雇用保険への加入の手続きを忘れていたのですが・・・。

【質問】
先日、雇用保険の加入者証を整理していたら、1名雇用保険への加入の手続きを忘れていることに気が付きました。
今からでも加入の手続きをすることは可能でしょうか?
【回答】
加入日が、加入の手続きをする日より2年以内であれば、今からでも溯って加入することは可能です。
もし、加入日が、手続きをする日より2年を超えていたら、2年前にしか溯ることはできません。
【解説】
健康保険の場合、加入すると従業員に保険証が作成されるため、仮に加入の手続きを忘れていても、通常は、何処かの時点で、従業員からの問合せがあるため、未手続きの期間が長期に及ぶことは少ないと言えます。
ところで、雇用保険も加入の続きをすれば、従業員本人用の加入証が発行されます。
しかし、この加入証を退職時に離職票等一緒に渡す会社も多く、また、健康保険の保険証と違って、従業員自身が会社に在籍中に、その加入証を使う機会が非常に少ないので、従業員自身が雇用保険への加入の意識が薄いため、加入の手続き忘れが発生してしまうと、未加入の期間が長期間と可能性が十分に考えられます。
では、万一、加入漏れがあった場合に、溯って加入の手続きができるのか?についてですが、賃金台帳や出勤簿又はタイムカードといった、その従業員が以前から勤務していた、という証明ができる書類を添付すれば、溯っての加入の手続き自体は可能です。
ただし、問題となってくるのが、溯ることができる期間です。
これは、雇用保険だけでなく健康保険や労災保険にも当てはまるのですが、通常、保険料を徴収できる時効は2年と定められています。
例えば、何十年も保険料を支払っていなかった場合、国が、請求できるのは、直近の2年間分だけになります。
そのため、溯って加入できる期間も2年間だけとなります。
ですから、溯って加入する日が、加入の手続きをする日より、2年以内であれば、先程、言いましたように未加入であって期間に在籍していたことを証明できる書類を添付すれば問題無いのですが、もし、溯って加入する日が、2年を超えていたら、2年前にしか溯ることはできません。
ただし、平成22年10月より、雇用保険料が給与から天引きされていたことが書面により確認できる場合に限り、2年を超えた期間についても、雇用保険に遡って加入できるようになっています。
ところで、ご存知のように従業員が退職した場合に給付される失業等給付は、雇用保険の加入期間によって給付される日数が決まります。
当然、加入期間が長ければ給付日数は多くなります。
ですから、長期間にわたって雇用保険の加入漏れがあると、もらえるはずの失業等給付がもらえなくなってしまうなど、場合によっては大きなトラブルに発展してしまう可能性がありますので、保険加入の手続きにつきましてはご注意下さい。
しかし、そうは言ってもミスを100%防ぐこともなかなか難しいのも事実です。
そのため、雇用保険の加入状況を定期的に確認することをお勧めします。
管轄のハローワークに行けば、現在の雇用保険の加入状況がわかる、被保険者台帳を無料で発行してもらうことができます。
毎年、決まった時期の被保険者台帳を確認することを業務の一環として取組めば、たとえ、加入漏れがあったとしても、2年以内の発見できるので、溯って加入の手続きを行えば、問題は生じません。
もし、何十年も加入漏れがあった場合には、その従業員が受取ることができなくなる失業等給付の額は、百万円以上になることも考えられます。
もし、そのような事態になれな、会社が負担せざる得ない状況も出てきます。
本当に少しの労力で大きなトラブルを防ぐことができます。
是非、今後のご参考になさって下さい。
【まとめ】
健康保険は、加入手続き後に保険証が作成されるため、手続き漏れがあっても、従業員からの確認で発覚することが多く、未加入期間が長期に及ぶことは少ないと言えますが、雇用保険の場合は、加入証が退職時に渡されることが多く、在籍中に使用する機会が少ないため、従業員の意識が薄れ、手続き漏れが長期間続く可能性があります。
万一、雇用保険の加入漏れが判明した場合、賃金台帳や出勤簿などの勤務実績を示す書類を添付すれば、遡及して加入手続きが可能ですが、通常は時効により2年前までしか遡ることができません。
ただし、平成22年10月以降、給与から保険料が天引きされていたことが書面で確認できれば、2年を超えて遡ることも可能となっています。
退職後に支給される失業等給付は、雇用保険の加入期間に基づいて給付日数が決まるため、加入漏れが長期間に及ぶと給付額が減少するリスクがあり、場合によっては、会社が補填する事態にもなり得るため注意が必要となります。
ミスを完全に防ぐことは難しいですが、ハローワークで発行される被保険者台帳を定期的に確認し、加入状況をチェックすることで、漏れを早期発見し対応が可能となります。
このような取組みで、重大なトラブルを未然に防ぐことができます。