雇用保険 ~失業等給付 受給資格について③~
【説明】
離職日以前2年間に疾病、出産等で30日以上賃金の支払いが無い期間がある場合には、その期間を加算することができます。
【ここがポイント】
ここでは「算定対象期間の緩和」について具体例を挙げてお話ししたいと思います。
ある従業員が、平成26年4月1日に雇用保険に加入し、平成30年3月31日に本人の都合で離職したとします。
この従業員が、基本手当の受給資格を得るには、離職日以前2年間に賃金の支払いの基礎となった日数が11日以上ある月が12ヶ月以上必要となります。
通常であれば、雇用保険の加入期間が4年ありますので、その間長期の欠勤等がなければ基本手当の受給資格を得ることができます。
しかし、仮にこの労働者が、平成28年10月1日から離職日の平成30年3月31日まで疾病等で欠勤していて賃金が支払われていなかったとします。
仮に平成28年10月1日以前は、欠勤もなく出勤したとすると、離職日以前2年間に賃金の支払いの基礎となった日数が11日以上ある月は、平成28年4月1日から9月30日までの6ヶ月となってしまい本来なら基本手当の受給資格を得ることはできなくなります。
しかし、疾病等で30日以上賃金の支払いがなかったために、「算定対象期間の緩和」に該当します。
従って、離職日以前2年間に、30日以上賃金の支払いがなかった期間、ここで言えば、1年6ヶ月間を加算することができます。
つまり、平成26年10月1日から離職日までの平成30年3月31日までの3年6ヶ月間で算定対象期間を計算することとなります。
つまり、先程書きましたように、平成28年4月1日から10月1日までの6ヶ月が賃金の支払い日数が11日ある月に該当しますので、結果的には、平成26年10月1日から平成28年3月31日までの期間(つまり延長加算した期間に相当します)内に、賃金の支払い基礎日数が11日以上ある月が6ヶ月以上あれば、基本手当の受給資格の要件を満たすこととなります。
少し分かり難いところもありますが、まずはイメージをつかんでいただければ良いかと思います。
ただし、ここで注意しなければならないのは、「算定対象期間の緩和」に該当する事由であっても、無条件に「算定対象期間の緩和」の適用を受けられるわけではありません。
その事実を証明する書類等の添付が必要となってきます。
出産や事業所の休業の場合は、その事実を証明するのは比較的容易と言えます。
また、疾病や負傷の場合でも、労災事故の場合は、労災保険への休業補償の申請書等でその事実を証明できます。
また、業務以外の疾病や負傷の場合でも、後に詳しくご説明しますが、健康保険の傷病手当金等を申請していれば、その申請書の控え等でその事実を証明することが可能です。
問題となってくるのは、業務以外の疾病や負傷で休業していて、健康保険の傷病手当金等の申請を行っていない場合です。
通常は、医師等の診断書等でその事実を証明することとなるのですが、通院等をしていなくて医師の証明等が入手できない場合には、証明するものが何も無い状態となってしまいます。
このような場合には、たとえ、実際に疾病や負傷で休業していて賃金の支払いを受けていなくても、「算定対象期間の緩和」の適用を受けることができなくなってしまいます。
ですから、雇用保険の被保険者が、業務以外の疾病や負傷で休業していて、健康保険の傷病手当金等の申請をしない場合には、定期的に病院に通院することをアドバイスすると良いと言えます。
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