雇用保険 ~失業等給付 失業の定義~
【説明】
「失業」は、被保険者が「離職」し、「労働の意思及び能力がある」にもかかわらず、「職業に就くことができない状態」を言います。
【ここがポイント!】
雇用保険制度の最大の目的は、労働者が失業した場合に、一定期間生活の安定を図るために必要な給付を行うことです。
となると、使用者サイドからみると、労働者が離職した後の話しとなり、直接使用者には関係の話しと思えるかもしれません。
しかし、離職した労働者が、給付を受ける権利を有するか否かを判断するのは、あくまで在職中の労働状況によりますし、また離職した労働者にとっては、非常に重要な問題でもありますので、トラブルも起こりやすいと言えます。
ですから、使用者としても、正しく法律を理解する必要があります。
ただ、雇用保険の給付制度は非常に複雑で多岐に渡りますので、ここでは業務上必要なポイントだけをお話ししていきたいと思います。
ところで、先程も書きましたように、雇用保険制度の最大の目的は、労働者が「失業」した場合に、一定期間生活の安定を図るために必要な給付を行うことです。
つまり、給付を受ける前提として、「失業」していることが必要です。
ここでは、まず「失業」の定義についてお話ししたいと思います。
「失業」の定義ですが、大きくポイントが3つあります。
それは、「離職している」「労働の意思及び能力を有する」「職業に就くことができない状態」です。
まず、当然ですが、「離職」している必要があります。
「離職」とは、事業主との雇用関係が終了していることを言います。
ですから、長期に欠勤している場合であっても、事業主との雇用契約が終了していなければ、「離職」とはなりません。
ですから、少し極端な例ですが、退職の意思を明示せずに無断欠勤を続けていた労働者が、自分では辞職したつもりでいても、事業主がそれを認めなけば、雇用関係が終了したとは言えないので、その労働者は、給付を受けることができないこととなってしまいます。
次に、「労働の意思」ですが、これは就職する積極的な意思を言います。
わかりやすく言えば働きたい意思です。
逆に言えば、働く意思が無い場合には、離職していても、雇用保険上は、「失業」とはならないのです。
となると、厳密にいえば、結婚退社後専業主婦になることを決めている労働者や定年退職再就職の意思が無い労働者は、失業状態とはならないので、会社を辞めても本来は給付を受けることはできないこととなります。
次に、「労働の能力」ですが、これは精神的、肉体的及び環境上の能力を言います。
つまり、どんなに「労働の意思」があっても、精神的や肉体的に病んでいて、適正な労働を提供するだけの能力が無ければ、「失業」とは認定されないのです。
また、心身は健康であっても、家庭の事情等で適正な労働が提供できない場合なども「労働の能力」を有しているとはみなされないこととなります。
最後に、「職業に就くことができない状態」とは、就職に関してハローワーク等で求職の申し込み行うなどの努力はしているが、就職できない状態を言います。
つまり、どんなに「労働の意思及び能力」があっても、実際に就職するための努力を行う必要があるのです。
これまでお話ししてきましたポイントをすべて満たして初めて「失業」と認定されることとなります。
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