Q 歩合給の場合の時間外割増賃金はどのように計算するのでしょうか?
【質問】
当社では、営業社員に対して毎月の売上高に応じて歩合給を支給しています。
先日、ある営業社員から「歩合給を支給している場合の時間外割増賃金の計算方法が間違っているのではないか?」という申し出がありました。
当社では、歩合給を他の手当と合算して割増単価を算出し、時間外労働時間に応じて割増賃金を計算しています。
歩合給の場合には、何か特別な計算方法があるのでしょうか?
【回答】
歩合給の時間外割増賃金の計算方法は、通常の時間外割増賃金の計算方法とは違い、歩合給の額を総労働時間で割って1時間当たりの賃金を算出して時間外割増賃金を計算します。
【解説】
労働基準法では、法定労働時間を超えて労働した場合には、時間外割増賃金の支払いが必要です。
ですから、歩合給であっても法定労働時間を超えて労働した場合には、当然、時間外割増賃金を支払う必要があります。
しかし、歩合給の場合の時間外割増賃金は、通常の時間外割増賃金の計算とは少し違う方法で計算されます。
まず、最初に通常の時間外割増賃金の計算方法をご説明します。
月給額が20万円で、1ヶ月の平均労働時間を160時間とします。
この場合、時間割増賃金を計算するには、月給額を1ヶ月の平均労働時間で割って、月給を1時間当たりの単価に換算します。
具体的には、20万円÷160時間=1,250円となります。
そして、この1,250円に割増率をかけます。
割増率を2割5分増とすると、1,250円×1.25=1,563円となります。
この1,563円を割増基礎単価と言います。
時間外割増賃金は、割増基礎単価に時間外労働時間をかけて算出します。
仮にある月の所定労働時間が160時間で、時間外労働を10時間したとします。
そして、その10時間の全てが法定労働時間をこえている場合の時間外割増賃金は、1,563円×10時間=15,630円となります。
従って、その月の給料総額は、200,000円(基本給)+15,630円(時間外割増賃金)=215,630円となります。
では、今度は、基本給が全て歩合給で支給された場合の時間外割増賃金の計算方法についてご説明したいと思います。
先程と条件が同じで、ある月の所定労働時間が160時間で、時間外労働を10時間して、その月の歩合給の合計が20万円とします。
歩合給の場合の割増基礎単価は、先程のように基本給を1ヶ月の平均労働時間で割って時間給額へ換算するのではなく、歩合給の額を総労働時間で割って時間額を算出します。
この月の総労働時間は、160時間+10時間=170時間となりますので、200,000円÷170時間=1,175円が1時間当たりの歩合給額となります。
そして、この1,175円に割増率をかけるのですが、歩合給の場合には、1.25ではなく、0.25をかけます。
先程の月給の場合における時間外労働10時間には、元々全く給料が支給されていませんでしたが、歩合給の場合には、歩合総額と総労働時間を基に時間給額換算するため、時間外労働10時間には、1.0に該当する部分は、給料総額に含まれると考えられます。
従って、割増基礎単価は、1,175円×0.25=294円となり、時間外割増賃金は、10時間×294円=2,940円となります。
従って、給料総額は、200,000円(歩合給)+2940円(時間外割増賃金)=202,940円となります。
このように、歩合給の場合の時間外割増賃金は、その月の総労働時間を基に時間給額に換算して計算することとなります。
▼就業規則の見直しをご検討の方はこちら
【ここがポイント】
では、次に少し複雑となりますが、月給のように固定給と歩合給が同時に支給される場合の時間外割増賃金の計算方法についてご説明したいと思います。
労働時間については先程と同じ条件で、1ヶ月の平均労働時間が160時間で、ある月の所定労働時間が160時間で、時間外労働時間が10時間で、その全てが法定労働時間を超えていたとします。
給料は月給20万円で、歩合給が5万円とします。
このように月給と歩合給が同時に支給されている場合には、分けて時間外割増賃金を計算します。
月給部分については、先程と同じで、200,000円÷160時間(1か月の平均労働時間)×1.25×10時間(時間外労働時間)=15,630円となります。
歩合給については、総労働時間で計算するので、50,000円÷170時間(総労働時間)×0.25×10時間(時間外労働時間)=736円となります。
従って、時間外割増賃金の合計は、15,630円+736円=16,366円となります。
このように時間外割増賃金は、通常は1ヶ月の平均労働時間を基に月給額を時間給額に換算しますが、歩合給については、総労働時間を基に時間給額に換算します。
また、歩合給の場合には割増率を1.25ではなく、0.25で計算する点にもご注意下さい。(割増率を2割5分増とした場合)
▼就業規則の見直しをご検討の方はこちら