Q 「月給」と「日給月給」とは何が違うのですか?
【質問】
当社の社員は、現在パートタイマーやアルバイトのみで、全員給与は時間給で支給しています。
しかし、今後の事業発展を考え、正社員を雇用することを考えています。
正社員であれば、給与は、当然月額で支給しなければならないのでしょうが、先日、同業者の社長さんから、月額制の給与には、「月給」と「日給月給」の2つがあるので、どちらで支給するのか、はっきりさせておかないと後でトラブルになってしまうから気を付けるようにアドバイスされました。
給与を月額で払うのだから、1ヶ月の額を〇〇万円と決めるだけで良いと思っていたのですが、「月給」と「日給月給」とでは、何が違うのですか?
【回答】
「月給」も「日給月給」も、月を単位で給与額が決められる点は同じですが、一般的に「月給」の場合は、欠勤等があっても給与控除されませんが、「日給月給」の場合には、欠勤等をした場合には、その分の給与が控除されます。
【解説】
まず、ご質問の回答の解説に入る前に、ご質問の中で1点誤解されているところがありますので、その点について解説したいと思います。
「正社員であれば、給与は、当然月額で支給しなければならないのでしょうが・・・」とありますが、元々、正社員やパートタイマーといった言葉は、法律用語ではなく、法律で正社員やパートタイマー等の定義が明確に規定されているわけではありません。
つまり、正社員やパートタイマーといった言葉は、労働者を区分するために便宜的に使用されているに過ぎず、どのような労働者を正社員とするかは、各会社が自由に決めれば良いのです。
ですから、正社員だから給与を必ずしも月額制にする必要はありません。
では、ご質問の「月給」と「日給月給」の違いについて解説していきたいと思います。
最初に1点お断りさせていただきますが、実は、この「月給」と「日給月給」も法律で明確に定義されているわけではありません。
従って、これからご説明させていただく内容は、一般的に解釈されている内容であって、会社によっては異なった解釈で使用している場合もあるかもしれませんのでその点はご了承下さい。
「月給」も「日給月給」も月額で給与を支給する点は同じなのですが、「月給」は、計算の単位を初めから月を単位としてします。
それに対して「日給月給」は、計算単位は、あくまで1日であって、1日1日を積み重ねて1ヶ月分まとめて支給する考えが根底にあります。
ただし、単純に勤務日数分の給与を支払うのであれば、日給制となってしまい、月によって給与額が変動してしまうので、計算業務の効率化と給与額が固定化することによる労働者の生活の安定化を図るために、月によって勤務日が異なっていても、給与の額が、月額〇〇万円と固定額で支給されます。
「月給」と「日給月給」とでは、給与の計算単位の考え方が違うため、欠勤、早退、遅刻があった場合の給与の計算方法が異なってきます。
「月給」の場合は、計算の単位を月としているため、1ヶ月の間に欠勤や遅刻、早退があっても予め決められた月額が支給されます。
それに対して、「日給月給」の場合には、元々、各勤務日の積み重ね、という考えに基づいているため、欠勤や遅刻、早退があればその分は加算されないないので、欠勤等の分については、月額から控除されて給与が支給されます。
また、同じような考えで、月の途中での入社あるいは退社の場合には、「月給」の場合には、日割り計算されることなく月額分の給与が支給され、「日給月給」の場合には、出勤日数等に応じて日割り計算されることとなります。
つまり、「日給月給」は、1ヶ月間における実際の出勤日数等によって、控除や日割り計算されるのに対して、「月給」は、1ヶ月間の出勤状況がどうであれ、決められた月額が支給されることとなります。
「月給」が、「完全月給」と呼ぶとイメージが掴みやすいかもしれません。
「月給」と「日給月給」との違いについては、お分かりになったかと思います。
ところで、ご質問の中に「月給か日給月給のどちらで支給するのか、はっきりさせておかないとトラブルになる。」とありましたが、実は、その通りなのです。
では、「月給」と「日給月給」をはっきりさせないで起きるトラブルとはどのようなものなのでしょう?
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【ここがポイント】
労働者を雇用する場合には、給与等の労働条件については、書面で通知しなければならないと労働基準法で規定されています。
しかし、残念ながら労働条件の通知を口約束程度で済ませてしまっている会社もまだまだあります。
もちろん、口頭での通知は法律違反ですが、それでもまだ口頭でも、「給与は、日給月給制で月額〇〇万円です。」と伝えていれば良いのですが、実際には、まず、そのようなことは無く「給与は、月〇〇万円です。」と言うのが普通かと思います。
「給与は、月〇〇万円」と言われた場合、「月給」「日給月給」のどちらなのでしょう?
一般的な労働者を雇用する場合には、通常は、経営者は、「日給月給」のつもりで「給与は、月〇〇万円」と言うでしょう。
しかし、労働者の方は、「月給」と受け取るかもしれません。
実は、これは大きなトラブルの原因になりかねないのです。
1つ事例でご説明したいと思います。
給与締切日が、月末締切りの会社で、口頭で月額30万円の条件で、4月20日に労働者を雇用したとします。
その労働者が、6月10日に退職した場合、給与はどうなるでしょうか?
もし、日給月給なら、単純計算で、4月20日から4月30日と6月1日から6月10日までは、それぞれ月の3分の1なので、それぞれ10万円で、5月分の30万円と合わせて、50万円となります。
しかし、もし、月給制なら、4月、5月、6月それぞれ30万円ずつ支払う必要がありますので、合計で90万円となります。
もし、労働者から90万円の請求があったら、契約時、「月額30万円」が、月給なのか日給月給なのか明確にしていないわけですから、明確に反論するもことができないわけです。
もし、裁判になれば、会社が敗訴してしまう可能性もゼロとは言い切れません。
このように、給与を月額で支給する場合、それが月給なのか日給月給なのかを明確にしておかないと大きなトラブルの原因となってしまうことがあります。
ですから、給与について書面で通知することはもちろんですが、月給か日給月給かの区別を通知の書面に必ず記載するようにして下さい。
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