労災事故が起きた場合、どのような手続きをすれば良いでしょうか・・・?
【質問】
先日、従業員が、社内で荷物を運んでいる途中、誤って転倒してしまい、頭部を打撲してしまい、病院に運ばれました。
業務中の怪我ですので、労災保険を使おうと考えているのですが、当社では、労災事故は初めてですので、どのように手続きすれば良いでしょうか?
【回答】
まず、最初に、従業員の方が、運ばれた病院に労災保険で治療を受けることができる書類(療養の給付請求書 様式第5号)を提出します。
ただし、その病院が、労災指定病院等で無い場合には、一旦、治療費を全額支払い、後日、様式第7号を使って、国に請求をする形となります。
【解説】
労働災害により怪我等を負った場合には、労災保険の手続きをすることにより、治療費を支払うことなく、治療を受けることができます。
これを療養補償給付と言います。
労災保険を適用して治療を受ける場合には、治療を受ける病院等に、療養の給付請求書(様式第5号)を提出します。
この書類は、労働基準監督署に提出するのではなく、治療を受ける病院等に提出することとなります。
理論上は、この手続きをして、初めて労災保険の適用を受けることができるのですが、労災事故が発生して、従業員が、病院等に行く間に、書類を作成するのは、現実的には無理があるので、後日、なるべく早く書類を提出する形となります。
ですから、事故が発生して、病院等で治療を受ける際には、労災事故である旨を必ず伝えて下さい。
当日の治療費等については、病院等の指示に従うこととなります。
ちなみに、療養の給付請求書(様式第5号)は、一度手続きすれば、その後は、病気等が治癒するまで、治療費を支払うことなく治療を受け続けることができます。
つまり、受診の度毎に書類提出の手続きの必要はありません。
ところで、緊急で病院等に運ばれた等の場合には、その後、自宅、通院に便利な自宅近くの病院等で治療を受ける方が、従業員にとっても負担が少なく早期の回復が望める場合もあります。
労災保険では、必ずしも最初にかかった病院で治療を続ける必要はなく、必要がある場合には病院を変更することも可能です。
もし、病院等を変更する場合には、変更先の病院へ、指定病院等変更届(様式第6号)という書類を提出する手続きを行います。
この書類を提出すれば、引続き、変更先の病院等においても治療費を支払うことなく治療を受けることができます。
ところで、先程、言いました、療養の給付請求書(様式第5号)を提出して、治療費を支払うことなく治療を受けることができるのは、労災指定病院等に限られます。
日本の全ての病院等が、労災指定病院等であれば、問題ないのですが、残念ながら労災指定となっていない病院等もあります。
もちろん、労災指定病院等以外の病院等で、治療等を受けても、労災保険の適用を受けることはできますが、手続きの方法が違ってきます。
もし、事故後治療等を受けた病院が、労災指定病院等以外でしたら、まず、一旦、治療費を全額(10割)病院等に支払います。
その後、療養の費用請求書(様式第7号)という書類を、今度は、労働基準監督署に提出します。
そして、後日、一旦負担した治療費が償還されることとなります。
このように、労災事故が発生し、従業員が怪我等を負った場合には、労災指定病院等で治療を受ける方が、手続きも楽ですし、治療費も一旦負担する必要もありません。
ただ、近くに労災指定病院等が無い場合や、負傷等した従業員のかかりつけの病院等が、たまたま労災指定がされていない場合もあります。
事故後、時間的な余裕があり、労災指定病院等へ意識的に行ければ良いのですが、事故後は、従業員も動揺している可能性も高いので、あまり、病院が労災指定かどうかはこだわらずに、まずは、従業員の治療が少しでもスムーズに行われることを優先して下さい。
ちなみに、療養の給付に関しては、接骨院などの場合には、特別な取扱いをする場合もあり、また、労災指定以外の病院等へかかったのち、労災指定病院等へ転院する場合等特殊なケースもあります。
ただ、今回、ご説明した内容が基本的なパターンとなりますので、まずは、今回ご説明した内容を押さえていただければと思います。
【まとめ】

労働災害によるケガの場合、労災保険の手続きを行うことで治療費を負担せずに治療を受けられる「療養補償給付」が適用されます。
治療を受ける際は、労災事故であることを病院に伝え、療養の給付請求書(様式第5号)を提出します。
ただし、書類提出は後日でも可能です。
労災指定病院であれば、一度手続きを行えば、治療費を支払わずに治療を続けられますが、非指定病院の場合は、一旦治療費等を全額負担し、後日、療養の費用請求書(様式第7号)を労働基準監督署に提出することで費用が償還されます。
また、病院を変更する場合には、指定病院等変更届(様式第6号)を転院後の病院に提出すれば、新しい病院での治療費も労災保険が適用されます。
労災指定病院が近くにない場合であっても、緊急時には指定の有無を気にせず、まず労働者の安全を最優先して下さい。
接骨院や転院の場合など、特殊なケースもありますが、今回、ご説明した内容が基本的なパターンとなりますので、まずは基本的な流れを理解しておいて下さい。

