意外!退職時は有給休暇を買取った方がメリットが多い・・・?
【質問】
退職を予定している従業員から、有給休暇の買取を請求されているのですが、ある人から、「退職時は、買取に応じた方が得ですよ。」と聞いたことがあるのですが、本当でしょうか?
【回答】
確かに退職を予定している従業員の有給休暇を買取った方が、得と考えられる場合もあります。
【解説】
有給休暇の買取については、その本来の目的を阻害し、取得の促進を妨げるため、法律で禁止されています。
しかし、退職時における有給休暇の買取は、その本来の目的を阻害するものではなく、労働者にとっても、特別不利益になるものでもないので、例外とされています。
ただし、あくまで「有給休暇を買取っても差支えない」のであって、会社は、退職だからといって、必ず有給休暇の買取に応じる必要はありません。
では、会社は、退職時であっても有給休暇の買取に応じない方が良いのでしょうか?
実は、必ずしもそうではなく、退職時については有給休暇の買取に応じた方が、得と考えられる場合もあります。
例えば、退職を予定している労働者が40日間の有給休暇を保有しているとします。
そして、仮に、現時点を4月10日として、5日後の4月15日を退職日としたいから、40日間分の有給休暇を買取って欲しいと会社に請求したとします。
このような場合、会社が有給休暇の買取に応じなかったかった場合には、どうなるでしょうか?
この場合、退職日が確定している訳ではないので(4月15日は、買取に応じてくれた場合のあくまで希望日となります。)、もし、会社が有給休暇を買取ってくれなければ、実際に有給休暇取得の権利を行使する場合が考えられます。
ところで、ご存知のように、有給休暇を取得した日については、会社は、通常の賃金を支払わなければなりません。
ですから、会社は、40日分の有給休暇を買取らなかったとしても、労働者が、40日分の有給休暇を取得すれば、40日の分の賃金を支払わなければなりません。
つまり、買取に応じても、応じなくても、会社が払う金額は、同じとなります。
しかし、有給休暇を買取った場合と買取らなかった場合とでは、1つ違う点があります。
それは、退職日です。
もし、会社が、有給休暇の買取に応じず、労働者が、4月16日から有給休暇を取得したら、退職日は、5月25日となります。
当然ですが、退職日までは、雇用契約が続き、労働者の身分が約束されるわけですから、健康保険や厚生年金保険といった各保険の保険料が発生します。
上記の例のような場合では、買取に応じなかった場合の方が、健康保険と厚生年金保険については、1ヶ月分の保険料が余計にかかることとなります。
有給休暇の開始日によっては、2ヶ月分の保険料が余計にかかる場合もあります。
また、先に書いたように退職日までは労働者の身分が続くわけですから、有給休暇中に何か予想外の事態が発生してしまう場合もあります。
例えば、労働者が、休暇中に悪質な事件を起こしてしまうことも可能性としては、ゼロではありません。
もし、そのようなことが起こったら、たとえ、休暇中のプライベートな時間中での出来事であっても、自社の労働者であることには変わりないので、会社の信用に損害が及んでしまうケースも否定できません。
このようなことから考えると、労働者が退職する場合には、有給休暇を買取ってしまい、雇用関係を終了させてしまう方が、会社にとってメリットが多い場合も十分考えられます。
ただ、有給休暇の買取は、ただ会社からお金を支払うだけの形となってしまうので、抵抗感を覚える経営者の方も多いと思います。
繰り返しになりますが、買取に応じるか、応じないかは、あくまで経営者の自由ですので、その時々の状況で判断すれば良いかと思います。
ただし、退職時は有給休暇の買取に応じる方が、実際にメリットも多い、ということは、客観的な事実ですので、今後のご参考になさって下さい。
【まとめ】
有給休暇の買取については、通常、労働者が休暇を取得する権利を確保する目的から法律で禁止されています。
ただし、退職時に限り例外的に買取が認められています。
これは、退職によって有給休暇を取得する機会が事実上失われるためであり、買取が労働者に特別な不利益を与えるものではないと判断されているためです。
退職時の有給休暇買取は、会社にとって必ずしも応じなければならない義務ではありませんが、場合によっては買取に応じた方が合理的です。
例えば、退職予定の労働者が多くの有給休暇を保有している場合、買取に応じないと退職日が延長され、その期間に健康保険や厚生年金保険の負担が増える可能性があります。
また、労働者の身分が続くことで予想外のトラブルが発生するリスクも否定できません。
こうした観点から、退職時の有給休暇買取は会社にとってリスク回避やコスト削減につながる場合があります。
ただし、買取は経営者の判断によるものであり、その時々の状況に応じて適切に対応すれば良いと考えられます。