労務管理用語シリーズ⑧ 正社員 パートタイマー アルバイトとは?
今回は 正社員とパートタイマー、アルバイトについてお話したいと思います。
正社員、パートタイマー、アルバイト、これらの言葉は、私達が普段何気なく使っています。
多くの経営者の方が、正社員、パートタイマー、アルバイト、これらの言葉が持つ意味を深く考えることは、まずないかと思います。
しかし、適正な労務管理を行う上で、正社員、パートタイマー、アルバイトについて正しく理解することは、本当に重要なことなのです。
今回は、正社員、パートタイマー、アルバイト、これらの言葉が持つ意味、正社員とパートタイマー、アルバイトとでは何が違うのか?わかりやすくご説明していきたいと思います。
正社員 パートタイマー アルバイトの定義とは?
正社員とパートタイマー、アルバイト この違いは何ですか?と質問されれば、正確に答えることができる方は、まずいないと思います。
では「先生、その違いは何ですか?」と質問されれば、私もやっぱり「分かりません」と答えます。
このブログをお読みのあなた様は、「一体何なんだ?」と思われるかと思います。
実は、正社員、パートタイマー、アルバイト これらの言葉は、法律用語ではありません。
ですから、元々定義がないのです。
つまり 法律上 「正社員は、このような社員です。」「パートタイマー、アルバイトはこのような社員です。」という決まりがあるわけではないのです。
ですから、正式に答えることができないのです。
では、法律ではどのような言葉を使うのでしょうか?
なお、労務管理において、最も重要な法律は、労働基準法となりますので、これからは労働基準法を前提としてお話していきたいと思います。
労働基準法では、正社員、パートタイマー、アルバイト このような用語は一切出てきません。
労働基準法で使われる用語は、「労働者」です。
実は、ここが適正な労務管理において、非常に重要なポイントとなるのです。
つまり 労働基準法で、正社員、パートタイマー、アルバイトといった用語を使うのではなくて、「労働者」という言葉しか出てこないということは、法律上、正社員、パートタイマー、アルバイトといった方々は、全て労働者となるわけです。
では、何故、正社員、パートタイマー、アルバイトといった言葉が使われるか?と言うと、それは、便宜上 必要性があるからです。
その必要性については、後半でお話しますが、ここではまず、「正社員もパートタイマーもアルバイトも、法律上では全て労働者である。」というところを押さえて下さい。
実は、この考えが持つ意味は、経営者の方が想像されるより、はるかに重要なことなのです。
「パートタイマーやアルバイトに有給休暇は無い。」「パートタイマー、アルバイトには割増賃金を払わなくても良い。」「休憩時間を与えるのは 正社員だけで良いんだよ。」
このように言う経営者の方、結構いるかと思います。
しかし 今言いましたように、法律上は 、パートタイマー、アルバイトも正社員と同じ労働者です。
ということは、パートタイマーもアルバイトも労働基準法で定められている規定は、正社員と同じように適用されます。
ですから たとえパートタイマー、アルバイトであったとしても、条件を満たせば有給休暇は発生します。
パートタイマー、アルバイトであったとしても、法定労働時間を超えて労働させた場合には、一定の割増賃金を支払う必要があります。
パートタイマーだからアルバイトだからといって有給休暇を与えない。
パートタイマーだからアルバイトだからといって割増賃金を支払わない。
これは明らかな法律違反となります。
そして 労働トラブルの原因となってきます。
残念ながら、正社員とパートタイマー、アルバイトと法律的に違った取扱いをしても良いという誤った認識を持たれている経営者の方が 非常に多いのです。
ですから、適正な労務管理を行う上で、正社員、パートタイマー、アルバイトこれらは全て法律上同じ労働者であり、労働基準法の適用を等しく受けるというところを、まず押さえていただければと思います。
労働者を区分する理由とは?
では、 正社員、パートタイマー、アルバイトというように、労働者を区分する必要性についてお話したいと思います。
その理由は、いくつか考えられると思いますが、今回は、1つ大きな理由についてお話したいと思います。
先程も言いましたように、正社員、パートタイマー、アルバイトも法律上全て労働者であるわけですから、労働基準法で定められている規定は、同じように適用されます。
しかし、会社を運営していく上には、法律で定められている規定以外にも様々なルールを用いているかと思います。
賞与、退職金、休職制度、慶弔休暇このようなものは、本来法律に規定がないものですから、経営者は、賞与、退職金、休職制度、慶弔休暇等を会社の制度として導入する必要はありません。
しかし、福利厚生、従業員のモチベーションアップ等の様々な理由で、多くの会社で賞与、職金、休職制度、慶弔休暇を導入しているかと思います。
ところで、先程も言いましたように、賞与、退職金等につきましては、 元々 法律の規定がないわけですから、これらのものを導入するか否かは、会社が、自由に判断することができます。
となれば、賞与、退職金等を仮に導入するとしても、それをどのように運用するかについても、基本的に会社が自由に決めることができることとなります。
例えば、賞与や退職金は、正社員だけに支給したい。
慶弔休暇については、正社員とパートタイマー、アルバイトと日数を変えたい。
このように労働者の区分によって、労働条件等で異なった取り扱いしたいというケースは、考えられます。
もし、異なった取り扱いをするであれば、労働者を区分する必要があります。
そのため、労働者を、正社員、パートタイマー、アルバイトといった名称を付けて区分するという考えが生まれてきたと言えます。
ちなみに、同一労働同一賃金の関係で、たとえ正社員とパートタイマーというように区分されていたとしても、同じ業務をしているのであれば、労働条件に差をつけることは、違法となってくる可能性がありますが、例えば、正社員とパートタイマー、アルバイトが業務内容や労働時間、労働日数等で区分されて、業務に対する責任の度合いが違うのであれば、同一労働同一賃金の法律の適用を受けないこととなりますので、労働条件等において正社員とパートタイマー、アルバイトとで、異なった取り扱いをすることは、基本的には問題ないと考えられています。
労働者を区分する場合の注意点
ところで、労働者の区分について、注意しなければいけない点が1つあります。
賞与、退職金、休職制度、慶弔休暇等の労働条件は、通常、就業規則に制度を定める形となります。
就業規則は、特段の定めがない場合は、「全社員に適用する」 と考えられます。
ですから、就業規則を作成して、賞与、退職金、休職制度、慶弔休暇等の規定を設けた場合に、特段の定めがない場合には、その就業規則は、全社員に適用することとなります。
全ての社員ですから、パートタイマー、アルバイトにも当然適用されるわけです。
つまり、パートタイマーや-アルバイトであっても、賞与や退職金も支払わなければいけない。
パートタイマーやアルバイトであっても、休職制度を利用できるし、慶弔休暇も取得できることとなります。
ですから もし賞与や退職金、休職制度、慶弔休暇については正社員とパートタイマー、アルバイトとで異なった取り扱いをしたいのであれば、例えば、「退職金に関しては正社員のみ支給する」とか「賞与に関してはパートタイマー、アルバイトには支給をしない」というように、その旨を必ず就業規則に明記しなければいけないのです。
そして、労働者を区分する場合には、正社員、パートタイマー、アルバイトとは具体的にどのような労働者を言うのか?ここをはっきりと定義付けしておく必要があります。
もしここが曖昧のままだと、トラブルの原因になってしまいます。
例えば、ある従業員 Aさんがいて、会社は、Aさんをパートタイマー、アルバイトと思っているけど、Aさん自身は正社員だと思っていた場合、Aさんは当然、自分にも退職金が支給されるものだと思ってしまう可能性があります。
会社と労働者との間で考えの違いが生まれれば、トラブルへ発展してしまうので注意が必要です。
ですから、労働者を区分する場合には、各労働者がどのような区分されているのかを明確にすることが重要となります。
まとめ
パートタイマー、アルバイトであっても、労働基準法上は、正社員と同じ労働者となります。
ですから、パートタイマー、アルバイトであっても、有給休暇や割増賃金といった法律上の規定は、正社員と同じように適用を受けます。
また、賞与、退職金等の 労働条件に関して、労働者の区分によって、異なった取り扱いをするのであれば、異なった取り扱いをする旨を、必ず就業規則に明記するとともに、労働者の区分を明確に行っておくことが、重要なポイントとなります。
▼就業規則の見直しをご検討の方はこちら