シリーズ労災保険② このケガ労災使える?
今回のブログでは、労災保険の対象となる2つの条件について分かりやすく解説していきたいと思います。
なお、労災保険の目的は、労働者が、業務上の事由だけでなく通勤による事故等で病気またはケガを負った場合に、必要な保険給付を行います。
今回のブログでは、まず業務中に起こった事故で労働者が負傷等した場合に、労災保険が適用となる条件についてお話していきたいと思います。
ところで、業務中に起こった事故で労働者が負傷等し労災保険が適用となる事故の事を、業務災害、または労働災害と呼ばれます。
今回のブログでは、業務災害という言葉を使っていきたいと思います。
なお、通勤災害の適用条件につきましては、次々回のブログでご説明したいと思います。
業務遂行性について
では、業務災害と認められるための条件について、お話していきたいと思います。
労災保険では、業務災害として認められる、労災保険が適用される条件が2つ定められています。
それが、業務遂行性と業務起因性となります。
この2つの条件を満たしている場合に、労災保険を使えることができる形となります。
聞き慣れない非常に難しい言葉でが、わかりやすく解説していきたいと思います。
まず、業務遂行性についてご説明していきたいと思います。
業務遂行性とは、被災労働者(事故でケガ等を負った労働者のことを言います)が、労働契約に基づいて使用者(会社、経営者をイメージしていただければ結構です)の支配下にある状態を言います。
もう少しわかりや言いますと、使用者の指示、命令に従って仕事をしている状態をイメージしていただければ良いかと思います。
労働者が、事故等でケガ等をした場合に、使用者の支配下にある状態、使用者の指示、命令で仕事をしている場合には、業務遂行性が認められる形となります。
もう少し具体的にご説明していきたいと思います。
業務遂行性が認められる、基本的なケースとしては、会社内で仕事をしている場合です。
会社内であれば、使用者の支配下にある、使用者の指示、命令に従って仕事をしていることが、容易にイメージしていただけるかと思います。
ただ仕事というのは、必ずしも会社内だけで行われるものではありません。
営業社員が、営業回りやあるいは出張に行っている最中や、運送業で、労働者が荷物をトラック等で運んでいる場合も、使用者の指示、命令に従って仕事をしているわけですから、使用者の支配下にある状態と言えますので、当然に業務遂行性が認められる形となります。
また、昨今新型コロナウイルスの感染拡大により、テレワークで労働する労働者が増えています。
テレワークというのは、自宅やサテライトオフィス等、会社以外の場所で働く労働形態のことを言いますが、テレワークであっても、使用者の指示 命令に従って仕事をしているわけですから、たとえ自宅で仕事をしていたとしても、業務中は、当然使用者の支配下にあります。
ですから、例えば、テレワークで自宅で仕事をしていて、仕事で使うパソコンを修理していた時に、電気ショートを起こして火傷をしてしまった、このような場合でも、業務遂行性が認められる形となります。
経営者の方の中には、自宅等で仕事をするというのは、会社で仕事をするのとは少し雰囲気が違うから、自宅で仕事中にケガをした場合には、労災保険は、使えないと思っている方もいるかもしれませんが、働く場所が、ただ単に自宅だけであって、使用者の指示、命令で働いているのは、会社内で働いている場合と全く同じ状態となりますので、テレワーク中の事故によりケガ等を負えば、当然業務遂行性が認められる形となります。
ところで、これまでご説明した内容については、実際に使用者の指示、命令に従って労働していますので、使用者の支配下にある状態というのは、イメージしやすいと思います。
しかし、実は労災保険では、使用者の支配下にある状態を、もう少し範囲を広く見ています。
まずトイレ、水飲みなのですが、会社内で仕事をしている労働者は、当然トイレに行きたくもなりますし、喉が渇けば、給湯室にお水やお茶を飲みに行ったりもします。
トイレや水飲みは、これは労働ではありません。
しかし、トイレや水を飲むといった行為は、人間の生理現象でありますので、労働する上で必要不可欠な行動となってきますので、労災保険では、トイレや水飲みといった行為は、労働ではないとしても、使用者の支配下にある状態とみなします。
ですから、トイレや水飲みに行っている間に、何らかの事故が起こって、労働者がケガ等をした場合には、業務遂行性が認められることとなります。
次に休憩時間ですが、休憩時間は、労働基準法で労働者が、労働から離れ自由に使うことができる時間とされています。
つまり、休憩時間は、法律上労働時間ではありません。
ですから、休憩時間中は、使用者の指示、命令を受けないこととなりますので、法律的には使用者の支配下にある状態ではありません。
しかし、法律上労働時間ではないとしても、実際には休憩時間中であったとしても、一定の範囲で使用者の管理下には置かれていることとなります。
ですから、休憩時間中に何らかの事故が起って、労働者が負傷等した場合には、基本的には業務遂行性を認めています。
ところで、休憩時間を会社内で取っている場合には、使用者の管理下というのはイメージしやすいかと思います。
しかし、先程ご説明した、労働者が、営業回りをしている間や出張中 あるいは運送業で運送途中の労働者も、当然休憩を取ります。
このような場合には、労働者は、会社外にいるわけですから、実際には使用者の管理下に置かれているとは言い難いですが、元々、使用者に指示、命令に従って営業周り等を行っているわけですから、労災保険では、このような休憩時間に関しても、基本的に使用者の支配下に置かれている状態とみなします。
ですから、例えば、営業社員がどこかのレストランでお昼を食べている時に、店舗内で事故が起きて負傷してしまった場合には、業務遂行性は、基本的には認められる形となります。
ただし、会社外での休憩時間に関しては少し注意が必要なのですが、例えば、営業社員が休憩時間中に近くの所にパチンコ屋でパチンコをしていた場合、パチンコは、さすがに業務とは全く関係がなく、あくまでも個人の嗜好で行うわけですから、仮にパチンコ店内で事故等が起って負傷等した場合でも業務遂行性は認められない形となります。
ところで、この業務遂行性に関しては、実はもう1つ重要なポイントがあります。
時間外労働を削減するために、多くの会社で、ノー残業デーを設けている場合があるかと思います。
ノー残業デーの場合、一定時間以降、労働者は、強制的に会社を退社しなければいけなくなります。
しかし、労働者によっては、どうしても退社後仕事をしなければ、翌日以降の業務に支障が出るケースも考えられます。
ですから、退社後やむを得ず自宅やサテライトオフィス等で仕事をしたりするケースも出てきます。
このような場合に、事故が起こって負傷等した場合に、業務遂行性が認められるかどうかということなのですが、ノー残業デーでやむを得ず自宅で仕事していた場合は、先程ご説明したテレワークとは状況が違います。
同じ自宅での仕事であっても、テレワークの場合は、使用者の指示、命令が出ていますが、ノー残業デーの退社後の自宅での仕事は、使用者の指示、命令は出ていなく、いわば労働者が、勝手に労働した形となります。
ですから、業務遂行性は認められないと思うかもしれませんが、このような時間に関しても、基本的には業務遂行性が認められます。
というのは、労災保険だけでなく労務管理においては、形式よりも実態を重んじるところがあるためです。
これはどういうことかと言いますと、ノー残業デーであったとしても、退社後やむを得ず労働をしているのは、労働をしなければ業務に差し支えが出る、支障が出るためであって、このような時間は、労働時間とみなされる可能性が非常に高いのです。
つまり、労働者が勝手に時間外労働をした形とであったとしても、間接的、暗黙的に使用者の指示、命令があったとみなされることとなります。
ですから、退社後自宅等で仕事をしている間に、何らかの事故がおこり労働者が負傷等した場合には、業務遂行性が認められる可能性が十分考えられます。
使用者の指示、命令というのは、このように直接的な指示、命令だけではなく、間接的、暗黙的な指示、命令のケースも考えられますので、ここはご注意していただければと思います。
業務起因性について
では、次に、業務災害として認められるためのもう1つの条件、業務起因性についてご説明したいと思います。
業務災害として認められるには、仕事中の事故により負傷等し、さらにその事故による負傷等が業務に起因して生じたものある必要があります。
少しわかり難いかと思いますので、具体的にいくつかの事例を基にご説明していきたいと思います。
まず、飲食店に勤務している労働者が、フライパンで何か調理をしていて最中に、炎が急に燃え上がってしまって、手に火傷を負ってしまったケースを考えてみたいと思います。
火傷を負った原因というのは、調理中に炎が急に燃え上がってしまったためですから、調理という行為が原因となります。
調理をするという行為は、その労働者にとっては業務になります。
ですから、業務に起因して火傷を負ったこととなります。
このような場合、業務起因性があると言います。
ですから、このケースでは、業務遂行性も業務起因性も認められるため、火傷は、業務災害と認められることとなります。
さらに、別の事例で考えてみたいと思います。
小売店で店内の電球を替えようと、労働者が、脚立に乗って電球を替えていたところ、不意にバランスを崩して地面に落ちてしまって、腰や腕を打撲して骨折してしまったケースで考えてみたいと思います。
小売店での業務は、商品を並べたり、レジを打ったりすることが主な業務となりますが、店内を明るく保つためには、電球の取り替えは、当然必要となります。
ですから、負傷した労働者の本来の業務がレジ打ちであったとしても、電球を替える行為も当然に業務となってきます。
ですから、電球を替えるという業務中に事故が起こり負傷等すれば、その業務が原因で事故が起こり負傷等したわけですから、業務起因性が認められることとなります。
ところで、業務災害の場合、事故により病気に患うよりケガを負う場合の方が、圧倒的に多いのですが、事故によりケガを負った場合に、この業務起因性も有無を判断する場合の、重要なキーワードがあります。
それは、偶発的、突発的、不意にといった言葉です。
このような条件が加味されると、業務起因性が認められる可能性が高くなります。
先程挙げた2つの事例を見てみても、急に(突発的に)炎が上がった、不意にバランスを崩したと、キーワードが入っています。
ここは、知識として是非覚えておいていただければと思います。
ところで、業務起因性は、業務が原因によって生じた事故による負傷等だけでなく、事故の発生が、事業場施設に関係している場合も業務起因性が認められるとされています。
例えば、先程ご説明した、電球を替える業務ですが、今度は、事故の原因が、労働者が不意にバランスを崩したのではなく、労働者自身は、普通に電球を替えていましたが、脚立の安全ストッパーに不具合があって、脚立が倒れてしまい、労働者が地面に落ちてしまった場合、事故の原因は、脚立にあります。
このように施設、設備に関連して起こった事故の場合でも、業務起因性が認められるとされています。
ですから、事業場内で労働者が書類を上の階に届けようと、階段を上っていた場合にたまたま階段で足を滑らせてケガをしてしまった。
事故の原因は、階段にありますので、このような場合でも、労災保険では、業務起因性を認めています。
以上のように、労働者が業務を行った業務が原因で事故が起こり負傷等した場合や施設、設備が原因で事故が起こり負傷等した場合に、業務起因性が認められることとなります。
では、次に業務中に起こった事故により負傷等した場合でも、業務起因性が認められないケースをご紹介していきたいと思います。
まず、代表的な例が、業務中に発生した私的なケンカで労働者が負傷した場合です。
例えば、労働者同士が個人的なお金の貸し借りをしていて、それが原因でト勤務時間中にケンカが起こってしまい、一方の労働者が、殴られて負傷してしまいました。
このような場合は、勤務時間中に事故が起こっていますので、業務遂行性は、認められることとなります。
しかし、ケガの原因となったケンカは、個人的なお金の貸し借りが原因なわけですから、業務とは全く関係がありません。
このような場合は。業務起因性は認められないこととなります。
ところで、このケンカについてなのですが、レアケースなのですが、私が実際に経験したケースがありまして、このケースを知っていただくと、業務起因性について、よりご理解していただけるかと思いますので、ご紹介したいと思います。
ある会社で車両を運転する業務があり、それに労働者が2人行くことになり、どちらの労働者が、その車を運転するかで揉めてしまいました。
1人の労働者が女性で、もう1人が、男性でした。
その女性労働者が、車のキーを先に取ったところ、男性労働者がその女性労働者の腕をつかんで車のキーを取り返そうとしたところ、男性労働者が、女性労働者の腕を強く握ってしまったために、女性労働者の腕の骨が折れてしまいました。
このような事故が起きてしまったのですが、これは、はたから見るとケンカに見えますが、あくまでもケンカの元の原因は、車両を運転するという業務が原因です。
ですから、このケースに関しては、業務起因性が認められました。
同じケンカであったとしても、場合によっては、業務起因性が、認められる場合もありますので、ここでご紹介させていただきました。
次によく出てくるケースとして、腰痛があります。
例えば、ある労働者がデスクワークで普通に仕事をしていたら、突然腰が痛くなった、あるいは普通に掃き掃除をしていたら急に腰が痛くなった。
このような場合に、業務起因性が認められるか?ということなのですが、あくまでも通常の業務をしていて腰痛が起こった場合は、これは業務外の時間や休日であったとしても起こりうる可能性があります。
腰痛や関節痛の場合、元々持病を持っていて、痛みがたまたま業務中に起こったと考えられるケースでありますので、基本的には、業務起因性は認められない形となります。
ただし、同じ腰痛でも、重い荷物を持ってたまたま持ち上げようとしたらバランスを崩して腰に過度の負荷がかかってしまって腰痛になった、いわゆるぎっくり腰です。
このような場合には、先程ご説明した偶発的や突発的、不意にといった要因が加わりますので、同じ腰痛であったとしても業務起因性が認められる可能性があります。
ただ、腰痛が難しいのは、ぎっくり腰だけど、診断書を取ったら、元々ヘルニアの持病があった場合、ぎっくり腰になったのは、業務が原因なのか、元々持病としてあったヘルニアが原因だったのか、判断の分かれるところです。
このような場合は、荷物の重さは何キロだったのか、どのような状況で荷物を持ち上げたのか、ヘルニアの自覚症状があったのかといったことを基に判断する形となります。
そのような時は、最終的には労働基準監督署の判断を仰ぐ形となります。
最後に業務起因性の有無の判断が難しい、過労死、うつ病等の精神疾患についてご説明したいと思います。
長時間労働あるいは仕事による過渡のストレス等が原因で、過労死つまり自殺です。
あるいは過労死とまでいかなくても、うつ病等の精神疾患を患ってしまうケースも考えられます。
過労死やうつ病等の精神疾患が、長時間労働あるいは仕事による過度のストレスが原因であれば、当然業務起因性が認められます。
しかし、実際に過労死やうつ病等の精神疾患の原因は、医学的な見地からの判断が必要となりますので、当然、私達のような素人では判断することができない形となります。
ですから、最終的には労働基準監督署の判断を仰ぐ形となりますが、本日のテーマとは少し離れてしまうのですが、過労死について、是非 覚えておいていただきたいことがありますので、ご紹介させていただきたいと思います。
過労死ラインという言葉があります。
過労死ラインとは、万が一過労によって自殺が起こってしまった場合、その労働者の直近の月の時間外労働時間が100時間を超えているか、あるいは過去6ヶ月間の時間外労働時間の平均が80時間を超えている場合には、自殺が業務と関係していると判断される可能性が非常に高くなってきます。
そのために、過労死ラインと呼ばれています。
ところで、2019年4月に労働基準法の改定がありまして、時間外労働の上限時間が定められて、1ヶ月100時間以上の時間外労働または複数月の時間外労働時間の平均が80時間を超えての時間外労働が禁止となっています。
ですから、会社は、労働者に時間外労働をさせる場合には、必ずこの上限時間を守らなければいけません。
万が一 これを守らなければ、法律違反となるのは、当然ですが、ここで注意しなければならないのは、法律の改定により100時間あるいは平均80時間といった具体的な数字が、明文化されたこととなりますので、先程ご説明した過労死ラインが、業務起因性の有無を判断する場合に、従来に増して強く意識される可能性が高いと言えます。
ですから、経営者の方は、この時間外労働の上限時間についは、正しく認識していただければと思います。
業務遂行性と業務起因性との関係と労災手続きの実務について
ここでは、まず業務遂行性と業務起因性の関係についてご説明したいとおもいます。
この関係をご理解していただければ、業務遂行性と業務起因性の関係をよりご理解いただけるのではないかと思います。
業務災害として認められるかどうか判断する場合に、まず業務遂行性が認められることが前提となります。
そして業務遂行性が認められた上で、業務起因性の有無が焦点となります。
ですから、業務遂行性は認められるが、業務起因性が認められないというケースは考えられます。
しかし、反対に業務起因性は認められるが、業務遂行性は認められないというケースは絶対にありません。
あくまでも業務遂行性があるというのが、前提となります。
業務遂行性と業務起因性との関係は、このような関係となってきますので、是非覚えておいていただければと思います。
これまで、業務災害と認められる条件、業務遂行性と業務起因性について、基本的な考え方をご説明してきました。
このブログをお読みのあなた様も、基本的な考え方は、ある程度イメージできるかと思いますが。
ただし、実際、労働者が業務中にケガをして、労災申請を依頼された場合に、「これ本当に労災保険、使えるのかな?」と迷われるケースが出て来るかと思います。
そのような場合には、どうしたら良いのかをご説明していきたいと思います。
実は、答えは非常に簡単です。
労災保険が適用となるかどうかわからなければ、まず労働基準監督署に確認されるかと思います。
しかし、労働基準監督署もある程度のことは教えてくれますが、労働基準監督署は、実際に申請が出てこない限り、労災保険が適用となるか、ならないかの判断は絶対にしません。
実は、労働基準監督署は、「事前に判断ができないわけだから、申請を上げてくれれば良い。」と考えています。
ところで、労災保険の申請をして、もし労災保険が適用にならなかった場合、何かペナルティがあるのではないかと思われている経営者の方が多いと言えます。
そういうことは一切ありません。
労災保険の申請をして、仮に労災保険が適用にならなかった場合でも、ただ適用されなかっただけのことです。
申請した行為について、何ら責められることはありませんので、迷ったらとりあえず申請すれば良いのです。
また、次のようなケースもあるかと思います。
先程ご紹介した、私的なケンカで労働者が負傷した場合には、基本的には業務起因性が認められないために、労災保険の適用とはなりません。
しかし、私的なケンカで負傷した労働者が、「これは業務中に起こった事故だから労災保険を申請したい。」と言い張る場合も考えられます。
このような場合、経営者の方からすれば、「これは絶対に労災保険が認められないから。」と思うかもしれません。
しかし、労災保険は、労災保険への加入自体は、会社の義務ですが、給付の申請は、労働者個人の権利となります。
ですから、会社が、その権利を奪うことはできないわけです。
ちなみに、私的なケンカが原因で負傷し、明らかに労災保険の適用とならないことが予め明確であっても、労働基準監督署は、申請を受け付けてくれます。
そして、どんな申請であったとしても、申請したこと自体に対してペナルティを課すことは絶対にしません。
ですから、労災保険が適用にならないケースの場合で、労働者が、労災保険を申請したいと主張するのであれば、下手に手続きを拒絶することによって、労働トラブルが発生してしまう可能性もありますので、無理に労働者を納得させようとはせずに、会社は、労災保険の手続きを取ってあげれば良いと思います。
ただし、そのような場合、1つだけ注意したいただきたい点があります。
労災保険を申請した場合に、労災保険が適用となるかならないかの判断は、申請をしてから、通常は、数ヶ月後になります。
ところで、労災保険では、治療費の全額が保険給付されます。
つまり、労働者は、基本的に病院に治療費を払わずに治療を受けることができます。(その治療費は 病院が国からもらう形となります。)
しかし、万が一、労災保険が適用にならなければ、労災保険は、給付したお金を病院から返してもらわなければいけなくなります。
ところで、病院は、通常月単位で金銭的な締めの業務を行っています。
ですから、既に締めの業務が終わっているものを、修正するのは、病院にとっては非常な負担となってしまいます。
しかも、病院には全く非はないわけですから、このような場合には、国が、労働者本人に給付金の返還を求めることとなります。
そして、労災保険が適用にならないのであれば、健康保険や国民健康保険を使う形となります。
しかし、先程ご説明したように、病院は既に金銭的な締めの業務を終了しているわけですから、遡って健康保険や国民健康保険に切り替えることもできません。
従って、国に支払った治療費の領収証を健康保険や国民健康保険に提出して、自己負担分以外の金額を支給してもらう、このような手続きをする形となります。
つまり、一時であれ治療費を全額立て替える負担が生じ、何より事務手続きの手間が発生してしまうこととなります。
ですから、労災保険の適用がまず認められないケースで、労働者が、労災保険の申請を主張した場合、申請すること自体は良いけど、もし労災保険が認められなかった場合には、一時であれ治療費を全額立て替える負担が生じ、何より事務手続きの手間が発生してしまうことを、必ず労働者にあらかじめ伝えておく必要があります。
その上で労働者が、申請をしたいのであれば、会社は速やかに手続きをしてあげれば良いと思います。
このようなことを予め労働者に伝えておけば、実際そのようなことが起こった場合でも、トラブルとはならなくなりますので、この点は是非覚えておいていただければと思います。
まとめ
今回のブログでは、業務中に起こった事故で労働者が負傷等した場合に、労災保険が適用となる条件である、業務遂行性と業務起因性についてご説明しました。
業務遂行性と業務起因性は、労災保険においては非常に重要なキーワードで、実際の実務を行う上でも正しく理解することが重要です。
ただ、業務遂行性と業務起因性は、どちらも難しく、特に業務起因性については、判断に迷うケースが多々あると思います。
そのような場合には、まずは労働基準監督署に相談してみて、それでも解決しない場合には、とりあえず申請をしてみるといったスタンスで、実務的には、それで良いかと思います。