Q 試用期間中の解雇は、解雇予告手当が不要ですか?

【質問】

 

先日、従業員を3ヶ月間の試用期間を設けて新たに雇用したのですが、1か月ほど経過した先日、経歴に詐称が見つかりました。

 

業務に重大な支障が出ると思われる経歴詐称でしたので、解雇しようと考えています。

 

ところで、先日、同業者の社長から、「試用期間中に解雇すれば、解雇予告手当を支払う必要はない。」と言われました。

 

試用期間の間に解雇すれば、本当に解雇予告手当を支払う必要がないのでしょうか?

 

 

【回答】

 

試用期間中であっても、雇用後14日を経過していれば、解雇予告手当の支払いが必要となります。

 

 

【解説】

 

今回のご質問については、試用期間と解雇予告手当の2つのポイントを正しく理解する必要があります。

 

まず、試用期間ですが、試用期間とは、企業が労働者を雇用後実際の勤務を通して労働者の適性などを評価し、正社員へ登用するかを判断するための期間とされています。

 

ちなみに、この試用期間については法律の規定がないため、試用期間の長さについても、企業が自由に決めることができます。(ただし、あまりに長い期間の場合には、労働者の地位が著しく不安定となってしまうため、裁判等で無効となる場合があります。)

 

 

次に解雇予告手当ですが、労働基準法では、労働者を解雇する場合には、平均賃金日額の30日分以上の解雇予告手当の支払いをするか30日以上前に解雇を予告するか義務付けています。

 

つまり、労働者を即日解雇したい場合には、平均賃金日額の30日分以上の解雇予告手当の支払いが必要となり、もし、解雇を30日以上前に予告すれば、解雇予告手当の支払いは不要となります。(ただし、30日分の給料を支払う必要があります。)

 

なお、平均賃金についての説明は、ここでは割愛させていただきますので、平均賃金の内容につきましてはこちらをお読み下さい。

 

>>平均賃金の計算方法について

 

 

では、この2つのポイントはご理解した上で、今回のご質問の解説をしたいと思います。

 

まず、解雇予告手当ですが、今、お話ししましたように、30日以上前に解雇を予告すれば解雇予告手当の支払いは不要になりますが、労働基準法ではそれ以外に解雇予告手当の不要なケースを定めています。(解雇予告の適用除外)

 

労働基準法では、以下に該当する労働者については、解雇予告の適用除外となるため、解雇予告手当を支払うことなく即日解雇することができるとされています。

 

① 日々雇い入れられる者

② 2か月以内の期間を定めて使用される者

③ 季節的業務に4か月以内の期間を定めて使用される者

④ 試の使用期間中の者

 

実は、多くの経営者の方が誤解するのが、④の「試みの使用期間中の者」です。

 

今回のご質問もまさにこれに当たります。

 

 

何が問題となるかと言うと、先程、ご説明した「試用期間」と「試みの使用期間」とは、言葉が非常に似ているため、「試みの使用期間」を「試用期間」と勘違いされてしまうのです。

 

④の「試みの使用期間中の者」とは、具体的には雇用後14日以内の労働者を言います。

 

つまり、雇用後14日を経過した場合には、解雇予告適用除外の①から③に該当するか、30日以上前に解雇を予告する以外は、解雇予告手当の支払いが必要となってきます。

 

ですから、「試用期間中の解雇は、解雇予告手当の支払いが不要」というのは全くの誤りで、たとえ、試用期間中であっても、雇用後14日を経過した労働者を解雇する場合には、解雇予告手当の支払いが必要となってきます。

 

 

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【ここがポイント】

 

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ところで、解雇予告手当については、もう1つ誤解されている点があります。

 

先程、お話したように、労働基準法では労働者を解雇する場合には、平均賃金日額の30日分以上の解雇予告手当の支払いをするか30日以上前に解雇を予告するか義務付けています。

 

この文章を読めば、解雇予告手当を支払えば、労働者を何の問題なく解雇できる、と解釈される方もいるかと思います。

 

 

しかし、実は、解雇予告手当は、解雇する場合の単なる手続きに関する規定に過ぎないのです。

 

労働者を解雇した場合、労働者が解雇を不服として裁判等で訴えを起こす場合があります。

 

もし、労働者が訴えを起こした場合、裁判等で解雇の理由の正当性、妥当性の有無が争われることとなるのですが、この場合、解雇予告手当の支払いは、その判断に影響を与えることはありません。

 

そのため、解雇予告手当を法律通りに支払って解雇しても、裁判等で解雇が不当と判断されるケースは当然あります。

 

 

つまり、労働者を解雇する場合には、解雇予告とは別の次元で、労働者から訴えられる危険性があることを認識しておく必要があります。

 

ですから、先程お話した解雇予告の適用除外に該当する労働者、例えば、雇用後14日以内の労働者を解雇する場合には、単に解雇予告手当の支払いが不要になるだけであって、無条件に解雇できるわけではなく、労働者からの訴えのリスクが、当然残ることとなります。

 

 

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