割増賃金の計算方法について教えて下さい・・・。

【質問】

 

割増賃金の計算方法を具体的に教えて下さい。

 


【回答】

 

割増賃金には、時間外割増賃金、休日割増賃金、深夜割増賃金があり、それぞれの割増率が、労働基準法によって定められています。

 

 

【解説】

 

ご存知の通り、労働基準法では、法定労働時間を超えて労働させたり、休日労働や深夜(午後10時から翌午前5時)に労働させた場合には、割増賃金を支払う必要があります。(労働基準監督署への協定の届出が必要となります)

 

実は、割増賃金については、正しく法律を理解しないと違法行為と最もなりやすく、また従業員との間でも非常にトラブルの原因となりやすい要因です。

 

また、従業員にとっても賃金については、最も関心が高い労働条件ですので、賃金について違法行為があると、会社に対して不安感や不信感を抱く結果となりやすいので正しく理解する必要があります。

 

 
 
ここでは、割増賃金の計算方法における注意点と定額残業制の2つの視点からお話をしていきたいと思います。

 

まず、割増賃金の割増率ですが、以下の通りに定められています。


① 時間外労働           2割5分以上


② 深夜労働            2割5分以上


③ 法定休日労働          3割5分以上


④ 時間外労働が深夜に及んだ場合  5割以上(①+2割5分以上)


⑤ 休日労働が深夜に及んだ場合   6割以上(②+2割5分以上)

 

※尚、現在、月の時間外労働時間が60時間を超えた分につきましては、割増率が5割以上にする法律が定められていますが、ここでは説明を簡素化するために時間外労働時間の割増率を2割5分以上で説明させていただきます。

 

 

 

例えば、時給1,000円の労働者に、法定労働時間を1時間超えて時間外労働させた場合には、1,000円×1.25(時間外割増率)×1時間=1,250円の時間外労働に対する割増賃金が必要となってきます。
 
 
また、法定休日に3時間の休日労働をさせた場合には、1,000円×1.35(休日割増率)×3時間=4,050円の休日割増賃金が必要となってきます。

 

さらに、時間外労働が深夜に及び4時間の時間外労働の内、2時間が深夜労働と重なった場合には、1,000円×1.25(時間外割増率)×2時間+1,000円×1.5(時間外割増率+深夜割増率)×2時間=5,500円の割増賃金が必要となってきます。

 

割増賃金の基本的な計算方法はこのようになります。
 


 

ここで、上記の割増率に関して多くの事業主の方が勘違いされている点についてお話ししたいと思います。

 

まず、②の深夜割増の計算についてですが、多くの会社の始業時刻は、午前中から始まるため、そのような会社では、午後10時を過ぎても労働している場合には、必然的に時間外労働もしていることとなります。

 

そのような場合には、先程書いたように、時間外労働の割増分と深夜労働の割増分を合計して、1.5割増以上の割増賃金が必要となります。

 

ですから、深夜労働の割増率は、5割増以上と勘違いされている方が非常に多いのです。

 

 

 

しかし、深夜割増賃金は、「深夜に働いた事実」に割増賃金を支払うもので、通常の労働時間においても深夜に労働した場合には、割増賃金を支払う必要があります。

 

工場の交代制勤務やコンビニ等の夜間アルバイトなど、深夜の時間帯が通常の勤務時間という労働者もいます。

 

ですから、工場等の交替制で労働する場合には、時給1,000円の労働者が午前8時から8時間労働すれば、8,000円の賃金で良いのですが、午後10時からが始業時刻で、そこから8時間労働したら、深夜割増賃金を加算する必要があります。
 
 


例えば、午後10時が始業時刻で、翌日の午前1時から休憩を1時間取り、午前7時までの8時間労働したとします。

 

深夜の時間帯に6時間労働していますので、この割増賃金は、深夜割増が付き、1,000円×1.25×6時間=7,500円となり、午前5時から午前7時までは、通常の時給で良いので、1,000円×2時間=2,000円となり、合計で9,500円の賃金が必要となります。

 

少しおかしな表現ですが、深夜割増を1.5割増と勘違いしている場合は、まだ法律の基準を上回っているのですが、通常の勤務時間が深夜の及んだ場合に、深夜割増を付けないと法律違反となってしまうので、この点につきましては正しくご理解下さい。
 

 

 

次に③の法定休日労働ですが、休日に労働させた場合は3割5分の割増率と思われている方もいるかもしれませんが、休日に労働させた場合に3割5分の割増率を適用するのは、あくまで法定休日に労働させた場合です。

 

つまり、週休2日制で2日の休みの内、1日だけ労働させても、労働基準法で定める基準(1週間に少なくとも1日の休みを与える)を満たしているので、たとえその日が会社の休日であっても1日8時間、1週間40時間を超える部分については、時間外労働として扱われ、割増率は2割5分を使います。(変形休日制の場合を除きます)
 

 


また、法定休日に8時間を超えて労働させた場合についてですが、元々、休日労働自体が時間外労働という概念ですので、たとえ休日労働8時間を超えても新たに2割5分以上の割増率を加算する必要はありません。

 

仮に法定休日に午前8時から10時間労働させたとしたら、10時間すべてが3割5分以上の割増率が適用されます。

 

8時間が3割5分以上で2時間が5割以上で計算する必要はありません。


ただし、休日労働が深夜に及んだ場合については、⑤にあるように2割5分以上の割増率を加算する必要があります。

 

いずれにしても時間外労働等をさせた場合は、所定の割増率による割増賃金を支払わなければなりませんのでご注意下さい。

 

 

【まとめ】

 

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労働基準法では、法定労働時間を超える労働や休日労働、深夜労働(午後10時から翌午前5時)に対して割増賃金を支払う必要があります。

 

この割増賃金は、正しく理解しないと違法行為につながりやすく、従業員とのトラブルの原因にもなり得ます。

 

賃金は従業員にとって最も関心が高い労働条件の一つであり、違法行為があると企業への不信感を招く可能性があるため、正確な理解が重要です。

 

 

特に深夜労働は、「深夜に働いた事実」に基づいて支払うもので、通常勤務が深夜に行われる場合でも適用されます。

 

例えば、午後10時から翌午前7時までの8時間勤務では、深夜労働に該当する時間(6時間)について25%の割増賃金が必要です。

 

 

 

また、法定休日労働については、休日労働が法定休日の場合のみ35%以上の割増率が適用されます。

 

週休2日制で1日だけ労働した場合など、法定休日に該当しない場合は時間外労働として25%以上の割増率が適用されます。

 

 

 

また、法定休日に8時間を超えて労働しても追加の割増率は不要ですが、深夜労働が伴う場合はさらに25%以上を加算する必要があります。

 

これらの規定を遵守し、割増賃金を正確に支払うことが、法令順守と労使関係の円滑化につながります。