シリーズ労災保険⑦ 突然の労災事故 慌てないために!

長い経営活動をしていますと、労災事故が発生してしまうケースというのは、どうしても避けられない部分があります。

 

大企業のように従業員が多数いると、労災事故がそれなりの頻度で起こるため、手続きにもある程度慣れてくる時がやってくるかもしれません。

 

一方、中小企業や個人事業主の場合ですと、労災事故が起こる頻度は、やはり低くなります。

 

そんな中、経営者にとっては、「いざ労災事故が起きてしまった場合にどうしたら良いのだろう」という不安は常に抱えていることでしょう。

 

 

今回は、労災事故が起きた場合に慌てないためにどのような手続きをすれば良いか、そのポイントを分かりやすくお伝えするための内容となっております。

 

取り扱う項目が多く、今回のブログは少し長くなってしまいましたが、より実務の視点を重視し、私自身の経験した事例なども交えながら、分かりやすく解説して参りますので、ぜひ最後までお読みいただければと思います。

 

 

ところで、労災保険では、補償の対象を仕事中または通勤途中の事故等が原因で被ったケガまたは病気としています。

 

仕事中のケガは、一般的に「業務災害」と言い、通勤途中に起こるケガは、「通勤災害」と言います。

 

つまり、労災保険では、「業務災害」と「通勤災害」の2つが補償の対象となります。

 

ところで、「労災事故」という言葉も使われますが、「労災事故」は、「業務災害」と「通勤災害」の2つの災害をまとめて指す総称となります。

 

 

今回は、労災事故の中で「業務災害」を前提にお話ししたいと思います。

 

なお、「通勤災害」についても基本的な考え方は変わりません。

 

ただ、通勤災害と業務災害には微妙な違いがあるため、それぞれの特性を把握するためにも、その違いについては都度、説明していきたいと思います。

負傷者の生命の安全の確保が最優先!

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仕事中に労働者が事故に遭ってケガをした場合、まず最初に何をするか、という点です

 

労働者が、仕事中の事故でケガなどをしたら、その労働者が、意識があるなら本人から直接会社に通知が来ますし、重傷で意識がないのであれば、近くにいる同僚やあるいは周囲にいた人が、何らかの形で会社に連絡してくるでしょう。

 

その時、会社は、まず最初に労働者の保護、労働者の生命の安全、これを確保して下さい。

 

 

具体的には、とにかく病院に労働者を連れて行くことです。

 

労働者が自分で病院に行ける場合には、「すぐに病院に行ってください」と指示を出します。

 

もし、労働者の意識がないのであれば、すぐ救急車などを手配します。

 

とにかく労働者の生命の安全確保、これをまず第一に優先してください。

 

 

ところで、ここで先に少し病院についてお話ししたいと思います。

 

実は、労災保険では病院の種類が2つに分かれています

 

1つ目は労災保険指定医療機関、一般的に労災指定病院等と言われるものです。

 

ちなみに、「等」は 病院以外にも、薬局などがありますので、「等」という言葉を使っています。

 

そして、もう1つが労災保険指定医療機関以外の病院等です。

 

この2つに分かれています。

 

 

手続きに関して、どちらの病院がより手続きが楽か?というと、圧倒的に労災指定病院等で診療を受ける方が手続きは楽になります。

 

ですから、会社としては、労働者が労災指定病院等で治療を受けてくれる方が、ありがたいという考え方が、これは正直、存在すると思います。

 

しかし、労働者の生命の安全の確保、これを最優先にしなければなりません。

 

ですから、あまりに労災指定病院等にこだわるというのは止めるべきかと思います。

 

 

例えば、労働者がどこかの現場でケガをしたとき、近くに病院はあるのですが、たまたま労災指定病院ではなかったとします。

 

会社が、労災指定病院に行くように望んでいて、例えば、20キロ離れた病院が最も近くの労災指定病院だったとしたら、そこに行ってほしいというのは、さすがに労働者にとっては酷ですし、もし、本当に緊急を要する場合は、生命に関わることになります。

 

まずは労働者の生命の安全を、ここを第一に考えて、病院へ行く指示を出してください。

 

近くにある病院がたまたま労災指定病院でなかったとしても、そこにかかるのが最善であれば、そこに行くように指示を出すべきです。

 

これは非常に重要なポイントですので、ぜひ覚えておいていただければと思います。

 

病院等に労災保険を使うことを伝える

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次にやるべきポイントですが、病院に今回の治療等は労災保険を使うことを伝えることです。

 

労働者本人の意識があって、自分で病院に行くのであれば、必ず「今回のケガは業務中のケガなので、労災保険を使って治療を受けたい」と病院に伝えるように、その労働者に会社は指示を出してください。

 

もし、救急車等で運ばれて労働者に意識がないのであれば、会社が、その病院に「このケガは業務中のケガだから労災保険を使って治療をしたいと」と必ず伝えて下さい。

 

 

特殊なケガで、仕事中のケガだと、医師も判断できれば、医師の方から「これは仕事中のケガですか?」と聞いてくれる可能性もありますが、ケガの程度がさほど大きくもなく、日常的に起こるケガの場合、もし、労災保険を使うということを伝えないと、病院の方が、健康保険を使って治療を行ってしまうケースも出てきます。

 

また、労働者もあまりよくわからないから、健康保険の保険証を持っていれば、その保険証を出してしまう、このようなことが実際起こります。

 

健康保険は、業務中のケガを補償の対象としていないため、業務中のケガで、健康保険を使って治療を受けることは法律上できないのです。

 

 

もし、このようなことを実際にやってしまうと、後で非常に手間がかかる事務作業を行わなければいけなくなってきますので

 

ですから、まず病院に着いたら「労災保険を使って治療を受ける」「労災保険の扱いにして欲しい」ということを明確に伝えるということを覚えておいていただければと思います。

 

治療費の等の手続き(労災指定病院等の場合)

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労働者が病院に行くと、当然ですが治療などを受けることになります。

 

労災保険では、労災事故で負傷した労働者に対して、治療などの補償給付を行っております。

 

この補償給付のことを、労災保険では療養(補償)給付と呼んでいます。

 

療養補償給付の中には、診察や治療の他に処置や手術、また薬剤や治療材料の提供、そして、居宅や病院での看護、移送なども含まれます。

 

これら全てを合わせて療養補償給付と呼んでいます。

 

 

ところで、なぜ括弧が付いているかと言いますと、ここで言う括弧の意味は、業務災害の場合には「療養補償給付」という名称ですが、通勤災害の場合は「療養給付」と呼ばれるからです。

 

補償償の内容自体は基本的に同じですが、業務災害と通勤災害とでは名称が違います。

 

 

では、療養補償給付をどのような手続きで補償の給付を受けることができるかについて説明していきたいと思います。

 

なお、ここでは業務災害の補償である療養補償給付を前提でご説明させていただきます。

 

通勤災害の療養給付につきましては、療養補償給付と異なる点についてその都度ご説明させていただきます。

 

 

労災保険では、労災指定病院などで治療を受けるというのが基本的な考え方となります。

 

具体的な手続きは、まず「様式第5号」という書類を病院等に提出します。

 

これが療養補償給付を受ける手続きとなります。

 

なお、通勤災害の場合は、「様式第16号の3」を病院等に提出します。

 

 

そして、補償給付の形は「現物給付」が基本となります。

 

現物給付というのはどういう意味かと言います、治療等を受けた場合に、一旦治療費を払って、後でその額を請求する方式ではなく、治療費を払わずに治療を受けることができることとなります。

 

つまり、治療という現物を受取る(給付される)こととなるわけです。

 

ところで、この様式第5号ですが、一度病院等に提出すれば、その後何回同じ病院で治療を受けたり、ケガの程度がひどく手術を受けなければならなくなったなどの事態になっても、治療費を一切払わずに治療を受けることができます。

 

治療費の等の手続き(労災指定病院等以外の場合)

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ところで、労働者が負傷した場合に、負傷した場所の近くに労災指定病院等がないケースもあります。

 

また、負傷した労働者が既往症を持っている場合、労働者かかりつけの病院で診察を受けたいと希望するケースも考えられます。

 

そして、そのかかりつけの病院が、労災指定病院等以外ということもあります。

 

ここでは、労災指定病院等以外で治療を受けた場合、どのような手続きをするべきかについてご説明したいと思います。

 

 

労災指定病院等以外で治療等を受けた場合、診療費を一旦全額、その病院等に支払う形となります。

 

そして後日、「様式第7号」という書類を使用して、支払った治療費等を国に請求する形となります。

 

具体的な手続きの方法としては、まず様式第7号を治療を行った医師等に記載してもらい、支払った治療費などの領収書の原本を添付し、事業所管轄の労働基準監督署に提出する形となります。

 

一定期間後、支払った治療費が国から戻される、という流れとなります。

 

つまり、現金が支給される形となります。

 

先程ご説明した労災指定病院等の場合は現物給付となりますが、労災指定病院等以外の場合は現金給付の形となります。

 

 

ところで、先にも少し触れましたが、労災指定病院等と労災指定病院等以外とでは、どちらの手続きが楽かというと、労災指定病院の方が圧倒的に楽といえます。

 

その理由は、労災指定病院等の場合、様式第5号を一度提出すれば、その病院等で治療等を受ける限り、その後手続きをする必要がないからです。

 

 

それに対して、労災指定病院等以外で治療等を受けた場合、様式第7号を一度医師に渡し、それを再度受け取り、治療費の領収書と合わせて、労働基準監督署に提出しなければなりません。

 

非常に手間がかかり、さらに労働者が一時的にでも治療費を立て替えなければならないという負担が発生します。

 

また、治療が、例えば、3ヶ月、4ヶ月と長引く場合、3ヶ月、4ヶ月分をまとめて請求することも可能ですが、労働者の負担が大きくなってしまいます。

 

そのため、通常は1ヶ月ごとに請求を行う形が一般的です。

 

1ヶ月ごとに請求するということは、様式第7号をその都度、医師に書いてもらって、それを再度受け取り、治療費の領収書の原本と一緒に労働基準監督署に出す、毎月このようなことを行わなければならないわけです。

 

ですから、手続きに関しては、圧倒的に労災指定病院等で治療を受ける方が楽となります。

 

 

となると、会社としては、当然労働者に労災指定病院等に行って欲しいと考えます。

 

しかし、「ちょっと無理してでも労災指定病院へ行って」というふうに言いたくなる気持ちはわかりますが、先にも言いましたが、労働者の生命の安全が一番ですので、あまり労災指定病院にこだわらずに、労働者にとって最適な病院に行ってもらうことを心掛けてください。

 

なお、通勤災害の場合は、様式第7号ではなく、様式第16号の5という書類を使います。

 

ところで、様式第7号、様式第16号の5は治療内容によって様式第7号(1)、様式第7号(2)と数字が付いてきますが、そこまでお話しすると、話が複雑になってしまいますので、ここではあえて様式第7号、様式第16号の5という言葉を使わせていただきました。

 

実務面でのポイント

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療養補償給付を受ける手続きの方法としては、労災指定病院等か、労災指定病院等以外かによって、手続きの方法は変わってきますが、だいたいの流れはご理解いただけたかと思います。

 

ただし、実務面から考えた場合に、もう少し経営者の方に知っていただきたいポイントがいくつかありますので、これからそれらのポイントについてご説明したいと思います。

 

初診時の治療費の支払いについて

もしかすると、今回のブログをお読みの貴方様も、すでに疑問に思われているかもしれませんが、労災指定病院等以外で治療等を受け様式第7号を使う場合には、治療を受けた後から手続きをするから問題はないのですが、労災指定病院等で治療等を受けた場合、様式第5号をいつ病院等へ提出するのかが問題なってきます。

 

最初に病院に行った時に、この様式第5号を出すことは、ほとんどの場合、不可能です。

 

ところで、法律上は、あまでも、様式第5号を病院等に提出して、労災保険の手続きが完了するわけですから、最初に病院に行った時に、様式第5号を持参していなければ、理論上は労災保険の手続きができないこととなります。

 

 

しかし、最初に病院等にかかった日の治療費が、発生します。

 

手続きが終われば、治療費は発生しないのですが、手続きが完了する前の治療費どうするのか、これは、実務的に直面する問題です。

 

ここにつきましては、実は、病院等によって対応が異なってきます。

 

 

先程、労災保険を使う場合には、その旨を必ず病院等に伝える必要があると言いましたが、その際の病院の対応は基本的に2つに分かれます。

 

私がこの仕事を始めた約18年位前は、「労災保険で治療を受けたい」と言うと、病院の方は「わかりました。後日、様式第5号を持ってきてください。後で持ってきてくれれば、最初から治療費は不要です。」というように対応してくれる病院が、非常に多かったのです。

 

手続き自体は、正式には終了してはいないけれども、将来的に労災保険の手続きになるという前提で、最初に病院に行った時から治療費は支払わなくて良い、このような対応をしてくれる病院がほとんどでした。

 

 

しかし、これを悪用する人がいたようなのです。

 

そのように言って、そのまま来なくなってしまう、どこかへ行ってしまったのです。

 

病院は、様式第5号を労働者からもらって、その書類を国に提出して初めて、治療費を国からもらう形になります。

 

様式第5号がなければ、病院は、そのケガをした労働者に対して本当に無料で治療を行ってしまった、という結果になってしまうわけです。

 

そのため、現在では、初めて診察を受ける際に「まず治療費を全額お支払いください」という対応をする病院が増えてきています。

 

ここで正直押し問答しても仕方がありませんので、もし病院が、「そのように治療費を全額お支払いください」と言われた場合は、すみやかに治療費を支払うことをお勧めします。

 

その方が、後々の手続きがスムーズに進むでしょう。

 

 

押し問答をした場合、労働者がその場で治療を受けることになりますので、何かトラブルが発生する可能性があります。

 

ですので、すみやかに治療費をお支払いくださいますようお願いいたします。

 

 

では、その支払った治療費がどうなるのか、について少し説明します。

 

例えば、事故をした日がある月の15日であったとします。

 

そして、当日に病院へ行ったのですが、様式第5号を出すことができないので、治療費を一旦全額支払ったとします。

 

 

ところで、病院は治療費などの会計業務を月ごとに精算していくというのが一般的です

 

そして、その精算業務は、一般的には、翌月のだいたい5日前後に行われます。

 

ですから、理論的には、病院の会計業務が終了するまでに様式第5号を提出すれば、病院は労災保険の手続きに変更することが可能となります。

 

従って、会計業務が終了するまでに、様式第5号を病院へ提出すれば、支払った治療費は単に労働者に返せば良い、という流れになります。

 

つまり、治療費を一旦全額支払っても、後日、様式第5号の書類を持参すれば、その場で返却してもらえる、これが一般的な流れとなります。

 

ですから、月末にケガをして、労災保険で治療を受ける場合には、時間的な余裕がないこととなってしまいます。

 

いずれにしても、様式第5号は、治療費を支払った日の翌月の5日までに、提出する、ということを覚えておいてください。

 

 

ただし、病院によっては、翌月5日まで十分時間があるにもかかわらず、数日中に様式第5号を提出して欲しい、と言われる場合もあります。

 

逆に、翌月5日を過ぎても、労災保険へ切り替えてくれる病院もあります。

 

ここに関しての対応は病院によって異なってきますので、まずは病院の指示に従ってなるべく早く様式第5号を提出するようにしてください。

 

 

ところで、様式第5号を速やかに病院等に提出できないケースも考えられます。

 

例えば、事務担当者が急病により長期休暇を取らざるを得なくなった場合、様式第5号を出すことができなかったというような状況も考えられます。

 

このような場合、どのような手続きを行うべきかについて、お話ししたいと思います。

 

これは実務上、頻繁に起こるケースです。

 

 

様式第5号の提出が遅れて、診察日の翌月5日を過ぎても、病院の方が労災保険に切り替えてくれれば問題はないのですが、総合病院とか膨大な業務を行う病院の場合、締切日を 厳格に適用するケースは多いと言えます。

 

ですから、病院によっては、締切日より後に様式第5号を持参した場合に、「もう会計業務は締め切ってしまっているので、返金はできません」と言われるケースがあります。

 

そのような場合は、様式第7号を使用することになります。

 

様式第7号を病院で記載してもらい、支払った治療費の領収書の原本を添付し、労働基準監督署に提出します。

 

一定期間後に支払った治療費が返還される、このような流れとなります。

 

つまり、先にお話しした、労災指定病院等以外で治療等を受けた場合と同じ流れとなります。

 

結果的には、治療費は、労働者が負担しないという形にはなりますが、手続きとしては、様式第5号を利用する方が圧倒的に楽ですし、一定期間であれ治療費を労働者が負担しなければいけなくなってしまいますので、速やかに様式第5号を病院へ提出していただくことを覚えておいていただければと思います。

 

薬剤について

次に薬剤等についてご説明したいと思います。

 

先程、療養補償給付の中で薬剤あるいは治療材料の支給も補償の対象となっているというお話をしました。

 

薬剤や治療材料の支給も実際には非常に日常的によく使われる給付となっています。

 

 

まず、薬剤についてお話したいと思います。

 

病院で治療を受ければ、薬剤をもらうことは非常に多いと言えます。

 

治療を受けた病院の院内薬局で薬を出してくれれば、病院に出した様式第5号で薬剤の費用も対応が可能なのですが現在は、薬剤は病院とは別の薬局でもらうケースの方が、圧倒的に多いと思います。

 

そのような場合、薬局は、あくまで独立した医療機関と考えてください。

 

つまり、薬剤を病院以外の薬局で受け取った場合は、その薬局にも独立した手続きが必要となります。

 

薬剤を受け取った薬局が労災保険指定医療機関であれば、様式第5号を出します。

 

 

ただし、全ての薬局が労災指定病院などに指定されているわけではありませんので、受け取った薬局が労災指定されていない可能性もあります。

 

労災指定されていない薬局は、様式第7号で対応します。

 

ですから、病院は様式第5号、薬局は様式第7号というケースも出てきます。

 

いずれにしても、病院と薬局は、それぞれ独立した医療機関として扱われますので、それぞれで手続きが必要となることを覚えておいてください。

 

 

ところで、薬局は通常、病院の近隣にあり、その薬局に薬剤をもらうケースが多いかと思います。

 

そのような場合、病院と薬局がよく連携を取っているため、病院が、提出された様式第5号の写しを薬局に渡し、薬局はそれによって労災保険の手続きを行う、このようなケースもあります。

 

このような場合には、薬局にわざわざ様式第5号を提出しなくても、手続きが完了します。

 

しかし、このような取り扱いは、全ての薬局が行っているわけではありませんし、処方箋は基本的にどこの薬局でも薬をもらえるので、必ずしも労働者が病院の隣の薬局に行くわけではありません。

 

ですから、基本的には、病院と薬局、それぞれ必要書類を提出するようにして下さい。

 

その方が、後々のトラブルを防ぐことができます。

 

治療材料(器具)について

次に、治療材料についてご説明したいと思います。

 

治療材料とは、コルセットや松葉杖などのことを言い、ケガの状況によってはコルセットを付けたり、松葉杖が必要になることもあります。

 

この治療材料の支給に関しては、少し特別な扱いをします。

 

たとえ受診した病院が労災指定病院で、その医師の指示により治療材料(器具)を作成しても、治療材料の費用に関しては、様式第5号で対応するのではなく、様式第7号を使う形となります。

 

 

つまり、先にその治療材料のお金を払って、様式第7号を医師に記載してもらって、治療材料の領収書や医師の意見書など必要な書類を付けて労基準監督署に提出し、後日治療材料の費用が支給される、このような流れとなります。

 

治療材料に関しては、ほとんどの病院が指示してくれ、必要な書類も病院の方から渡されるので基本的には さほど困ることはないかと思いますけど、治療材料については様式第7号で手続きをするということを覚えておいていただければと思います。

 

様式第5号等の申請書類の記載について

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ここでは、様式第5号等の申請書類の記載についてお話ししたいと思います。

 

実際、書類を書く際には、事故の状況や負傷箇所などの記載について、多くの経営者の方は苦労されるかと思います。

 

様式第5号の場合は、手続きの関係上、病院に提出するわけですが、病院ではこの様式第5号が、記入すべき記載欄に記入されていれば、基本的に病院がその内容について指摘することはありません。

 

ですから、様式第5号を作成する際には、あまり深く考え過ぎる必要はないのです。

 

例えば、事故の状況につきましても、実際に分かっていることをそのまま書いていただければ結構ですし、負傷箇所につきましても、例えば、 左腕をケガした場合、腕と言っても 部分によって、左上腕二頭筋など専門の呼び方がありますが、診断書等がなくて、負傷箇所の専門的な用語が分からなくても、わざわざ病院に聞く必要もなく、単に左腕と書けば大丈夫です。

 

 

実際、労働基準監督署は、労働基準監督署は病院からレセプト等で治療内容を確認しますし、不明点があれば、会社に確認するだけのことです。

 

記載内容に誤り等があったとしても、それが、故意的な虚偽でない限り、大きな問題になることはまずありません。

 

それよりも、申請書類の記載にあまりに時間がかかって、提出が遅くなる方が、手間等の問題が発生してしまいますので、申請書類は、あまり深く考えずに、わかる範囲で記載して、なるべく速やかに提出することが大切であることを覚えておいていただければと思います。

 

これでは知っておいて欲しいポイントとは?

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最後に1つ重要なポイントをお話ししたいと思います。

 

業務中あるいは通勤途中に事故等が発生して、ケガ等をした場合に、どのようなことを行うか、実際の労災保険の手続きについてお話ししてまいりました。

 

なるべくわかりやすくお話ししてきたつもりなのですが、しかし、現実は難しいところもあります。

 

ですから、ここだけは覚えておいていただきたいのですが、

 

実際に事故が起きた時に、今回ご説明した最初の2つのポイント、労働者の安全、生命の確保と、病院に労災保険で治療を受けたいと伝えるという、この2つだけ覚えていただければ、後のものは「なんとなくそういうものなのだな」という感覚で、それで十分なのです。

 

 

これだけ長くお話ししてきて、このようなことを言うのは、矛盾した感じにも聞こえるかもしれません。

 

では、なぜこのようなことをお話しするかというと、先にもご説明したように実際に様式第5号を病院へ提出するまでには、事故からある程度の時間的余裕があります。

 

様式第7号に関しては、一定期間の治療が終了した後に手続きを行うわけですから、時間的余裕はさらにあります。

 

つまり、事故が起こって労働者がケガ等をしたからといって、労災保険の手続き上、一刻も早く何か行動を開始しなければならないということは、実際にはありません。

 

分からないことがあれば、労働基準監督署や私たちのような専門家に問い合わせる時間は十分に確保できます。

 

 

労災事故が起きた場合、非常に不安になることが多いでしょう。

 

しかし、必要な手続きには一定の時間的余裕があり、決して急いだり落ち着きを失ったりする必要はありません。

 

労働者の安全、生命の確保、病院へ労災保険を使う旨を伝えたら、一歩一歩、確実に進めていただければと思います。

 

まとめ

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今回は、労災事故が起きた場合に慌てないためにどのような手続きをすれば良いか、そのポイントについてご説明してきました。

 

長い経営活動を行っていれば、労災事故に遭遇してしまうケースは、どうしても避けられないかと思います。

 

そんな時に今回のブログは必ずしもお役に立つかと思いますので、是非今後のご参考になさって下さい。

 

 

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