Q フレックスタイム制度は本当にメリットが大きいですか?

【質問】

 

当社では、従来から慢性的な長時間労働が問題となっております。

 

特に近年、世間でも過労死が大きな社会的な問題となっており、当社でも、万一のことが起こってしまったら、と心配しています。

 

そのため、何らかの対策を講じなければと思っていたのですが、先日、ある業界紙に、フレックスタイム制度で労働時間削減に成功した会社の事例が掲載されていました。

 

フレックスタイム制度を導入すれば、本当に労働時間を減らすことができるのでしょうか?

 

【回答】

 

確かにフレックスタイム制度には、労働時間削減の効果が期待できます。

 

しかし、フレックスタイム制度には制約もあり、業種によっては、デメリットが大きくなってしまう場合あります。

 

【解説】

 

フレックタイム制度とは、簡単に言えば、一定期間において必要な時間働けば、出社と退社の時間を自由に決めることができる制度です。

 

例えば、ある月の勤務日が20日とし、その月の労働時間を160時間とした場合、トータルで160時間労働すれば、各勤務日の出社、退社時間は労働者が自由に決めることができる制度です。

 

 

では、何故、フレックスタイム制度が、労働時間削減に繋がるのか、1つ事例をお話ししたいと思います。

 

ある社員が、午後1時に取引先から資料をもらい、その資料を基に業務を行う予定だったとします。

 

しかし、取引先が何らかの事情でその資料を届けるのが、翌日の午前9時となってしまった場合、その社員は、業務をストップせざる得なくなります。

 

ところで、その社員の勤務時間が、午前9時から午後6時と決められていれば、午後6時までは会社にいる必要があります。

 

もちろん、他の仕事をすれば良い、という考えもありますが、その業務が、その時点でその社員にとってのメインの業務であれば、生産性を考えれば、午後6時までの生産性は、決して高いものではありません。

 

 

さらに、その日に業務が出来なかったわけですから、当然、翌日は時間外労働の可能性が高くなります。

 

もし、仮に翌日5時間の時間外労働をすれば、2日間でトータル21時間の労働を強いられることとなります。(休憩時間を午後12時から午後1時までの1時間と仮定します。)

 

しかし、もし、フレックスタイム制度で、当日午後1時に退社すれば、翌日、午後11時まで働いても、労働時間は、16時間となります。

 

このような場合、フレックスタイム制度であれば、社員の労働時間も削減され、生産性も高まり、さらに時間外割増賃金が不要となるため、人件費削減に繋がります。

 

 

もちろん、上記は、あくまで極度に単純化したケースですが、出社や退社時間を社員が、自由に決めることができれば、労働時間の削減は、様々な場面で考えられるかと思います。

 

ですから、この視点から考えれば、フレックスタイム制度のメリットは、非常に大きいと言えます。

 

 


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【ここがポイント】

 

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しかし、フレックスタイム制度には、デメリットとも言える面もあります。

 

社員が、出退社の時間を自由に決めることができる、ということは、逆に言えば、会社は、出退社の時刻を命じることができないこととなります。

 

ですから、例えば、「午前11時から全体会議を行うから必ず全員出席するように」というような命令は法律違反となってしまいます。

 

 

そのため、法律では、そのようなデメリットを解消するために、フレックスタイム制度であっても、必ず勤務していなければならない「コアタイム」という時間帯を設定することができます。(ちなみに、コアタイム以外の時間帯をフレキシブルタイムと言います。)

 

つまり、会議等の命令が必要な業務が全てコアタイム中に行われれば、フレックスタイム制度の効果は期待できるかと思います。

 

 

ところで、「それならば、コアタイムを長くすれば良いのでは?」といった疑問が出るかと思います。

 

コアタイムについては、何時間までという法律の規定はありませんが、コアタイムがあまりに長ければ、そもそもフレックスタイム制度を導入する意味が無くなってしまいます。

 

 

また、フレックスタイム制度では、社員同士のコミュニケーションが取りにくくなってしまう可能性もあります。

 

その結果、引き続きができなかったり、緊急事態が起こった時に直ぐに連絡が取れなかったりなどにより業務に支障が出てしまう場合も考えられます。

 

 

つまり、フレックスタイム制度は、導入できる業種や会社規模がどうしても限られてしまうことは否めません。

 

そのため、フレックスタイム制度を導入する際には、制度のメリット、デメリットを正しく理解し、自社において業務に支障が生じないかを十分に検討する必要があります。

 

 


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