平均賃金の最低保障額

【説明】


賃金が、労働した日、時間によって算定され又は出来高制その他請負制によって定められている場合には、賃金総額をその期間中労働した日数(総暦日数でなく実際に出勤した日の総数)で除した金額の60/100を最低保障額としています。

 

 

【ここがポイント!】


なぜ、最低保証額制度が設けられているかと言いますと、賃金が日給、時間給、請負給で支払われている場合には、平均賃金の算定期間中(賃金締切日がある場合は、その以降3ヶ月間)に、休日や欠勤日数が多ければ、平均賃金が、減少してしまう場合が考えられるので、上記の特例の計算方法で、最低保障額が定められています。


例えば、賃金締切日が、毎月月末で、時間給の労働者を6月20日に休業させ、休業手当を支払う場合で、3月の賃金が75,000円、労働日数15日、4月の賃金が62,000円、労働日数が12日、5月の賃金が35,000円、労働日数が10日の場合で考えたいと思います。


まず、原則的な平均賃金の計算方法で計算しますと、賃金締切日以降3ヶ月間の賃金総額を総暦日数で除します。


(75,000円+62,000円+35,000円)÷(31日+30日+31日)=1,869円95銭となります。

 

 

次に最低保障額の計算方法、3ヶ月間の賃金総額を労働日数で除した額の60/100を計算してみます。


(75,000円+62,000円+35,000円)÷(15日+12日+10日)×60/100=2,789円18銭となり、原則的な計算方法で算出された額を上回り、この場合の平均賃金は、2,789円18銭を用いることとなります。


ちなみに、特例の計算方法で計算した額より、原則的な計算方法で算出された額の方が多ければ、当然原則的な計算方法で算出された額が平均賃金となります。


また、上記の特例は、あくまで賃金が、日給、請負給、時給で定められている場合で、日給月給、月給の場合は月で賃金が定められているので、原則的な計算方法で算出された額が平均賃金となります。

 

 

ところで、日給月給の労働者でも残業代は、時間を基に支払われますし、通勤費も労働日数によって支払われる場合もあります。

 

つまり、賃金は、月を基に計算される賃金や日や時間を基に計算される賃金が、混在して支払われる場合は決して珍しくありません。

 

賃金が、月給と時間給、日給等が混在している場合には、月給の部分と時間給、日給等の部分と分けて最低保障額を計算します。

 

 

このような月給等と時間給等が混在する場合の平均賃金の計算は以下となります。


先程と同じ例で、賃金締切日が月末で、基本給が150,000円で、6月20日に休業手当を支払うとします。


そして3月、4月、5月の労働日数がそれぞれ20日、毎月残業代が10,000円支払われたとします。

 

 

まず、原則的な計算で平均賃金を算出します。


毎月の支払総額は、基本給プラス残業代で160,000円となり、3ヶ月間では、480,000円、3ヶ月間の総暦日数は、92日ですので、480,000円÷92日=5,217円39銭となります。

 

 

次に最低保障額を計算します。このように月給と時間給が混在している場合には、まず月給の部分を原則的な計算方法で算出します。

 

つまり、毎月の月給部分は150,000円ですので、3ヶ月間の総額は、450,000円となり、それを総暦日数の92日で割ります。


450,000円÷92日=4,891円30銭となります。

 

 

次に時間給部分を先程お話した特例の計算方法で算出します。


つまり、時間給部分は毎月10,000円なので、その3ヶ月間の総計は、30,000円となります。それを3ヶ月間の総労働日数で割ります。


3ヶ月間の総労働日数は、20日×3ヶ月=60日となり、30,000円÷60日=500円となります。


これを先程、算出した月給部分の4,891円30銭と合算します。


4,891円30銭+500円=5,391円30銭となり、これが最低保障額となります。

 

 

先程、原則的な計算方法で算出した5,217円39銭を上回りますので、この場合に平均賃金は、5,391円30銭となります。


このように月給等と時間給等が混在する場合には、まず賃金の総額を基に原則的な計算方法で平均賃金を算出し、次に月給等の部分と時間給等の部分を分けて最低保証額を算出し、原則的な方法で算出した平均賃金との額を比較します。


少し複雑な計算となりますが、ご理解いただけたでしょうか?

 

 

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