シリーズブラック企業にならないための労務管理② 労働時間と労働者

今回は、労働時間と労働者についてご説明したいと思います。

 

労働時間と労働者は、労務管理において根本となる事項ですので、適切な労務管理を実現するためには、労働時間と労働者について、正確に理解する必要があります。

 

逆に言えば、労働時間と労働者について誤って理解していると、正確な労務管理を実現することは絶対にできません。

 

 

正しい労務管理を行うためには、まず労働時間と労働者について、正確な理解を持つことが、重要なポイントとなります。

 

今回は、労働時間と労働者についてわかりやすく解説したいと思いますので、是非最後までお読みいただければと思います。

労働時間とは?

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私は、労働時間、労働者、そして賃金、この3つが労務管理の基本と考えています。

 

ただ、賃金については、法律の規定が明確に定められているため、その法律の存在を知っているか知らないかという問題はありますが、法律の解釈を誤ることは少ないと言えます。

 

 

しかし、労働時間と労働者につきましては、解釈に少しグレーな部分が存在するため、多くの経営者が労働時間と労働者について、誤った知識を持ってしまうケースが多いと言えます。

 

ですから、労働時間と労働者については、法律を正しく理解することが重要です。

 

 

まず労働時間について、ご説明したいと思います。

 

労働時間に関して、単に働く時間と解釈されている方が多いのですが、実はそれは間違いとなります。

 

法律的に労働時間は、使用者の支配下に置かれ、指示命令によって労働する時間と定義されています。

 

使用者というのは、会社や経営者と思っていただければ結構です。

 

 

この定義において、使用者の支配下に置かれ、指示命令によって労働する時間とは、通常考えられている「働く時間」が、まさにこれに該当します。

 

例えば、会社内で働く場合もそうですし、営業社員のように外回りをする場合や運送業でドライバーが荷物を運ぶ場合も当然労働時間となります。

 

働く場所が屋内であっても屋外であっても、使用者の指示、命令によって働いているわけです。

 

つまり、支配下に置かれていることとなります。

 

このように労働時間の基本的な考えたかは難しくないのですが、労働時間について注意すべき点が2点あります。

 

 

まず1つ目の注意点ですが、労働時間の対局となる時間として休憩時間があります。

 

休憩時間は、労働基準法で自由利用が原則とされています。

 

休憩時間は、労働から解放されて労働者が自由に過ごすことができます。

 

一定の制限を設けることも可能ですが、基本は労働者が自由に利用することが保証されています。

 

となると、自由利用が保証されていない時間は、労働時間となります。

 

 

つまり、形は働いていないように見えても、自由に利用が保証されていないのであれば、それは労働時間となります。

 

労働時間は、このような考え方をします。

 

 

実は、形は働いていないように見えても、労働時間となるケースが、労務管理の実務ではよく起こるのです。

 

まず、代表的な例が、運送業の手待ち時間です。

 

運送業の手待ち時間というのは、例えば、ドライバーが午後1時にある工場に部品を取りに行く約束をしていて、予定通り午後1時に工場に着いたのですが、先方の会社の都合でまだ準備ができていないために、ドライバーは 車の中で準備ができるまで待つこととなりますが、その時間を手待ち時間と言います。

 

ドライバーは、その手待ち時間の間、車の中で食事をしたり、音楽を聴いたり本を読んだり仮眠を取ったりして過ごしているケースが多いかと思います

 

このような時間の過ごし方は、働いているわけではありません。

 

しかし、そのドライバーは、いつ荷物が運べることができるようになるかわからないわけですから、車から離れることができません。

 

つまり、自由利用が保証されていないわけです。

 

ですから、手待ち時間は 労働時間となります。

 

 

もう1つよく見られるケースが、昼休みの電話当番です。

 

中小零細企業の場合、従業員数が少ないと、お昼の電話当番を交代で行うケースがあります。

 

そのような場合、電話当番は昼休憩をしながら、電話がかかってきた場合にはその電話を取ります。

 

もし昼休みに1本も電話がかかってこなければ、その労働者は、結果的には休憩した形となりますが、ただし、電話当番ですから、その場を自由に離れることはできません。

 

となると、自由利用が保証されていないこととなります。

 

つまり、昼休みの電話当番も、労働時間となります。

 

このような手待ち時間や昼休みの電話当番は、労働時間として取り扱う必要があります。

 

 

ところで、労働基準法では、一定時間以上の労働をさせる労働者に対しては、一定時間の休憩を与えなければいけないとされています。

 

ですから、手待ち時間や昼休みの電話当番を休憩時間と取り扱って、自由利用が保証された休憩時間を与えないと労働基準法の違反となってしまいます。

 

 

また、手待ち時間や昼休みの電話当番は、労働時間となるわけですから、その時間に対して、当然賃金を支払う必要があります。

 

もし、手待ち時間や昼休みの電話当番の時間に対して、賃金が支払われていないのであれば、これは賃金未払いとなり、明確な労働基準法違反となります。

 

手待ち時間や昼休みの電話当番のように労働時間は、実際に働いていない場合であっても、自由利用が保証されていない場合には、労働時間とみなされるケースがありますので、十分に注意する必要があります。

 

 

労働時間に関して、もう1つ注意すべき点についてお話ししたいと思います

 

近年、時間外労働を削減するためにノー残業制度を設けている会社があると思います。

 

例えば、午後8時以降は会社内で仕事をしてはならない、午後8時以降は、会社内に残ってはならないというようなルールを設けるのが一般的です。

 

このような制度下では、労働者は午後8時以降、会社で働くことができないわけですからそこで労働時間は終了となります。

 

 

しかし、仕事をしなければ業務に支障が出てしまい、労働者は、やむを得ず自宅で仕事をするケースも考えられます。

 

このような場合、会社のルールとして午後8時以降は仕事をしてはいけないとしているわけですから、直接的な指示命令はないこととなります。

 

しかし、仕事をしなければ業務に支障が出るのであれば、労働者の勝手な判断ではなく、労働者はやむを得ず仕事をしたこととなります。

 

 

このようにやむを得ず仕事をした場合には、間接的な指示命令、暗黙的な指示命令があったとみなされる可能性が考えられます。

 

もし そのような間接的、暗黙的な指示命令があったとみなされる場合には、自宅で仕事をした時間も労働時間となります。

 

労働時間とみなされるのであれば、当然賃金の支払いが必要となります。

 

以上のように、労働時間に関して、自由利用が保証されていない時間および直接的な指示 命令がある場合だけではなく、間接的、暗黙的な指示 命令があった場合も労働時間とみなすことが注意すべき点となりますので正しくご理解下さい。

 

労働者とは?

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次に、労働者についてお話ししたいと思います。

 

労働者の解釈は、労働時間よりさらに重要となります。

 

実は、ここを誤解している経営者の方が、意外と多いのです。

 

労働者とは、労働契約に基づき労働力を提供し、その対価として賃金を受け取る者のことを指します。

 

ですから、会社に雇用されている者は、全て労働者となります。

 

なお、労働契約は、労働者と雇用者との間で結ばれる契約であり、場合によっては雇用契約とも言いますが、その意味は同じです。

 

 

ここで問題となるのが、取締役や家事労働者の位置づけです。

 

家事労働者とは、例えば個人事業主のご主人が経営者であり、一緒に働いている妻や子供のことを指します。

 

 

では、取締役や家事従事者が、どのような位置付けになるかですが、まず取締役についてご説明したいと思います。

 

先程ご説明したように、労働者の場合は、会社と締結する契約は労働契約(雇用契約)となります。

 

それに対して、取締役が会社と結ぶ契約は、委任契約と呼ばれる契約となります。

 

委任契約は、仕事の結果を求める契約とイメージしていただければ結構です。

 

 

つまり、結果さえ出せば、どのような働き方をしても良い形となります。

 

取締役は、業績を上げることが結果となり、その過程は、問われないことなります。

 

ですから、会社から働き方に関して、指示や命令を受けないこととなります。

 

このように、元の契約が労働契約(雇用契約)ではないため。取締役は、基本的には労働者ではありません。

 

 

同じように、家事従事者も個人事業主の代表と労働契約を結ぶわけではありません。

 

ですから、家事従事者は、労働契約(雇用契約)に基づき、労働時間を管理されたり、指示命令を受けたりすることはありません。

 

つまり、個人事業主の代表の支配下に置かれることはありません。

 

もちろん、家事従事者は、個人事業主の代表の、指示命令に従って働きはしますが、労働時間に関して、好きな時に買い物に行ったりするなど、ある程度自由となります。

 

ですから、労働者のように、厳格に会社の支配下に置かれているわけではありません、

 

従って、家事従事者も、基本的には労働者には該当しないこととなります。

 

 

ただし、取締役も家事従事者も、その実態が労働者と同じ場合、例えば、取締役であったとしても、労働者と同じ業務をして、労働時間もしっかり管理され、労働時間に関して裁量権がない場合などは、労働者としてみなすケースがあります。

 

労務管理においては、名称や呼称等で判断するのではなく、あくまで実態で判断しますので、この点はご注意下さい。

 

正社員、パートタイマー、アルバイト等について

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労働者に関してさらに注意すべき点として、正社員、パートタイマー、アルバイト等の労働者区分があります。

 

日常業務において正社員、パートタイマー、アルバイトこのような言葉を使われると思います。

 

実は、正社員、パートタイマー、アルバイトこれらの用語は、法律用語ではありません。

 

労働基準法等の法律に正社員やパートタイマー、アルバイトといった用語は出てきません。

 

法律では、労働者という言葉が使われます。

 

 

つまり、正社員やパートタイマー、アルバイトといった用語は、労働者を区分するために便宜的に用いられているに過ぎないわけです。

 

正社員、パートタイマー、アルバイトは、法律上全て同じ労働者なのです。

 

ここが非常に重要なポイントとなってくるのですが、パートタイマーやアルバイトであったとしても正社員と同じ法律上の権利を有することとなります。

 

 

「パートタイマーに有給休暇なんてないよ。」

 

「割増賃金を払うのは 正社員だけでパートタイマーや アルバイトには割増賃金を支払う必要はない。」

 

このように言われる経営者が、今でもいます。

 

このような経営者は、正社員とパートタイマー、アルバイトとでは法律の取り扱いが異なると多分思われていると思います。

 

 

しかし、今ご説明したように、それは間違いです。

 

労働基準法等の法律上、パートタイマーやアルバイトも正社員と同じ労働者ですから、パートタイマーやアルバイトも正社員と同じ法律上の権利を持ちます。

 

ですから、たとえパートタイマーやアルバイトであったとしても、正社員と同じように有給休暇が発生しますし、パートタイマーやアルバイトであったとしても、正社員と同じように割増賃金を支払わなければいけないこととなります。

 

もしパートタイマーやアルバイトに有給休暇を与えなければ、法律違反になりますし、パートタイマーやアルバイトに割増賃金を支払わなければ、これも法律違反となります。

 

このように、正社員やパートタイマー、アルバイトといった用語は、労働者を区分するためにあくまで便宜的に使われているものであって、法律上は、パートタイマーやアルバイトも正社員と同じ労働者で、正社員と同じ法律上の権利を有することを正しくご理解下さい。

 

まとめ

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今回は、労働時間と労働者について解説させていただきました。

 

冒頭に労働時間と労働者は、労務管理の根本となるというお話をしました。

 

実際、労働時間と労働者について誤った知識を持ったまま、いくら労務管理に力を入れても絶対に適正な労務管理を実現することはできません。

 

例えば、就業規則を一生懸命整備して社内ルールを整えたとしても、労働時間を正確に理解していなければ、賃金を正しく支払うことはできません。

 

 

また、労働者に関しても、パートタイマーには有給休暇を与える必要はない、アルバイトには割増賃金を支払う必要はないといった誤った解釈をしていれば、法律違反の状態となってしまいます。

 

ですから、労働時間と労働者の理解は、労務管理の根本となってきますので、是非ご参考になさって下さい。

 

 

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