有給休暇の買取の請求には応じなければならないのでしょうか・・・?

 

【質問】

 

当社は、従業員が数十名の中小企業です。限られた人数の中での経営のため、どうしても各従業員の負担が大きくなってしまいます。

 

そのため、有給休暇もなかなか消化できない状態です。

 

先日、ある従業員から、有給休暇を買取って欲しい、と言われました。

 

従業員の気持ちもわかるのですが、当社も経営的に決して楽ではないため、有給休暇の買取には消極的な考えです。

 

ただ、法律的に有給休暇の買取の請求には応じなければならないのでしょうか?

 


【回答】

 

有給休暇の本来の趣旨は、労働者に対して、心身の疲労を回復し、ゆとりある生活を保障するためのものであるため、有給休暇の買取は、「お金をもらえるなら休まないで働く」ということになってしまい、本来の目的を逸脱してしまいます。

 

そのため、有給の買取は原則認められていません。

 

 

【解説】

 

ご存知のように、日本の有給休暇の消化率の低さは、大きな問題となっています。

 

有給休暇は、労働基準法で定められた労働者の権利ですが、現実は、多くの労働者が、有給休暇を消化しきれずに、時効でによって消滅させてしまっているのではないでしょうか?

 

 

 

ところで、有給休暇は、取得した場合には、出勤したとみなされるため通常の給料が支払われます。

 

ですから、消化できない有給休暇を買取ったとしても会社の負担は、同じなのだから、

 

「どうせ消化できないのだから、有給休暇を買取って欲しい」と思いたくなるのもわかります。

 

 

 

実際、私もサラリーマンの時代にはそう思いました。

 

しかし、有給休暇の本来の趣旨は、労働者に対して、心身の疲労を回復し、ゆとりある生活を保障するためのものです。

 

 

 

ですから、有給休暇の買取の請求を認めてしまうと、「買取ってもらえるなら、有給休暇を取得しないで働いた方が良い」といった考えを持つ労働者が出てくるため、結果的に有給休暇の本来の趣旨から外れてしまいます。

 

そのため、有給休暇の買取に関する法律は無いのですが、行政解釈により、有給休暇の買取は、労働基準法に反するとされています。
 
 
ですから、有給休暇の買取は、そもそも禁止されているものですから、有給休暇の買取の請求に応じる必要はありません。
 

 

 

ただ、有給休暇の問題は、今後、企業にとって大きな問題となってきます。

 

事業主サイドからみれば、買取に応じる必要は無いのだから、消化されなかったら、それはそれで仕方がないのでは、と思いがちですが、労働者が、有給休暇を取得できやすい職場環境を形成していくことは、経営者に与えられた大きな課題と言えます。

 

有給休暇の取得に関しては、労働者任せにしていては、絶対に改善しないところがあると思います。

 

経営者が、有給休暇の取得率の改善に正面から取組むことは、会社発展において、とても意義のあることだと思います。

 

ですから、是非、有給休暇の取得率の向上に努めていただければと思います。

 

 

 

なお、平成31年4月1日より、有給休暇の最低5日の取得が義務化されています。

 

ちなみに、有給休暇の買取に関しては、退職時の場合や法律で定められた日数以上に付与された場合には、例外的に買取が認められる場合があります。

 

その点につきましては、改めてお話したいと思います。

 

 

【まとめ】

 

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日本では有給休暇の消化率が低く、多くの労働者が未消化のまま時効で失効してしまっています。

 

有給休暇は労働者の権利であり、取得時には通常の給与が支払われますが、その本来の目的は心身の回復と生活の充実にあります。

 

そのため、有給休暇の買取は労働基準法に反するとされ、認められていません。

 

 

 

ただし、退職時や法定日数を超えて付与された場合など、例外的に買取が可能なケースもあります。

 

企業にとっては、有給休暇の取得を促進しやすい環境を整えることが重要であり、経営者が積極的に取り組むことが会社の発展にもつながります。

 

なお、2019年4月1日からは、年5日の有給休暇取得が義務化されています。