労災保険に未加入なのに労災保険が使える・・・?

【質問】
先日、同業者から、労災保険は、未加入でも補償を受けることができるるような事を聞きました。
保険に未加入なのに補償が受けられる、というのは通常では考えられないのですが、本当に労災保険は、保険に未加入でも補償を受けることができるのでしょうか?
【回答】
労災保険は、労働者保護の観点から、事業主が労災保険に加入していなくても、補償を受けることは可能です。
しかし、その場合、一定額のペナルティが、事業主に課せられます。
【解説】
従業員を雇用した場合、一定規模の農業等の事業を除いて、労災保険に必ず加入しなければなりません。
これは、正社員に限らずパートタイマー、アルバイト社員であっても加入が必要となってきます。
しかし、実際には経済的等の理由で未加入の企業も多々あるのも現実です。
ただし、ここで非常に重要なポイントですが、労災保険は通常の保険制度とは大きく違う点があります。
例えば、通常の保険であれば保険に加入していなければ、保険料を負担する必要が無い代わりに仮に事故があっても保険給付を受ける事はできません。
これは、極々当たり前の事ですよね。
国の制度である雇用保険や健康保険も同じです。
もちろん、一定の要件を満たしている場合には、加入が法的に義務となりますが、仮に未加入の状態であれば一切の保険給付を受ける事ができません。
しかし、実は、労災保険はその点が違っているのです。
労災保険は労働者保護を目的としているため、仮に勤務先の企業が労災保険に未加入であっても、労災事故により負傷した労働者は、労災保険の給付を受ける事ができます。
何かおかしな感じがしますが、労働者保護の観点からそのような取り扱いがされています。
ところで、労災保険も保険であるため、当然加入すれば保険料が発生します。
となると、労災保険の加入の有無に関らず保険給付を受ける事ができるとなると、制等に保険料を支払っている企業との間で不公平が生じてしまいます・・・。
そのため、当然労災保険に未加入の企業で労災事故で従業員が保険給付を受けた場合に、その企業にペナルティが与えられます。
労災保険の保険料は、基本的には業種による保険料率と従業員に支払う給料を基に決められます。
決められた保険料を支払えば、たとえ保険給付の額がいくらになっても、保険料以上の負担を強いられる事はありません。
しかし、労災保険に未加入で保険給付を受けた場合には、支払われた保険給付の額の一定割合の額を負担しなければならなくなります。
例えば、年間の保険料が5万円の場合で、労災保険に加入していれば、たとえ保険給付を300万円受けても、5万円の保険料を納めていれば、それ以上の負担はありません。
しかし、労災保険に未加入であった場合には、保険給付された金額の最大で100%が企業に請求されてしまうのです。
負担の割合は、悪質さや状況等によって決められますが、仮に30%としても90万円となってしまいます。
わずか5万円の保険料を惜しんでしまうと、とんでもない負担を強いられる事態が起こってしまうかもしれないのです。
つまり、経済的な理由で労災保険に加入しない、という事は、本当に目先の些細な事に過ぎないのです。
労災保険に加入しない、という事は本当に大きなリスクを負ってしまうことなのです。
労災保険は未加入で済むという制度ではない、というこをご理解いただきたいと思います。
【まとめ】
労災保険は、一定規模以上の農業を除き、従業員を雇用するすべての事業者に加入が義務付けられています。
これは正社員だけでなく、パートやアルバイトも対象となります。
しかし、経済的な理由などで未加入の企業も少なくありません。
通常の保険制度では、未加入であれば保険給付を受けることはできませんが、労災保険は労働者保護を目的としているため、企業が未加入であっても労災事故に遭った労働者は給付を受けることができます。
ただし、未加入の企業にはペナルティが科され、給付額の一定割合を負担しなければなりません。
労災保険料は業種ごとの保険料率と従業員の給与を基に決まります。
加入していれば、保険料以上の負担はありませんが、未加入の場合、保険給付額の最大100%が請求される可能性があります。
例えば、年間5万円の保険料を支払っていれば、300万円の給付を受けても追加負担はありませんが、未加入だと最大でその全額を負担することとなる可能性もあります。
わずかな保険料を惜しんだ結果、企業に大きな経済的負担が生じる可能性があるため、労災保険には必ず加入すべきです。
未加入を選択することは非常にリスクが高く、事業継続にも影響を及ぼしかねない重要な問題であることを理解する必要があります。