シリーズ労働トラブル防止① 労働トラブル防止の重要性について

今回のシリーズでは、労働トラブルを防ぐために必要な法律知識の解説や労働トラブル防止に役立つノウハウやテクニック的なものをお話していきたいと思います。

 

私は、常々労働トラブルを防ぐことは、経営的にみても非常に重要なことと考えています。

 

ですから、まず最初に労働トラブル防止の重要性、必要性についてお話したいと思います。

労働トラブル 決して他人事ではありません

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まず最初に、現状労働トラブルが、どれくらい起こっているかをお話したいと思います。

 

実際に労働トラブルが起こっている正確な数字を統計している資料は、私が探した限りではありませんでしたが、1つの目安として厚生労働省が出している「総合労働相談件数の推移」を基にお話していきたいと思います。

 

 

総合労働相談件数とは、全国の労働基準監督署や各都道府県労働局に置かれた相談コーナーに寄せられた労働相談の件数です。

 

相談コーナーが、全国で379ヶ所置かれています。

 

この全国の相談コーナーに寄せられた労働相談の件数は、令和1年度では1,188,340件となっています。

 

そしてこの10年間は、110万件前後で推移しています。

 

この数字だけでは、相談件数が多いのか少ないのか、よく分からないかと思いますので、もう少し前の数字をご紹介したいと思います。

 

 

平成10年あたりから、相談件数が増え始め、平成14年度は、625,572件でした。

 

そして、その後も増え続け、平成20年に初めて100万件を超えました。

 

つまり、全国に寄せられた、労働相談の件数は、平成14年から約5年間で倍増したこととなります。

 

そして、その後は一度も100万件を下回っていません。

 

つまり、労働相談は、平成20年頃まで増え続け、その後は高止まりしている形となっています。

 

これからの数字から判断すると、現状での労働相談は、決して少なくない、むしろ多いと言ってよいかと思います。

 

 

さらに、この令和1年の1,188,340件の内訳を見てみますと、法令違反の疑いのもの、例えば、割増賃金が支払われていなかった、有給休暇を与えていなかった、このような労働基準法等の違反の疑いが196,272件ありました。

 

このような法令違反については、労働基準監督署は、必ずその事業所を調査そして指導します。

 

労働基準監督署の調査より、指導等が行われれば、改善するために時間と労力を要します。

 

そして、場合によっては、多額な未払いの割増賃金を支払わなければいけないケースも考えられます。

 

このような事態になれば、会社にとっては重大な労働トラブルとなります。

 

 

ところで、令和1年度の相談件数が、1,188,340件で、労働基準法等の法令違反の疑いがあるものが、196,272件ですので、残りの約100万件の相談は、いじめやセクハラ、パワハラそして解雇等の民事的な相談となります。

 

そして、この100万件のうち、紛争調整委員会によるあっせん等の行政機関が間に入って 紛争を解決した件数が15,061件となります。

 

つまり、先程の法令違反の疑いのある相談件数196,272件とこの15,061件を足すと、約21万件となり、全相談件数1,188,310件の約17%になります。

 

 

ただ、ここで注意しなければいけないのがここの相談件数のうち、行政機関等によるあっせん等が行われた件数以外に、例えば、弁護士等を通じて裁判を起こしたあるいは裁判まで行かないまでも示談金や和解金を払って紛争を解決した、このような件数というのは、入っていないのです。

 

それらの数字は、正確には分からないのですが、仮にそのようなものを合わせて、労働相談件数からトラブルになった割合が20%とすれば、労働相談の5件に1件は、労働トラブルに発展していることとなります。

 

これは決して少ない数字ではありません。

 

むしろ、非常に多いと言えます。

 

つまり、労働トラブルというのは、どの事業所でも起こり得るもので、もしかしたら、明日あなた様の会社で労働トラブルが発生しても、何の不思議もないと言えるのです、

 

 

ところで、私もよくこのような話を経営者の方にするのですが、「会社始めて20年近くになりますが、その間、1度も労働トラブルなんて起きたことがないのですよ。」というように言われる経営者の方がいます。

 

確かに20年間も労働トラブルがなければ、それは、しっかりと労務管理を行っている証だと思います。

 

 

ただし、どんなにしっかり労務管理を行っていたとしても、時代が移り変わってくれば、以前では想像もできなかった労働トラブルが起こる可能性もあります。

 

例えば、これまで雇ったことがないタイプの労働者をたまたま雇ってしまったために、それが原因でトラブルになってしまう。

 

このようなことも考えられます。

 

 

ですから、これまで労働トラブルが起こらなかったからといって、今後も起こらないという保障はありません。

 

これを別のもので置き換えてみますとよくわかるかと思います。

 

 

例えば、常に安全運転を心掛けていて、長年無事故無違反だったとします。

 

しかし、どんなに長い期間無事故無違反であったとしても、必ず自動車保険は更新されるかと思います。

 

なぜなら、どんなに安全運転に心掛けていても、事故を起こしてしまう可能性は、絶対にゼロにはならないからです。

 

それがわかっているから、毎年自動車保険を更新するわけです。

 

 

労務管理も同じところがあります。

 

これまで何もなかったからといって、今後も労働トラブルが起こらない保障はありません。

 

ですから、労務管理の充実は、常にやり続けてより良いものにしていく、この努力は、必要不可欠になってくるかと思います。

 

なぜ、労働トラブル防止が重要なのか?

 

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ところで、実際に労働トラブルが起こってしまうと、大企業であれば総務部あるいは法務部等があるので、その担当者が、その起きてしまった労働トラブルの解決に当たります。

 

しかし、中小零細企業、特に零細企業においては、労働トラブルの解決に当たるのは、まず経営者になります。

 

労働トラブルが起きてしまうと、その解決には、大きな労力や時間を要する形となります。

 

 

ところで、経営者にとって、最も大切な仕事は、売上げを伸ばして経営を安定させることです。

 

しかし、労働トラブルが起こってしまうと、経営者の大切な労力や時間が、奪われてしまうこととなります。

 

これは企業にとっては、大きな損失なります。

 

 

さらに、ここを是非ご理解して頂きたいのですが、実際に労働トラブルが起きてしまうと、精神的な負担が、非常に大きくなります。

 

もし、突然退職した労働者の代理人と称する弁護士から損害賠償の請求が、来たとしたらどう思いますか?

 

当然、不安に思われるかと思います。

 

 

経営者は、常に経営に全精力を注がなければいけないわけです。

 

そのような時に、不安な精神状態になるということは、これは非常に大きなマイナスになります。

 

ですから、労働トラブルが起きるということは、労力や時間も精神的な負担、このような大きなマイナス要素が発生するわけです。

 

 

ところで、労務管理を充実させることは、直接売上の増大に結びつかないかもしれません。

 

しかし、労働トラブルを防止することで、経営者の大切な労力や時間が奪われることがなくなります。

 

そして、経営者も精神的な不安を負うこともなくなります。

 

つまり、労働トラブルを防止して、労務管理を充実させることは、間接的ですが経営に大きく貢献する形となります。

 

ですから、労働トラブルを防止することは、経営的に考えても非常に重要なことと言えます。

 

労働トラブル防止で最も重要なものとは?

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今回のシリーズでは、労働トラブル防止に役に立つノウハウやテクニック、法律の知識等をお届けしていきたいと思います。

 

ところで、労働トラブルを防止するために法律知識やノウハウ テクニックこのようなものは必要が、私は労働トラブルを防ぐ上でこれらとは全く別の視点で重要なものがあると考えています。

 

それはどういうことかと言いますと、当たり前のことを当たり前にやり続けるこの姿勢です。

 

実は、労働トラブルを防止するには、この姿勢が非常に重要となります。

 

 

ノウハウやテクニックの中には、一度方策を講じれば効果が 持続するものもありますが、ただ 多くのものはそれをやり続ける必要があります。

 

そのノウハウやテクニックは決して難しいものではありません。

 

しかし、やり続けることで初めて効果が出る、このような特徴となります。

 

具体的にどのような時に、この姿勢が必要かというのは、今後またご説明していきたいと思います。

 

ただ、ここでは、労働トラブル防止において、やり続ける姿勢が重要であるという点を押さえていただければと思います。

 

まとめ

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労働トラブルの防止、労務管理の充実は、その成果が見えずらいところがあります。

 

しかし、今回お話したように、労働トラブルを防止することは、経営的にみても非常に重要なことと言えます。

 

そして、労働トラブルを防ぐためには、決して難しいノウハウやテクニックは必要ありません。

 

必要なことをやり続ける、この姿勢が重要となります。

 

是非、今回のシリーズを今後の労務管理の充実にお役立て下さい。

 

 

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