短時間正社員のメリットとデメリットとは・・・?

【質問】

 

最近、短時間正社員という言葉をよく耳にするのですが、短時間正社員とはどのような社員なのでしょうか?

 

パートタイマーとはどのように違うのでしょうか?

 

また、どんな点が、メリット又はデメリットなのでしょうか?

 


【回答】

 

短時間正社員は、数年前から使われるようになり、業務に対する責任や賞与や退職金と労働条件も正社員と同等に扱われるのですが、所定労働時間が正社員よりも短い労働者のことを言います。

 

短時間正社員制度は、経営者及び労働者にとってメリットが大きい制度と言えますが、運用の仕方を誤ってしまうと、デメリットな点も十分考えられるので、制度導入には、十分な検討が必要と言えます。

 

 

【解説】

 

短時間正社員は、数年前から使われるようになり、今後、ますます取り入れていく企業が増えて行くかと思います。

 

短時間正社員とは、業務に対する責任や賞与や退職金と労働条件も正社員と同等に扱われるのですが、ただ、正社員よりも所定労働時間が短くなります。
 
 


では、どのような場面で活用されるかですが、まず、正社員であった労働者が出産、子育て等でフルタイムで労働できなくなった場合に、従来では、パートタイマー等の非正規社員として労働する場合が、ほとんどでしたが、非正規社員となると、業務に対する責任や賞与等で正社員と待遇に差がでるため、労働者のモチベーションが下がったり、労働力が流失してしまうリスクがありました。
 
 
確かに、業務だけ考えれば、従来の業務に従事させることは可能ですが、パートタイマー等の非正規社員が、その1名ならば、賞与等も支払ってもいいのでしょうが、他にも非正規社員がいる場合には、他の非正規社員との兼ね合いもありますので、その者だけに賞与等の待遇を与えることは、不平等となってしまいます。

 

労働者側も、従来と同じ業務をしているのに、待遇が下がってしまうのは、不満と感じてしまいます。
 


 
また、パートタイマー等の非正規社員が、短時間正社員になる場合も考えられます。

 

現在、どの企業でも、パートタイマー等を積極的に活用しています。

 

優秀なパートタイマーを活用することは、企業発展に大きく寄与します。
 
 
パートタイマー等の有期労働者を正社員に転換するケースも今後、益々増えていくと言えます。

 

 

 

しかし、優秀なパートタイマー中には、様々な理由で正社員と同じ労働時間労働できないパートタイマーもいます。

 

従来であれば、そのような場合は、パートタイマーであり続けるしかなかったのですが、短時間正社員制度を設ければ、優秀なパートタイマーにとってモチベーションも上がるし、生産性の向上にも繋がると言えます。
 
 
このように、短時間正社員の制度は、経営者及び労働者にとってもメリットが大きい制度と言えます。

 

そのため、短時間正社員は、今後、益々ニーズが高まってくるかと思います。
 

 


しかし、これは私の個人的な考えですが、短時間正社員には、1つ課題、デメリットと言える点があると思っています。

 

もし、今後、短時間正社員制度の導入を検討される際のご参考になればと思います。

 

そもそも「正社員」という概念は、法律で定められているわけではなく、私達が、労働者を区分する際に便宜上使用しているに過ぎないのですが、一般的には、雇用期間の定めがないことが最も大きな要素と言えます。

 

 

 

ただし、雇用期間に定めがないのであれば、パートタイマー等と区分される労働者を無期雇用にすれば、正社員になるかと言えば、必ずしもそうはなりません。

 

そこに業務に対する責任の度合いや、それに伴う賞与等の待遇面の問題も絡んできます。
 
 
つまり、「正社員」とは、契約期間の定めがなく、仕事に対する責任も重く、しかし、待遇に関しては優遇されている労働者となります。

 

 

 

厚生労働省のHPでは、「短時間正社員」の定義を、フルタイム正社員と比較して、1週間の所定労働時間が短い正規型の社員であって、次のいずれにも該当する労働者としています。

 

1.期間の定めのない労働契約(無期労働契約) を締結している

 

2.時間当たりの基本給及び賞与・退職金等の算定方法等が同種のフルタイム正社員と同等

 

となると、基本給及び賞与等の算定方法が、正社員と同じということは、仕事に対する責任も同じ程度と考えられます。
 

 


 
では、ここで何が問題となってくるかというと、正社員の場合、業務を遂行するにあたり、所定労働時間を超えての労働や休日労働が必要となる場合があります。


 
時間外労働者や休日労働をして、初めて自らの業務に対する責任を果たすことができる場合も決して珍しくありません。


 

しかし、短時間正社員の場合、元々、正社員と同じだけの時間、労働することが困難であるため、正社員と仕事に対する責任を同じだけ果たせるか、この点が、疑問に思います。

 

ですから、私は、「正社員」と「短時間正社員」との間では、仕事に対する責任の度合いに、どうしても差が出てしまうのではないかと思います。

 

 

しかし、それはある意味、当然のこととも言えます。
 
 
仕事に対する責任に差が出るのであれば、待遇面で差を付ければ良いと言えますが、それではパートタイマーの概念に近くなってしまいます。

 

となると、「短時間正社員」という「正社員」という意味合いに違和感を覚えざる得ないのです。

 

 

 

しかし、「短時間正社員」に関する助成金でも、賃金や賞与等の待遇面では、正社員と同じ算定方法を求められるように、「短時間正社員」の「正社員」は、通常の正社員と同じ意味合いで取られる場合の方が多いと言えます。

 

ですから、使用者は、「いくら短時間でも正社員なんだから」と思い、それに対して労働者は、「短時間で働く約束だから」といった「短時間正社員」の解釈に、経営者と労働者との間でギャップが生じてしまうのでないか、と思います。

 

このギャップを上手く埋めることができないと、短時間正社員制度は、デメリットの方が大きくなってしまう可能性が高いのではないかと思います。

 

 

 

「短時間正社員」という新しい働き方自体は、先程も書きましたが、経営者、労働者双方にとってメリットのある雇用形態であり、今後の企業発展において大きな役割を果たす可能性は非常に高いと言えます。

 

しかし、そのためには、「短時間正社員」の「正社員」をどのような位置付けに置くか、経営者及び労働者、双方で十分な話し合いの上、導入する必要があるかと思います。

 

ただ、逆に考えれば、短時間正社員を上手に活用できれば、企業として大きく発展していく可能性があるのだと思います。

 

 

【まとめ】

 

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短時間正社員制度は、所定労働時間が短いものの、正社員と同等の責任や待遇を持つ雇用形態であり、出産や育児、優秀なパートタイマーの正社員化など、多様な場面で活用が進むと考えられています。

 

この制度は、労働者のモチベーション向上や企業の生産性向上に寄与する一方で、以下の課題が考えられます。

 

 

① 責任と待遇のギャップ:短時間正社員は、正社員と同等の責任が求められる場合がありますが、労働時間の制約によりそれを果たしきれない可能性が考えられます。

 

② 概念の違和感:正社員と短時間正社員の責任や待遇の均等性が求められる一方で、短時間労働との整合性に矛盾を感じる場合があります。

 

③ 労使間の認識の相違:経営者は「正社員としての責任」を求める一方、労働者は「短時間で働く契約」を重視するため、解釈の違いが摩擦を生む可能性が考えられます。

 

 

これらの課題を解消するためには、制度の導入時に労使双方で十分な話し合いを行い、短時間正社員の位置付けを明確にすることが必要です。

 

逆に考えれば、適切に運用できれば、企業にとって大きな成長機会となる可能性を秘めています。