就業規則の届出と意見書について

労働基準法により、常時雇用する労働者数が10人以上の事業場は、就業規則を作成する必要があります。

 

そして、その作成した就業規則を、労働者の過半数で組織する労働組合がある場合においてはその労働組合、労働者の過半数で組織する労働組合がない場合においては労働者の過半数を代表する者の意見書を添付し、所轄労働基準監督署に届出る必要があります。

 

就業規則を作成し、所轄労働基準監督署に届出る際には、注意すべきポイントがいくつかあります。

 

本ブログでは、就業規則作成後の届出の流れと注意点についてわかりやすく解説していきます。

 

就業規則の届出を行う場合の重要なポイントは、届出先と意見書の添付となります。

 

では、まず初めに就業規則の届出先についてご説明したいと思います。

 

 

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就業規則の届出先、所轄労働基準監督署とは?

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冒頭にも書きましたが、常時雇用する労働者数が10人以上の事業場は、就業規則を作成する必要があります。

 

ここで注意すべき点は、「事業場」です。

 

事業場とは、本社、支社、営業所、工場といった、各事業組織の1つのまとまりです。

 

就業規則の作成は、会社単位ではなく、事業場単位となります。

 

従って、本社以外に支社、営業所、工場等を有していて、それぞれが、常時10人以上の労働者が雇用されていれば、各支社、営業所、工場等ごとに就業規則を作成する必要があり、それぞれ届出る必要があります。

 

 

ここで注意すべき点は、届出先は、本社を管轄する労働基準監督署ではなく、各事業場を管轄する労働基準監督署となります。

 

例えば、本社が東京の新宿区にあり、支社が、横浜市にあれば、本社の就業規則は、新宿を管轄する労働基準監督署へ届出て、支社の就業規則の届出先は、横浜市を管轄する労働基準監督署となります。

 

なお、各事業場の就業規則の内容が同一の場合には、本社一括で届出ることも可能ですが、ここでの説明は割愛させていただきます。

 

届出書の様式について

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就業規則を届出る場合には、就業規則届を作成し添付する必要があります。

 

ところで、就業規則届には、決まった様式はないので、事業場の名称、所在地、使用者名、労働者数等の必要な事項が記載されていれば、書式は自由とされています。

 

参考に東京労働局のホームページに公開されているものをご紹介します。

 

>>就業規則(変更)届 (東京労働局)

 

 

ちなみに、名称が、就業規則(変更)届となっていますが、これは、就業規則の内容を変更した場合にも、届け出書が必要となるためです。

 

ですから、東京労働局の様式には、変更内容を記載する欄がありますが、就業規則を新規に作成して、届出る場合には記入する必要はありません。

 

では、次に意見書についてご説明したいと思います。

 

意見書について

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先にもお話ししましたように、就業規則を作成した場合には労働者の過半数で組織する労働組合がある場合においてはその労働組合、労働者の過半数で組織する労働組合がない場合においては労働者の過半数を代表する者の意見書を添付し、所轄労働基準監督署に届出る必要があります。

 

つまり、就業規則を作成した場合には、その内容について労働組合又は労働者代表の意見を聴取する必要があり、その意見内容を記した書類(意見書)を添付する必要があります。

 

 

ところで、この意見書を作成する際には、いくつか注意すべき点がありますので、詳しくご説明していきたいと思老います。

 

同意は必要ない

まず、意見書を作成する場合には、労働組合又は労働者代表のあくまで意見を聞けば良いのであって、同意まで得る必要ありません。

 

従って、意見書に作成した就業規則に対して反対の意見が記されていた場合であっても、就業規則の効力には影響はなく、労働基準監督署も何の問題もなく受理してくれます。

 

意見聴取に協力してくれない場合

就業規則を作成し、労働組合又は労働者代表に意見を求めた場合に、意見聴取に協力してくれない場合も考えられます。

 

このような場合には、労働組合又は労働者代表に意見を求めたが、協力を得られなかった等の旨を記した報告書を添付すれば届出ができます。

 

意見書の様式について

意見書の様式についても、任意様式とされていますので、必要な事項が記載されていれば、自由に作成していただければ結構です。

 

参考に届け出書と同じ東京労働局のものをご紹介します。

 

>>就業規則意見書(東京労働局)

 

労働者の過半数を代表する者について

作成した就業規則の意見を聞く場合、労働者の過半数で組織する労働組合がある場合には、その労働組合に意見を聞けば良いのですが、労働組合が無い場合には、労働者の過半数を代表する者を選出する必要があります。

 

ここで注意しなければならないのは、労働者代表は、労働者が選ぶものですので、経営者が選ぶことは、当然許できません。

 

また、他の労働者を監督又は管理する立場にある、いわゆる管理監督者は、原則、労働者代表となることはできません。

 

ただし、事業場に管理監督者しかいない場合も考えられますので、そのような場合には、例外的に管理監督者であっても労働者代表となることができます。

 

労働者の過半数を代表する者の選出方法

労働者の過半数を代表する者に関して重要なポイントなるのが、選出方法です。

 

選出方法については、特段法律で定めはありませんが、民主的な方法で行われる必要があります。

 

労働者代表の選出方法の具体的方法としては、

 

①労働者らによる投票

②労働者らによる挙手

③労働者らによる話し合い

 

などが考えられます。

 

 

また、労働者代表を選出する場合には、必ずしも1ヶ所に労働者を集める必要はなく、回覧方式やインターネット等を利用しての投票等であっても、民主的な方法で選出さえされれば可能となります。

 

民主的な選出方法の重要性について

ところで、近年、労働者の過半数を代表の選出方法が、重要視されてきています。

 

労働者代表の者の意見聴取は、労働基準法に規定されているため、就業規則の成立要件とも言えます。

 

その労働者の選出方法が、不適切であった場合には、就業規則効力そのものにも影響を及ぼしてしまいます。

 

 

また、厚生労働省も、労働者代表を選出する場合には、「就業規則の作成変更の際に使用者から意見を聴取される労働者を選出することを明らかにして行われる投票、挙手などの方法による手続により選出された者であり、使用者の意向によって選出されたものではないこと」といった通達を出しています。

 

昨年の12月(平成29年)に厚生労働者では、このようなリーフレットを作成しました。

 

 

このリーフレットは、36協定締結時に関するものですが、労働者代表の選出方法についての考え方は、就業規則の場合も同じです。

 

このようなことからも、国が、労働者代表の選出方法について、重要視していることが伺えますので、労働者代表を選出する場合には、正しい選出方法で行うようにして下さい。

 

 

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意見書における反対意見と不利益変更との関係について

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これまでご説明してきたように、労働組合又は労働者を代表する者が、就業規則に対して反対の意見を述べたとしても、就業規則の効力には影響を及ぼしません。

 

となると、就業規則の内容は、会社が一方的に決めても何の問題も無い、と思われるかもしれません。

 

 

しかし、それは、大きな誤解です。

 

少し法律的な話となりますが、ここは、非常に重要なポイントなので詳しくご説明したいと思います。

 

不利益変更には労働基準法以外の問題が・・・

確かに、新規に就業規則を作成した場合には、基本的にはどのような内容で就業規則を作成しても、問題は無いと言えます。

 

しかし、就業規則は、作成後、変更を行うことがあります。

 

その変更内容が、法律改正によるものや、労働者にとって有利な変更内容であれば良いのですが、場合によって労働者にとって不利益な変更も考えられます。

 

 

例えば、現在支給されている手当を減額又は廃止、慶弔休暇や表彰制度の廃止、休職期間の短縮等、不利益な変更は数多く考えられます。

 

仮に、就業規則において、このような不利益変更を会社が行い、それに対して労働組合又は労働者を代表する者が、反対の意を唱えても、その反対の意見を記した意見書を添付して、所轄の労働基準監督署に届出れば、就業規則は有効となります。

 

 

しかし、これは、あくまで労働基準法上の話であって、不利益変更には、別の問題が生じる可能性があります。

 

就業規則に記載されている内容は、労働者にとって、義務であると同時に権利でもあります。

 

もし、労働者が、不利益変更について不服を申し立てた場合、不利益変更を行う理由の妥当性、正当性が争われることとなります。

 

つまり、就業規則の不利益変更は、民事的な問題が生じる可能性があるのです。

 

 

もし、不利益変更について、裁判等で争われ、その結果、会社側が負けてしまえば、労働基準法は有効であった不利益変更が、認められないこととなってしまいます。

 

ですから、就業規則の内容を労働者にとって不利益に変更する場合には、労働基準法だけでなく民法上の問題が起こる可能性があること理解する必要があります。

 

不利益な変更には労働者全員の同意を得る

しかし、例えば、財務的な問題により、手当を廃止するなど、現在の給与体系を見直さなければならない場合もあります。

 

確かに、現在の就業規則の内容を無理に維持したために会社が倒産でもしたら、それこそ本末転倒になってしまいます。

 

 

先程、不利益変更に対して、労働者が訴えを起こし、会社側が負ければ、不利益変更は、無効となります、と書きましたが、逆に言えば、会社側が勝てば、不利益変更であっても、有効となります。

 

つまり、不利益な変更する理由に妥当性、正当性が認められれば、不利益変更は可能となります。

 

となれば、不利益な変更をしなければならない余程の理由があるのであれば、会社が一方的に変更を行うことも一策かもしれませんが、理由の正当性、妥当性を判断するするのは、あくまで裁判等であって、会社が、余程の理由と考えていても、裁判等では、余程の理由とは判断されない場合があります。

 

 

となると、不利益変更を行うときに、トラブルを回避する最良の方法は、労働者全員の同意を得ることと言えます。

 

方法は、個別に同意を得るか、全体集会等を行って全員の同意を得る等いくつか考えられますが、いずれにしても、会社側が不利益な変更を行わなければならない理由を丁寧に説明して、誠意ある対応をすることが重要と言えます。

 

就業規則の届出手続きについて

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最後に就業規則の手続きについて簡単にご説明したいと思います。

 

就業規則を所轄労働基準監督署に届出る場合には、就業規則、届出書、意見書をそれぞれ2部作成し、一部会社の控えとし、受理印を押印してもらいます。

 

 

なお、届出書、意見者は正本を2部作成しても良いですし、正本を1部作成し、その写しに受理印をもらう形でもどちらでも可能です。

 

また、就業規則の届出は郵送でもできますが、その場合には、必ず切手を貼った返信用封筒を同封することを忘れないようにして下さい。

 

まとめ

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今回は、就業規則の届出と意見書を中心にお話ししました。

 

就業規則を届け出る際に、特に重要となるのが、意見聴取を行う労働者代表の選出方法です。

 

ブログでも書きましたが、近年、国も労働者代表の選出方法を重要視していますので、労働者代表を先取する際には十分ご注意下さい。

 

また、不利益な変更を行う場合に、労働基準法とは別に民法上の問題が起こる可能性があることもご注意下さい。

 

 

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