Q 半日有給休暇を取得した日の残業代の計算方法は?

【質問】

 

当社の所定労働時間は、午前9時から午後6時で、休憩時間は午後12時から午後1時までの1時間で、所定労働時間が8時間となっています。

 

先日、半日有給休暇を午前中に取得した労働者が、午後6時を超えて午後9時までの3時間、時間外労働をしました。

 

有給休暇は、通常の賃金が支払われるため、通常に労働したとみなして午後6時以降は割増賃金を支払う必要はあるのでしょうか?

 

なお、午前半日有給休暇を取得した場合には午後2時から、午後半日有給休暇を取得した場合には、午後1時まで勤務してもらっています。

 

 

【回答】

 

割増賃金の支払いは、あくまで実労働時間が法定労働時間を超えた場合に必要となりますので、今回のご質問のケースでは、実労働時間が8時間を超えていないので、割増賃金の支払いは必要ありません。

 

ただし、午後6時を超えた労働に対する賃金の支払いは必要となります。

 

 

【解説】

 

労働基準法により、法定労働時間を超えた場合には、2割5分増以上の割増賃金の支払いが必要なります。

 

ただし、法定労働時間を超えての労働か否かの判断は、会社内での始業、終業時刻を基に計算されるのではなく、あくまで実際に労働した時間によって計算されます。

 

 

今回のご質問の場合、午前中に有給休暇を取得したとのことですので、午前中についての賃金は、通常通りに支払われますが、実際には労働していません。

 

仮に、ご質問の労働者の方が、午後2時から出社された場合、実際の労働した時間は、終業時刻の午後6時以降の労働を加算しても7時間となります。

 

従って、1日の法定労働時間である8時間を超えていないので、午後6時以降の3時間の労働について割増賃金の支払いは必要ありません。

 

 

ただし、実際に労働してるため、その時間に対する賃金の支払いは必要となります。

 

仮に、この労働者の方の時給単価が1,000円であれば、1,000円×3時間=3,000円の割増が付かない時間外手当を支払う必要があります。

 

 

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【ここがポイント】

 

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半日有給休暇取得した日に終了時刻を超えて労働した場合には、上記のケース以外にも実務上ではいろいろケースが考えられます。

 

ここではいくつかのケースをご紹介したいと思います。

 

なお、内容をご理解しやすいように、時間単価は全て1,000円で計算し、割増率は、時間外割増、深夜割増共に2割5分増とします。

 

 

① 午前半日有給休暇を取得して午後2時に出社し、午後11時まで時間外労働したケース

 

この場合、午後2時からの労働時間が、9時間なので1時間分の時間外割増賃金が必要となり、午後10時以降2時間労働しているので、2時間分の深夜割増賃金が必要となります。

 

具体的には、

 

午後6時から午後11時間までの基本賃金

5時間×1,000円=5,000円

 

午後10時から午後11時までの時間外割増賃金

1時間×1,000円×0.25=250円

 

午後10時から午後11時までの深夜割増賃金

1時間×1,000円×0.25=250円

 

となり、通常の賃金以外に、合計で5,500円の支払いが必要となります。

 

 

② 午前半日有給休暇を取得して、午前11時に出社し、午後12時から休憩1時間取得後、午後1時から午後9時まで時間外労働したケース

 

有給休暇は、本来は日単位で取得すべきものですが、半日単位で取得したとしても差支えないとされています。(なお、時間単位で有給休暇を取得することも可能ですが、労使協定の締結が必要となります。)

 

今回の場合、労働者は午後1時まで有給休暇を取得する権利あったのですが、労働者の意思により午前11時に出社することは法律上問題ありません。

 

ただ、この場合でも、有給休暇は、半日分消化されたとされます。

 

 

ところで、このような場合でも、割増賃金の支払い有無の判断は、実際に労働した時間で計算されます。

 

このケースでは、終業時刻ある午後6時までの実際に労働時間は、6時間となります。

 

ですから、午後6時から午後9時までの3時間を合計すると9時間となりますので、1時間、法定労働時間を超えていますので、この1時間に対して時間外割増賃金が必要となります。

 

結果的に、通常の賃金以外に支払う賃金は、

 

午後6時から午後9時間までの基本賃金

3時間×1,000円=3,000円

 

午後8時から午後9時間までの時間外割増賃金

1時間×1,000円×0.25=250円

 

で、合計3,250円の支払いが必要となります。

 

 

③ 上記のケースで午後11時まで労働していたケース

 

この場合には、午後6時以降の労働時間が5時間ですので、1日の労働時間は11時間となり、その内、午後8時から午後11時までの3時間が時間外労働で、午後10時から午後11時までの1時間が深夜労働となります。

 

従って、午後6時以降に支払う賃金は、

 

午後6時から午後11時間までの基本賃金

5時間×1,000円=5,000円

 

午後8時から午後11時までの時間外割増賃金

3時間×1,000円×0.25=750円

 

午後10時から午後11時までの深夜割増賃金

1時間×1,000円×0.25=250円

 

となり、合計で6,000円の支払いが必要となります。

 

 

なお、このような考え方は、遅刻をして残業した場合も同じとなります

 

例えば、ご質問の会社のように、所定労働時間が8時間の会社で、2時間遅刻をして、終業時刻を2時間超えて労働しても、実労働時間は8時間ですので、終業時効を超えての労働に割増賃金を支払う必要はありません。

 

ちなみに、上記のケースでは、遅刻の2時間と終業時刻を超えての2時間が相殺され、結果的に通常の労働した場合と同じとなります。

 


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