健康保険 ~標準報酬月額の決定~

【説明】

 

標準報酬月額の決定には、取得時決定、定時決定、随時改定の3種類があります。

 


【ここがポイント!】


健康保険の保険料は、標準報酬月額を基に算出されます。


ところで、この標準報酬月額ですが、これは保険料の算出の基だけでなく、各保険給付の給付額の算出の基礎としても使用されます。


ですから、健康保険の被保険者となった日から、保険給付を受ける可能性があるので、被保険者の資格を取得した時点で、標準報酬月額を決定する必要があります。

 

これを取得時決定と呼びます。

 


具体的な手続きですが、これは、被保険者資格を取得する際に、雇用契約書等によりその労働者に支払う1ヶ月間の賃金の総額を申し出て、その額により標準報酬月額が決定されます。なお、賃金の総額には、残業代等も含まれます。


資格取得時には、実際の賃金は支払われていないので、見込みの金額で申請することとなります。


ただし、申請額と実際に支給された賃金との間に差が生じた場合には、標準報酬月額の訂正が必要となる場合があります。

 

 

ところで、賃金の額は、時間外労働の量や昇給等で変化する場合が、当然考えられますので、標準報酬月額は、1年に1回、定期的に見直すこととされています。

 

これを定時決定と呼びます。

 

具体的には、4月、5月、6月に支払った給与額を、「算定基礎届」により届出て、その額によって、新たな標準報酬月額が決定されます。


ここで少し細かな点ですが、定時決定より決定された標準報酬月額は、その年の9月から適用されます。


つまり、定時決定された標準報酬月額は、翌年の8月まで適用されることとなります。


このように定時決定は、毎年行われます。


となると、先程お話しした取得時決定との関係ですが、取得時決定で決められた標準報酬月額は、定時決定が行われるまで有効となります。


ただし、6月1日から7月1日までに被保険者資格を取得した者については、定時決定を行わないこととなっていますので(6月に資格を取得した者は、6月に給与が支給されなければ、定時決定ができないこととなります。)、取得時決定で決められた標準報酬月額の有効期間は、その年の1月1日から5月31日までに資格時決定により決定された標準報酬月額はその年の8月まで、その年の6月1日から12月31日までに取得決定で決められた標準報酬月額は、翌年の8月までが有効期間となります。

 

 

しかし、有効期間内であっても、固定的賃金の変動や賃金形態の変動等があった場合には、標準報酬月額が、改定される場合があります。


これを随時改定と言います。


この随時改定は、非常に複雑な制度ですので、すべてをご説明することはできませんが、日常業務において重要なポイントでもありますので、いくつかのポイントについてお話ししていきたいと思います。

 

 

随時改定が行われるには大きく2つの条件があります。


まず、固定的賃金の変動や賃金形態の変更がある場合です。


固定的賃金の変動とは、基本給の増減や新たな手当の付与や逆に既存の手当が無くなる場合等を言います。


固定的賃金の変動は、額の大小は問わず、極端な例ですが、基本給が1円変動しても、「固定的賃金の変動があった」とみなされます。


また、賃金形態の変更とは、月給制から時給制へ、日給制から月給制へ等賃金の支払い方法の変更を言います。


ただし、随時改定は、固定的賃金の変動や賃金形態の変動等があった場合に、必ず行われるのではなく、固定的賃金の変動や賃金形態の変動等があった後、3ヶ月間の賃金の支払い状況によって判断されます。

 

 

そして、3ヶ月間の賃金総額の平均が、標準報酬月額で2等級以上の差が出た場合に行われます。


例えば、現在の標準報酬月額が20万円(17等級)として、何らかの固定的賃金に変動があり、変動があった後の3ヶ月間の賃金の平均が。26万円(20等級)とすると、17等級から20等級と2等級以上差が出ているの随時改定を行う必要があります。


ここで注意しなければならないのは、随時改定の対象となるかどうかの判断は、固定的賃金の変動等があった後、3ヶ月間の賃金総額の平均で判断されます。


賃金の総額ですので、当然残業代等も含まれます。


ですから、固定的賃金の変動額が、例えば、500円のように、固定的賃金の変動額そのものでは、標準報酬月額表で2等級以上の差が生じなくても、変動後3ヶ月間に支給された残業代等を含めて計算すると2等級以上差が出る場合には、随時改定の対象となってきます。

 

 

随時改定は、社会保険の調査では必ず調査される項目です。

 

万一、随時改定が、正しく行われていない場合には、溯って改定されます。


それに伴い、保険の不足が生じた場合には、当然、溯って保険料が徴収されてしまいますので、随時改定には、注意して下さい。


また、随時改定は、固定的賃金の変動等があった月からの3ヶ月において、すべての月で勤基礎日数が17日以上あることが必要です。


随時改定には、今回お話しした以外にも様々な規定がありますので、その都度行政官庁等でご確認下さい。

 

 

▼就業規則の見直しをご検討の方はこちら

>> オフィスまつもと 就業規則変更・作成サービス