退職した従業員から有給休暇の買取りを請求されたのですが・・・。

経営者の方から、「退職した従業員から消化できなかった有給休暇の買取を請求されたけど、応じる必要がありますか?」といった質問を受けることがあります。
退職した労働者から有給休暇の買取り請求があった場合には、応じる必要があるのでしょうか?
今回は、退職時の有給休暇の買取についてわかりやすく解説していきます。
有給休暇は、労働日の取得が前提です
退職した従業員から「未消化分の有給休暇を買取って欲しい」と言われるケースはよくあります。
有給休暇の買取りは、原則的に法律で禁止されていますが、退職時には、未消化分の有給休暇を買取っても差支えないとされています。
「差し支えない」という事は、必ずしも有給休暇の買取りに応じる必要はないということとなります。
ところで、そもそも退職した従業員が、有給休暇の買取りを請求する権利自体があるのでしょうか?
有給休暇は、労働を免除するわけですから、労働日に取得することが前提となります。
ですから、公休日や年末年始の休暇を有給休暇とすることは、できないのです。
退職した従業員にとっては、今後、労働する日、というものは、存在しないこととなります。
ですから、退職した従業員が、有給休暇の権利を行使すること自体あり得ないこととなります。
つまり、有給休暇は、仮に未消化分があっても、退職した時点で、その権利は、消滅してしまうこととなります。
有給休暇の権利を「行使する」「しない」は、労働者の任意
少し余談ですが、例えば、5月20日の時点で、5月31日に退職の意思を会社に示し、それが承諾されたとします。
このような場合で、仮に、有給休暇が、20日分残っていても、その従業員には、11労働日しか残っていないこととなります。(5月21日~5月31日)
ですから、このような場合、有給休暇の権利を行使できるのは、11日分しかないこととなります。
残りの9日分については、もし、会社が、買取りの請求に応じない場合には、 結果的に、退職時に権利が消滅してしまうこととなります。
このようなケースの場合、従業員には少し酷な話となってしまいますが、有給休暇は、労働者の権利ですが、その権利を「行使するか」「しない」かは、労働者の任意となります。
仮に、労働者がその権利を行使しなくても、事業主には、法律上の責任はありません。
有給休暇を取得できた環境にあったかどうか、という道義的な問題は残りますが、法律的には、退職日までに全ての有給休暇を消化出来ない場合には、その権利を行使できないまま、退職時に消滅してしまうこととなります。
まとめ
退職した従業員から未消化の有給休暇の買取を求められた場合、会社が必ず応じる義務はありません。
原則として有給休暇の買取りは法律で禁止されていますが、退職時に限っては買取っても差し支えないとされています。
有給休暇は、労働する日に取得することが前提であるため、退職後は取得の前提となる労働日が存在しません。
そのため、未消化の有給休暇は退職と同時に権利が消滅します。
たとえ有給が残っていても、退職日までに取得できる日数を超える分については、取得できずに失効します。
買取りを行うかどうかは会社の判断となり、応じない場合でも法律上の責任は問われません。