Q 男性社員のみに家族手当を支給するのは法律違反ですか?
【質問】
先日、当社の女性社員から「夫が病気で自宅療養することとなり、自分が夫を扶養することとなったので家族手当を支給して欲しい」との申し出がありました。
当社の就業規則を確認したところ、家族手当を支給する扶養家族を、①同居の妻 ②同居の18歳未満の実子 となっていました。
同居の夫は、家族手当の対象扶養家族には該当しないため、家族手当は支給されない、と返答したところ、「それは男女差別で労働基準法違反である」と言われました。
手当の支給に関する特段の法律は無いため、支給額や支給基準は自由に定めても良いと聞いていたのですが、本当に労働基準法違反となるのでしょうか?
【回答】
夫のみに家族手当を支給して、妻に支給しないのは、労働者が女性であることを理由に男性との賃金差別を禁止している労働基準法第4条に違反することとなります。
【解説】
確かにご質問の中にあるように、手当に関しては特別な法律が無いため、どのよう手当をどのような基準で支給するかは、経営者の自由とされています。
しかし、当然ながら他の法律に違反していないことが前提となります。
今回のご質問の場合、家族手当を夫が妻を扶養している場合にのみに支給して、妻が夫を扶養している場合には支給しないのは、労働者が女性であるという理由だけで男性と賃金について差別的な取扱いをしていることとなります。
労働基準法第4条では、「労働者が女性であると理由として、賃金について男性と差別的取り扱いをしてはならない」とあります。
従って、今回のご質問の場合、男性社員のみに家族手当を支給する何か合理的な特別の理由があれば良いのですが、特別そのような理由がなく、単に「妻は扶養される側」とか「女性社員は勤続年数が短いから」という従来の社会的通念のみによって、男性社員だけに家族手当を支給することは、労働基準法第4条違反となります。
なお、労働基準法第4条は、あくまで女性であることを理由で男性と賃金差別をすることを禁止しているのであって、実際の能力、技能等の差によって賃金に差をつけることは禁止されていません。
ちなみに、労働基準法第4条の差別的取り扱いは、不利に取り扱う場合だけではなく、有利に取り扱う場合も含まれます。
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【ここがポイント】
ところで、労働基準法第4条に違反した場合には、6ヶ月以下の懲役又は30万以下の罰金が課せられます。
しかし、これは現実に差別的な取り扱いを行った場合に成立するため、単に就業規則に差別的な取り扱い規定を定めただけでは、法律違反とはなりません。
ですから、今回のご質問のケースでは、まだ、法律違反が成立する前の段階と考えられますので、女性社員の申し出の通りに家族手当を支給し、また就業規則も差別的な取り扱いにならないような規定内容に至急変更する必要があります。
ちなみに、変更内容としては、①の「同居の妻」を「同居の配偶者」とするなどが考えられるかと思います。
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