源泉徴収簿を賃金台帳の代用としているのですが・・・。

【質問】
先日、保険関係の手続きをする際に、源泉徴収簿を賃金台帳として提示したのですが、役所の人から、源泉徴収簿は、基本的には賃金台帳としては認められないですよ、と言われました。
賃金台帳とは、どのような形式のものを用意すれば良いのでしょうか?
【回答】
賃金台帳には、基本給、各種手当、保険料等の控除金額等を記載する必要があります。
【解説】
使用者の法的義務として、賃金台帳、労働者名簿、出勤簿等の帳票を整備する必要があります。
この帳票に関して、誤った認識を持たれている事業主の方が結構いるようです。
まず、賃金台帳についてですが、賃金台帳には、基本給、各種手当、保険料等の控除金額等を記載する必要があります。
この賃金台帳ですが、年末調整時に作成する源泉徴収簿で代用できると考えている方が多くいます。
源泉徴収簿は、あくまで課税支給額と源泉所得税が記載されているに過ぎないため、賃金台帳として使用することはできません。
また、労働者名簿ですが、採用時に提出してもらう、履歴書等に雇用年月日や退職年月日等を記載して、労働者名簿と称して取扱っている事業主の方がいらっしゃいますが、労働者名簿につきましても、法令で定められた内容を記す必要があります。
ただ、様式につきましては、必ずしも法律で決められているわけではなく、必要な事項を記載されていれば良いこととされています。
となると、履歴書でも必要な事項が記載されていれば、労働者名簿の代用となっても良いような気がしますが、行政官庁は、履歴書はあくまで履歴書であるので、労働者名簿は別途作成すべきとのスタンスです。
出勤簿につきましては、労働時間が把握できるのであれば、必ずしもタイムカードを導入する必要はありません。
パソコンで管理したり、出勤日に従業員に捺印やサインをさせる形式でも問題ありません。
ただ、ここで注意しなければならない点は、労働時間の把握の義務は、使用者あります。
つまり、労働者がタイムカードを正しく打刻しなかったり、始業・終業の時刻を正しく記載しない場合であっても、使用者は、労働者の労働時間を把握する必要があります。
例えば、加重労働時間により、労災事故が発生してしまった場合に、労働者が正しくタイムカードを打刻していなかったから、労働時間の実態がわからなかった、という言い訳は通用しないこととなります。
従って、使用者は、定期的に出勤簿のチェックを行う必要があります。
賃金台帳、出勤簿、労働者名簿は、労務管理を行う上でも非常に重要な帳票ですので、是非、今後のご参考になさって下さい。
【まとめ】
使用者には、賃金台帳、労働者名簿、出勤簿の整備義務があります。
しかし、一部の事業主は誤った認識を持っています。
賃金台帳には基本給や控除額などを記載する必要があり、源泉徴収簿では代用できません。
労働者名簿は、履歴書とは別に法定事項を記載したものを作成する必要があります。
出勤簿は労働時間が把握できれば形式は問われませんが、使用者には労働時間を正確に管理する義務があります。
労働者の誤記録を理由に実態が不明という言い訳は通用せず、定期的な確認が必要です。
これらの帳票は労務管理に不可欠であり、適切に整備しましょう。