健康保険の扶養 生計維持と同一世帯とは?
今回は、健康保険の扶養に入るための条件であります、生計維持と同一世帯についてご説明したいと思います。
健康保険の扶養に入るには、健康保険の加入者(被保険者)の3親等内の親族である必要があります。
なお、3親等内の親族につきましては、こちらの動画で詳しくご説明していますので、是非ご覧下さい。
◆健康保険の扶養! そもそも健康保険の扶養に入るメリットと扶養に入れる範囲は?
⇒ https://youtu.be/Ylc8qA-TTuQ
では、3親等内の親族であれば無条件で健康保険の扶養に入れるか?というと、そうではありません。
当然、条件があります。
その条件として、まず考えなければいけないのが、生計維持と同一世帯です。
今回は、健康保険の扶養の条件である生計維持と同一世帯について、わかりやすく解説していきたいと思いますので、是非最後までお読み下さい。
なお、最初に一つご了解いただきたいのですが、これからお話しする内容は、全国健康保険協会、一般的に協会けんぽと呼ばれていますが、全国健康保険協会の制度をもとにお話ししていきたいと思います。
各企業等が設立する健康保険組合については、それぞれが独自の制度を定めているものですから、今回お話しする内容とは異なる場合がありますので、その点はご了解いただければと思います。
もし、このブログをお読みのあなた様が、企業等が設立している健康保険組合に加入されているのであれば、詳しい内容は、ご自分が加入されている健康保険組合にお尋ねいただければと思います。
生計維持について
冒頭でお話ししましたように、健康保険の扶養に入るには、加入者の3親等内の親族である必要があります。
3親等内の親族とは下記の図となります。
しかし、3親等内の親族であれば無条件で健康保険の扶養に入ることができるわけではなく、当然、条件があります。
その条件として、まず考えなければいけないのが生計維持です。
健康保険の扶養に入るということは、当然、加入者によって養われていることが前提となります。
ここでは、健康保険の加入者がご主人様で、その奥様がご主人様の健康保険の扶養に入る前提でご説明していきたいと思います。
奥様が、ご主人様の健康保険の扶養に入るということは、奥様は、ご主人様によって生計維持されている、主にご主人様の収入によって奥様が養われている必要があります。
ですから、ご主人様とはと全く別に独自に生計を立てている、つまりご主人様によって生計を維持されていない親族は、ご主人様の3親等内の親族でであっても、当然ご主人様の健康保険の扶養に入ることはできません。
ですから、まず健康保険の扶養に入る条件としては、加入者によって生計維持されている、主に加入者の収入によって生計を立てていることが条件となります。
同一世帯について
そして、もう一つ条件があります。
もう一度、先程の3親等内の親族図を見ていただきたいと思います。
その親族図の中で、緑色に塗られている親族、加入者の直系の親族については、加入者の健康保険の扶養に入るには、加入者により生計維持さえされていれば良いのですが、緑色に塗られていない親族につきましては、加入者の健康保険扶養に入るには、生計維持にプラスして同一世帯、つまり加入者と同居していることが必要となります。
ですから、配偶者や兄弟姉妹、子供は、加入者と同居していなくても、加入者の健康保険の扶養に入ることができますが、例えば、おじさんやおばさんは加入者と同居していないと、たとえ、加入者によって生計を維持されていたとしても。健康保険の扶養に入ることはできません。
例えば、加入者が、おじさんやおばさんに仕送りをしていて、おじさんやおばさんがその仕送りで生計を立てている、つまり生計維持されていても、加入者と同居していなければ、加入者の健康保険の扶養に入ることはできないこととなります。
ですから、健康保険の扶養に入るための条件としては、まず加入者によって生計を維持されていること、これが大前提となります。
そして、一定の親族によっては加入者と同居していることが条件となります。
つまり、親族によって健康保険の扶養に入る条件が異なってくるわけです。
健康保険の扶養手続きをする場合には、まず生計維持関係があるか、そして加入者と同居していることが必要な親族かを確認して、手続きを進めることが重要です。
生計維持 同一世帯の証明とは?
それでは、生計維持と同一世帯同居について、もう少し詳しくご説明していきたいと思います。
これまでご説明したように、健康保険の扶養に入るには、加入者による生計維持および必要に応じて加入者との同一世帯の条件を満たす必要があります。
となれば、健康保険の扶養に入りたい人は、自身がそれらの条件を満たしていることを客観的に証明する必要があります。
つまり、健康保険の扶養の手続きを行う際、生計維持および同一世帯を証明する書類等を添付しなければならないこととなります。
ここでは、生計維持および同一世帯を客観的に証明する書類等についてご説明したいと思います。
まず同一世帯の証明ついてご説明したいと思います。
同一世帯につきましては、これは簡単で住民票で確認できます。
住民票に載っていれば、同然に同居していると見なされます。
問題なのは、生計維持の場合です。
生計維持をどうやって客観的に証明するかということですが、健康保険の考え方では、加入者と同居していれば、生計維持がなされているとみなされます。
ここは少しわかり難いので、ケースごとにご説明したいと思います。
まず、健康保険の扶養に入ることができる親族のうち、おじやおばのように生計維持と同一世帯の両方が求められる親族の場合、同一世帯が条件ですから、住民票によって同一世帯を確認します。
そして、先程言いましたように、加入者と同居していれば、加入者により生計維持されているとみなされますので、住民票により同一世帯が確認できれば、それにより加入者に生計維持されているとみなさることとなります。
次に、配偶者や子供のように生計維持だけが、健康保険の扶養にはいるための条件となる親族のケースを考えたいと思います。
このケースの場合には、加入者と同居しているケースと別居しているケースの2つ分かれます。
もし、同居している場合には、当然住民票に記載されていますので、それをもって生計維持されているとみなされます。
となると、先程ご説明した、結果的には、生計維持と同一世帯の両方が求められる親族と同じ、住民票を取ることにより証明することとなります。
ところで、同居している場合、共に生活を営むにあたり、どこからどこまでがご主人様のお金で、どこからどこまでが奥様のお金と、明確に区分することはできないのが通常です。
もし明確に区分できる証明を出せれば、住民票は不要となりますが、現実的には難しいので、住民票による証明が一般的となります。
次に、子供が大学生で下宿している等で、親である加入者と別居しているこのようなケースでは、加入者より生計維持がされているということは、子供に対して仕送りされていることとなります。
ですから、仕送りをした預金通帳のコピーや振り込み依頼書の写しなどを証明書類として添付します。
ところで、今ご説明した加入者と別居している場合以外の証明について、少しスッキリしないところがあるかと思います。
これは、健康保険の扶養に入るには、生計維持が大前提で、一定の親族に同一世帯が求められるのに、証明の方法としては、同一世帯を証明すれば、結果的に生計維持が証明されていますという、法律の規定とは逆の順番となってしまうことにあるかと思います。
ただ、いずれにしても生計維持と同一世帯の証明に関しては、健康保険の扶養の手続きにおいては、重要なポイントとなりますので、しっかり整理してご理解いただければと思います。
生計維持と同一世帯に関して注意すべきパターン
最後に生計維持と同一世帯に関して注意すべきパターンをいくつかご紹介したいと思います。
まず加入者の結婚相手に子供がいて、その子供を加入者の扶養に入れる場合についてご説明します。
先程もご説明したように、加入者の子であれば、健康保険の扶養に入れる場合には生計維持だけでいいのですが、結婚の子供を入れる場合は、その子供と養子縁組をしていない場合には、生計維持だけでなく同一世帯の条件も必要となります。
結婚相手は、当然婚姻関係が結ばれるわけですから、生計維持だけでいいのですが、その子供は、親が加入者と夫婦になったからといって、加入者の子供となるわけではありません。
ですから、結婚相手の子供を加入者の扶養に入れる場合には、養子縁組をしていないのであれば、生計維持と同一世帯の条件も必要になります。
つまり、自分の子であれば、大学生で下宿していて別居している場合でも、仕送り等の生計維持があれば健康保険の扶養に入れることができますが、結婚相手の子供で養子縁組をしていない場合は、大学生で下宿していて加入者と同居していない場合、いくら加入者がこの子に仕送りをしていたとしても、加入者の健康保険の扶養に入ることはできないこととなります。
このケースはよく出てきますので、注意していただければと思います。
では、もう一つ注意すべきパターンについてお話します。
加入者と配偶者の間に子供がいて、加入者と配偶者が離婚し、加入者がその子供を自分の健康保険の扶養に入れる場合です。
ここでは加入者を妻、配偶者を夫とします。
このとき、何に注意しなければいけないかというと、子供に対して元の配偶者(夫)から養育費が払われるケースがあります。
この場合、加入者(妻)の収入より養育費の金額が多い場合には、子供を加入者の健康保険の扶養に入れることはできなくなります。
例えば、加入者の月収が15万円で、元の配偶者から養育費が子供に対して毎月18万円払われている場合、養育費の方が多くなりますので、この場合は加入者の健康保険の扶養に入ることができません。
つまり、子供は母親と一緒に暮らしてはいますが、子供の生活を支えている、つまり生計を維持しているのは、父親とみなされるわけです。
ですから、このような場合も考慮して、子供を加入者の健康保険の扶養に入れる場合は、養育費が払われているかどうか、もし払われているのであれば、いくら払われているかを確認して手続きを取る必要があります。
このような状況はなかなか聞きづらいところもありますが、ルールとして決まっていますので、注意していただければと思います。
労働者の方も、このようなことを言いづらいかもしれませんが、ルールですので、手続きに協力していただければと思います。
まとめ
今回は、健康保険の扶養に入るための条件として、生計維持と同一世帯についてご説明させていただきました。
加入者の健康保険の扶養に入るには、加入者に生計維持されていることが必要です。
一定の親族によっては生計維持プラス同一世帯に属している、つまり加入者と同居している条件も求められますので、ここも注意していただければと思います。