正社員の給料は時給でも良いのですか・・・?
【質問】
当社では、正社員、パートタイマー、アルバイトが混在しています。
これまで、正社員の給料は、月給でパートタイマー、アルバイトには時給で給料を支給してきました。
ところが、先日、同業者から、正社員に対しても給料を時給で支払っても良いし、パートタイマーやアルバイトに月給で給料を支給することもできる、と聞いたのですが、本当でしょうか?
正社員は月給、パートタイマー、アルバイトは時給、それが当然と思っていたのですが・・
【回答】
通常、労働者を区分する場合には、賃金の支給形態で区分するのでなく、雇用期間、労働日数、労働時間等で区分されます。
また、労働者に対する賃金の支払い形態に関しては、特段の定めがないため、最低賃金等の法律が遵守されていれば、正社員に対して時給で給料を支給しても全く問題ありません。
【解説】
労働者の定義と賃金との関係については、誤解されているところがあるのですが、労働者を定義付ける場合には、通常は、賃金の支払い形態は考慮しないのが通常です。
これはどういうことかと言いますと、月給制だから正社員、時間給だから、パートタイマー、アルバイトという考え方をするのは、実は、正しい考え方ではないのです。
つまり、正社員に対して給料を時給で、パートタイマーやアルバイトの給料を月給で支給しても何ら問題はありません。
労働者の定義は、法律上において規定は無いので、会社内で、正規社員は、月給制でパートタイマーやアルバイトは、時給制と定義付けすること自体は問題ありません。
ただ、労働者の定義に賃金を加えると、何らかの理由で正社員であっても賃金を時給で支払う必要が生じた場合にも、それができなくなってしまい、実際の労務管理の運営に柔軟性を欠く場合も考えられます。
労働者を定義付ける場合は、通常は、雇用期間の定めの有無と労働時間で定義付けることとなります。
始業時間から終業時間までフルタイムで労働し、雇用期間に定めが無い労働者を正規社員とすると、雇用期間の定めが有り労働時間も正規社員より短い労働者をパートタイマー、アルバイトと定義付けるのが一般的と言えるでしょう。
さらに、労働時間は、正規社員と同じだが、雇用期間に定めが有る労働者は期間社員、定年後再雇用された労働者を嘱託というような感じで定義付けます。
また、最近では、短時間正社員という概念があります。
これは、雇用期間に定めが無いけれど、労働時間は、正社員より短い労働者を言うのですが、ここで1つ注意すべき点があります。
パートタイマーやアルバイトといった労働時間が、正社員より短い労働者を無期契約で雇用する場合もります。
では、それらの労働者が、短時間正社員となるかと言えば、必ずしもそうならない場合もあります。
短時間正社員と雇用期間の定めが無いパートタイマーやアルバイトとでは、従事する業務内容やその責任に差がある場合が考えられます。
ですから、短時間正社員は、正社員と通常の業務を行うというように、労働者を定義付ける場合に、雇用期間や労働時間以外に業務内容にも言及する必要がある場合もありますのでご注意下さい。
いずれにしても、労働者の身分によって、待遇や労働条件に差を設ける場合に、労働者の定義が重要となってきます。
この定義が曖昧だと、労働者の誤解を生じさせてしまったり、不信感を抱かせてしまうことも間考えられるので、就業規則を作成する場合には、労働者の定義を明確にすることが重要となります。
最後に労働者の区分と賞与、退職金等との関係についてお話ししたいと思います。
多くの会社で、賞与や退職金の制度が設けられています。また、会社によっては、冠婚葬祭時に一定の日数の休日を与える慶弔休暇制度や休職制度といった制度を導入している会社もあります。
ところで、賞与や退職金、慶弔休暇、休職制度といったものは、会社には法的な義務は無く、制度を導入するか否かの判断は、会社の任意とされています。
つまり、賞与や退職金を支給しなくても、法律的には全く問題はありません。
ところで、賞与や退職金、慶弔休暇等は、就業規則において相対的記載事項と呼ばれています。
相対的記載事項とは、就業規則を作成するにおいて、会社内で制度の定めがある場合には記載しなければならない事項を言います。
逆に言えば、会社内で定めが無ければ、就業規則に記載する必要はありません。
賞与、退職金等の相対的記載事項は、そもそも会社には、導入の義務が無いわけですから、仮に導入する場合であっても、その内容についても、基本的には、会社が任意に規定することができます。
ですから、賞与や退職金について、労働者の区分によって支給するか否かを区別しても法的には問題ありません。
しかし、ここで重要となってくるのが、もし、労働者の区分によって、賞与や退職金、慶弔休暇等の労働条件、福利厚生等に差を設けるならば、労働者の区分を明確にする必要があります。
そして、労働条件、福利厚生等の適用を受ける労働者、受けない労働者についての規定を定めることが重要となってきます。
なお、今後、同一労働同一賃金が、法律化されてくると、パートタイマー、アルバイトといった労働者の区分だけで、労働条件や福利厚生に差を付けることが、違法となってくると言えますので、ご注意下さい。
【まとめ】
労働者の定義と賃金の支払い形態には誤解が多くありますが、通常、労働者を定義する際には賃金の支払い形態は考慮されません。
つまり、月給制や時給制という支払い形態が、正社員やパートタイマー、アルバイトなどの労働者区分を決定する要因ではありません。
労働者の定義は雇用期間の有無や労働時間によって行われるのが一般的で、例えば、雇用期間の定めがなくフルタイムで働く労働者を正社員とし、雇用期間が限定され労働時間が短い労働者をパートタイマーやアルバイトとします。
さらに、雇用期間が限定されるがフルタイムで働く労働者は期間社員、定年後再雇用された労働者は嘱託と定義される場合があります。
また、近年では短時間正社員という形態もあり、雇用期間に定めがなく労働時間が短い労働者を指します。
ただし、短時間正社員と無期契約のパートタイマーやアルバイトは、業務内容や責任範囲が異なる場合があり、これらを区別する必要があります。
したがって、労働者の定義をする際には、雇用期間や労働時間だけでなく、業務内容にも言及することが求められる場合があります。
ところで、賞与や退職金、慶弔休暇といった制度は法的な義務ではなく、会社の任意で導入されるものです。
これらの制度を導入する場合は、労働者の区分ごとに適用範囲を明確にすることが重要です。
同一労働同一賃金の原則が法律化される流れの中で、労働条件や福利厚生に差を設ける際には、労働者区分の明確化が一層求められるようになります。
曖昧な定義は誤解や不信感を生じさせる可能性があるため、就業規則で労働者の定義を明確化することが重要です。