の安定を図るための公的年金制度です。

 

 

ここで是非、覚えておいて欲しいのですが、これらの保険制度には、総称があります。

 

労災保険と雇用保険を合わせて、「労働保険」と呼ばれ、健康保険と厚生年金保険とを合わせて「社会保険」と呼ばれています。

 

ですから、「労働保険」や「社会保険」という保険制度があるわけではありません。

 

実は、「労働保険」や「社会保険」という保険制度があると誤解されている経営者の方が非常に多いので、この点を正しく理解されると、保険制度全体が分かりやすくなるかと思います。

 

 

また、各保険には加入条件が規定されています。

 

ここでは、ご質問の労災保険と雇用保険に加入条件についてご説明したいと思います。

 

労災保険

 

労災保険は、労働者を1人でも雇用した場合には、個人事業主の農業等の一部の業種を除いて強制的に加入する必要があります。

 

ここで注意しなければならないのは、「労働者」とは、正社員だけでなく、パートタイマー、アルバイト等、会社に雇用される全ての労働者を意味し、労働時間及び労働日数の多少は全く関係ありません。

 

ですから、ご質問のケースのように、たとえパートタイマー1名の雇用であっても、必ず労災保険には加入する必要があります。

 

雇用保険

 

それに対して雇用保険は、労働者の加入条件を「1週間の労働時間が20時間以上及び31日以上の雇用見込み」と規定されているため、加入条件に満たない労働者は、雇用保険に加入することはできません。

 

ですから、ご質問のパートタイマーの労働時間が1週間15時間であったら、現時点では、雇用保険には加入する必要ありません。

 

 

なお、労災保険も雇用保険も法人、個人事業主を問いませんのでご注意下さい。

 

 

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【ここがポイント】

 

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では、最後に労災保険と雇用保険に加入する場合に実際の手続きについて、簡単にご説明したいと思います。

 

労災保険と雇用保険への加入は、建設業・農林水産業とそれ以外の業種とでは、手続き方法が違います。

 

建設業・農林水産業は、労災保険と雇用保険を保険料の申告等で区分して取扱う必要があるため、二元適用事業と言い、建設業・農林水産業以外の業種は、労災保険と雇用保険を一括して取扱うため一元適用事業と言います。

 

 

ここでは、一般的な建設業・農林水産業以外の一元適用事業の場合の労災保険、雇用保険の加入手続きについてご説明します。

 

なお、今回のご質問のケースで、雇用したパートタイマーの方が、雇用保険へ加入する前提でご説明したいと思います。

 

 

① 最初に労働者を雇用した日から10日内に、事業所を管轄する労働基準監督署に「保険成立届」を提出します。

 

② 保険関係成立届を提出すると同時に、その年の年度末(3月31日)までの労災保険と雇用保険の見込みの保険料を計算し、概算保険料申告書を提出します。(概算保険料の納付は、労働者を雇用した日から50日以内に納付します。)

 

③ 事業所を管轄する労働基準監督署に①及び②の保険関係成立届、概算保険料申告書の提出後、事業所を管轄するハローワークで雇用保険適用事業所届と雇用保険に加入する労働者の資格取得届を提出します。

 

その際に、保険関係成立届の写しが必要となります。

 

 

なお、労働保険の詳細及び建設業、農林水産業の二元適用事業の手続き等につきましては、こちらをご参照下さい。

 

>>労働保険の成立手続きはお済ですか?(厚生労働省)

 

 

なお、最後に余談ですが、上記のパンフレットを見ても分かりますように、労働保険の手続きはなかなか複雑です。

 

ですから、少しおかしな言い方ですが、無理に理解しようとせずに、労働者を雇用した場合に、労働基準監督署とハローワークへ出向けは、必要な書類は役所にありますので、後は、

 

・代表者印

・事業実態が分かる書類(登記簿謄本、開業届け、営業許可証等の写し)

・雇用保険へ加入する労働者の経歴書(過去の職歴がわかる書類)

 

などをもって行けば、手続きができますので、まずは、事業所を管轄する労働基準監督署に出向くことをお勧めします。

 

 

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