傷病手当金 丸ごと解説 -1-

今回は、傷病手当金についてご説明したいと思います。

 

私達は、不慮の病気や怪我で突然働くことができなくなり、収入を得ることができなくなるというリスクを、常に抱えています。

 

わが国の制度では、病気やけがで収入を得ることができなくなった場合に、いくつかの補償制度が設けられています。

 

その代表的なものが、今回ご説明する、健康保険の傷病手当金です。

 

ですから、この傷病手当金について正しく理解しておくことで、将来のリスクに対する不安を軽減することができます。

 

 


また、経営者や事務担当者の方は、従業員から傷病手当金に関する質問を受けることが多いかと思います。

 

ですから、経営者や事務担当者も傷病手当金について正しく理解しておくことは、労務管理を行う上で重要なポイントです。

 

 

 

今回は、傷病手当金について、細かい部分までわかりやすく丁寧にご説明していきたいと思います。

 

まず今回のブログでは、傷病手当金の対象者と受給条件についてお話しします。

 

そして、次のブログでは、傷病手当金の受給額と受給期間についてご説明したいと思います。

 

繰り返しになりますが、傷病手当金は、私達の生活において非常に重要な制度ですので、今回と次回のブログを併せて、是非最後までお読みいただければと思います。

 

 

 

なお、今回お話する内容は、全国健康保険協会、通称「協会けんぽ」と呼ばれている全国健康保険協会の傷病手当金についてご説明させていただきたいと思います。

 

ですから、企業等が独自に設立する健康保険組合における傷病手当金については、今回お話する内容と異なる点があるかもしれませんが、その点については、ご了承いただければと思います。

 

傷病手当金の対象者

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まず、傷病手当金は誰が使うことができるのか?傷病手当金の対象者についてご説明したいと思います。

 

残念ながらこの傷病手当金は、すべての国民が利用できるわけではありません。

 

傷病手当金の対象者は、健康保険の加入者本人となります。

 

 

ところで、健康保険の制度には、扶養という制度があります。

 

例えば、ご主人が健康保険の加入者で、奥様やお子さんが扶養に入るということはよくあります。

 

しかし、傷病手当金に関して、扶養に入っている方は、傷病手当金の対象者ではありません。

 

ですから、健康保険の加入者の扶養に入っている人が、病気やケガで働くことができなくなって収入がなくなっても、傷病手当金を利用することはできません。

 

まずここを押さえていただきたいと思います。

 

 


そしてもう一つ注意すべき点ですが、我が国の保険制度には、健康保険以外に国民健康保険があります。

 

国民健康保険に関しては、この傷病手当金は、任意の制度となっています。

 

国民健康保険は市区町村で運営されていますが、その市区町村で傷病手当金を給付することは可能です。

 

ただ、現在私が調べた限りでは、国民健康保険で傷病手当金が支給された実績はないようです。

 

 

 

ですから、国民健康保険の加入者は、病気やケガで収入がなくなっても、収入の補償を受けることができないこととなります。

 

いずれにしましても、傷病手当金をもらうことができるのは、健康保険の加入者、本人だけとなります。

 

ここは、重要なポイントとなりますので、是非正しくご理解下さい。

 

傷病手当金の受給条件

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それでは、次に傷病手当金は、どのような場合に受け取ることができるのか?傷病手当金の受給条件についてご説明したいと思います。

 

傷病手当金の主な受給条件は、四つあります。

 

具体的にご説明していきたいと思います。

 

 

 

まず最初の三つについては、一つにまとめてご説明したいと思います。

 

傷病手当金を受給するのは、①業務外の ②病気やケガで ③労務不能の状態であることが条件となります。


この①から③の三つの条件を満たしていることが重要です。

 

いくつかポイントがありますので、具体的にご説明したいと思います。

 

 

 

まず①の業務外です。

 

もともと健康保険の給付そのものが業務外の病気やケガを対象としていますので、傷病手当金も当然、業務外の病気やケガが対象となります。

 

ですから、業務中、つまり仕事中の病気やケガで労務不能になった場合は、この傷病手当金は利用できませんので、ここは覚えておいていただければと思います。

 

 

 

また、もう一つ注意すべきポイントが「労務不能」という点です。

 

「労務不能」とは、全く仕事をすることができない状態を指しているとイメージしていただければと思います。

 

ですから、例えば、製造業に従事している方が、本来の製造業務はできないけれど、経理や総務などの内勤の仕事はできる、あるいは1日中働くことはできないけれど、半日であれば仕事ができるという状況は、労務不能には該当しないこととなります。

 

待期期間について

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ただし、この三つの条件を満たしたからといって、すぐに傷病手当金が支給されるわけではありません。

 

もう一つ、支給条件があります。

 

それが四つ目の条件である、待期期間の完成です。

 

待期期間とは、少し聞き慣れない言葉かと思います。

 

この待期期間というのは、どういう期間かといいますと、わかりやすく言えば、傷病手当金の支給が開始される前の期間をいいます。

 

 

 

そして、待期期間が完成して、初めて傷病手当金は支給開始されます。

 

では、待期期間の完成とは、どうような状態で待期期間の完成となるかと言うと、労務不能の日が連続して3日続くと、待期期間の完成となります。

 

ですから、傷病手当金は、この連続3日の労務不能の日、待期期間が終わった4日目から支給される形となります。

 

 

 

ところで、この待機期間という言葉だけでは、なかなかイメージがつかみにくいと思いますので、いくつかのパターン例を挙げて具体的にご説明していきたいと思います。

 

最初のパターンですが、労務不能一定期間連続して休業する、一番オーソドックスなパターンです。

 

例えば、9月1日から9月30日まで1ヶ月間休業したとします。


このケースでは、9月1日から9月3日までの3日間連続で労務不能の日があるため、この時点で待期期間が完了しています。

 

ですから、このケースでは、傷病手当金は9月4日から支給される形となります。

 

 


次に2番目のパターンですが、1番目のケースで、2日目の9月2日が公休日だった場合です。

 

待期期間中の公休日の扱いについてですが、待期期間の労務不能の日は、必ずしも出勤日である必要はありません。

 

ですから、たとえ公休日であっても、その日が労務不能であれば待期期間に含めることができます。

 

従って、このケースでも9月1日から9月3日までの3日間が労務不能であれば、待期期間は完成し、傷病手当金は、9月4日から支給される形となります。

 

さらに極端な例を挙げると、9月1日から9月3日までの3日間、全てが公休日でも構いません。

 

3日間の全てが公休日であり、その全ての日が労務不能であれば、待期期間は完成し、4日目から傷病手当金が支給されます。

 

待期期間は、必ずしも出勤日である必要はなく、労務不能であれば公休日も含めることができるという点は、是非覚えておいて下さい。

 

 


次に3つ目のパターンですが、9月1日と9月2日の2日間は労務不能で休業して、3日目に出勤したものの、体調が思わしくなく9月5日から再び休み始め、その後もずっと休業するケースです。

 

このケース場合、9月3日出勤しているため、最初の2日間しか連続で休んでいないため、この時点では待期期間は完成していません。

 

そして、このようなケースのように、一度出勤してしまうと、連続性が途絶えることとなり、待期期間のカウントはリセットされることとなります。

 

つまり、待期期間は、あくまでも労務不能で連続して3日間休業する必要があるので、このケースでは、9月5日から3日間連続して休業しているので、9月7日に待期期間が完成することとなり、傷病手当金は、9月8日から支給されることとなります。

 

 

 

次に4つ目のパターンですが、まず9月1日から9月3日までの3日間、連続で労務不能で休んだ後、9月4日に出勤したものの、やはり体調が悪く、9月5日から再び労務不能で休んだケースです。


このケースでは、9月1日から9月3日までの3日間、連続で労務不能の日があるため、9月3日の時点で待期期間が完成しています。

 

待期期間は一度完成すれば、その後出勤して再度休業した場合でも、休業した時点から傷病手当金が支給されるという形になります。

 

ですから、このケースでは、9月5日から傷病手当金が支給されることとなります。

 

もっと、極端な例としては、9月1日から9月3日まで休業して、その後10日間出勤し、再び休業したケースでも、9月3日の時点で待期期間は完成しているため、再度休業した時点から傷病手当金が支給されることになります。

 

このように、待機期間は一度完成すれば、その後出勤しても、再度休業すれば傷病手当金が支給されるという考え方になります。

 

 

 

ただし、実務的な注意点として、一度待機が完成した後、先程の例のように10日間出勤してから、再度休業した場合、休業の理由が同じであるかどうかを疑われることがあります。


もちろん、同じ理由での休業であれば問題はありませんが、10日間も空いていると、その間に別の要因が加わったのではないかという疑問を持たれる場合があります。

 

ですから、出勤の期間が長く、その後に休業する場合は、調査が入る場合がありますので、知識として覚えておくとよいでしょう。

 

 

 

最後の5番目のパターンですが、労務不能で9月1日、2日の2日間休業し、3日目の9月3日に出勤、そして再度9月4日、5日と休業し、また出勤して、また2日間休業するというように、1日か2日間の休業をしたのち出勤して、再度2日以下の休業をしてまた出勤をすることを繰り返すケースです。

 

このようなケースでは、労務不能の日が3日連続していないため、いつまで経っても待機期間は完成しないこととなります。

 

待期期間が完成しなければ、傷病手当金は支給されませんので、極端な話、このような状況が続き、実際に休業している日が100日、200日となっても、傷病手当金は全く支給されないこととなります。

 

労災保険の待期期間との違いについて

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最後にもう一つ知識としてぜひ覚えていただきたい点があります。

 

実は、労災保険の休業補償にも待期期間の完成の条件があります。

 

しかも、その期間は、傷病手当金と同じの3日間です。

 

 

 

しかし、傷病手当金と労災保険の休業補償の待期期間には決定的に異なる点があります。

 

それは、労災保険の休業補償の待期期間には「連続」という要件がないことです。

 

つまり、労災保険の休業補償の待期期間は、労務不能の日が3日間あれば連続でなくても、そこで待機期間が完成するという考え方となります。

 

 

 

従って、先程の5番目のケースですが、これが労災保険の休業補償だった場合、9月1日、2日と休業して、再度9月4日に休業すれば、この時点で待期期間が完成したこととなり、9月5日から休業補償が支給されることとなります。

 

実際、傷病手当金と労災保険の休業補償の待期期間を混同される方が多くいらっしゃいますので、違いを正しく理解していただければと思います。

 

まとめ

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今回は傷病手当金について、誰が利用できるのかという対象者と、どのような条件で受け取ることができるのかという支給条件についてご説明させていただきました。

 

特に待期期間の考え方は少し難しい部分があるため、ぜひ正しく理解していただければと思います。

 

いずれにしても、傷病手当金の対象者や支給条件は重要なポイントですので、ぜひ今後の参考にしていただければと思います。