修理費の給料からの控除は違法ですか?

【質問】

 

会社の設備を破損させ、修理費用を弁済中の従業員が、突然、退職してしまいました。

 

未払いの修理費用を給料から控除しても問題ないでしょうか?

 


【回答】

 

給料から控除できるのは、所得税や社会保険料、組合費等の事理明白なものに限られますので、設備の修理費用を給料から控除することは、労働基準法違反となります。

 

 

【解説】

 

ご質問のように、会社の設備や車両を破損等させてしまい、修理費用を未払いのまま退職するのは、よくあるケースです。

 

最初に、1つご注意していただきたいのですが、従業員が、会社の設備等を破損させてしまい、その修理費用を負担させる場合には、例えば、保険の自己負担額を負担させるなど、予め修理費用の額を予定することは、労働基準法で禁止されています。

 

また、従業員の過失相当分を負担させること自体は、問題ないのですが、その額を決める際には、通常の場合、会社にも一定の負担額が求められるので、ご注意下さい。

 

今回のご質問が、従業員が負担する金額が、妥当な額であるということを前提でご説明します。
 
 

 


さて、労働基準法では、賃金に関して、いくつかの制限を定めています。

 

その中の1つに、「賃金の全額払い」という規定があります。

 

これは、賃金は、その全額を労働者に支払うことを定めています。
 

つまり、法律では、賃金から一切控除できないのが本来なのです。

 

しかし、もし、賃金から一切控除できなくなると、税金や健康保険料等の保険料も控除できなくなり、会社だけでなく従業員にも事務負担が増大してしまい、事業活動に支障をきたしてしまいます。

 

そのため、賃金から控除できるものを、例外として一部認めています。

 


 

まず、法令等で、賃金から控除できるものがいくつか定められています。

 

代表的なものは、所得税や健康保険等の社会保険料が挙げられます、これらのものは、所得税法や健康保険法等で、賃金から控除できる旨が規定されています。
 
 

 


そして、もう1つ重要なものが、労働者との間で書面の協定(労使協定)があり、組合費や給食代、購買費用等の事理明白なものです。

 

組合費や給食代等は、個々に徴収するより、賃金から控除する方が、従業員にとっても事務負担が少なくなるため、賃金の全額払いの例外として認められています。


 


ただし、ここで注意すべき点があります。

 

まず、組合費や給食代等を賃金から控除するには、従業員との間で、書面による協定を結ぶ必要があります。

 

そして、従業員との間で書面による協定を結んでも、控除できるのは、あくまで事理明白なものに限られます。

 

つまり、従業員との間で書面による協定を結んだとしても、何でも控除できるわけではないのです。
 
 

 


では、問題となるのは、会社の設備等の修理費用が、事理明白なものに該当するかどうかです。

 

結論から言いますと、会社の設備等の修理費用は、事理明白なものには該当しないとされています。
 
となると、会社の設備等の修理費用を賃金から控除するということは、違法な行為となってしまいます。

 

 

 

確かに、修理費用等を安易に賃金から控除してしまっている会社もあるようです。

 

従業員から訴えがなければ、結果的に問題が発生しない場合もあります。
 
 
しかし、一旦、控除してしまうと、違法な行為の事実が残ってしまいます。

 

もし、従業員が訴えた場合には、会社は、全く抗弁の余地が無くなってしまい、大きなトラブルになりかねません。

 

ですから、従業員と何とか連絡をつけて修理費用についての弁済方法をよく話し合うなどして、修理費用を賃金から控除することは絶対に止めて下さい。

 

 

【まとめ】

 

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従業員が会社の設備や車両を破損し、その修理費用が未払いのまま退職するケースはよく見られます。

 

修理費用を従業員に負担させる場合、事前に金額を定めることは労働基準法で禁止されていて、過失相当分の負担を求める場合でも、会社側も一定の費用を負担する必要があります。

 

 

 

ところで、労働基準法には「賃金の全額払い」の原則があり、賃金は全額労働者に支払わなければなりません。

 

例外として、税金や社会保険料など法令で認められた控除、および労使協定に基づく「事理明白なもの」のみ控除が許されています。

 

しかし、設備修理費用は「事理明白なもの」に該当せず、賃金から控除することは違法となります。

 

 

 

ですから、修理費用を安易に賃金から控除することは、違法行為となってしまうため、従業員と修理費用の弁済方法を話し合うことが必要であり、賃金から控除することは避ける必要があります。