就業規則 ~労働契約との関係~
【説明】
就業規則で定める基準に達しない労働条件を定める労働契約は、その部分については無効となり、無効となった部分については、就業規則に定める基準によることとなります。
【ここがポイント!】
就業規則で定める基準に達しない労働条件を定める労働契約は、その部分については無効となります。
例えば、就業規則で、「通勤手当を距離等に応じて一定額を支払う」と定められている場合に、ある労働者との労働契約で、その労働者は、通勤手当を支給されている他の労働者と距離等について同じ条件にもかかわらず、通勤手当を支給しないと定めた場合に、その定めは就業規則の条件に達していないので無効となります。
無効となった部分は、就業規則の定める基準となるため、通勤手当を支給する必要があります。
法令等との関係も併せて図にすると以下になります。
法令 > 労働協約 > 就業規則 > 労働契約
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優先度が高い 効 力 優先度が低い
法令等と労働契約との関係をもう少し詳しくお話しいたい、と思います。
例えば、1日の所定労働時間が8時間の労働者と、時間外労働の割増率が、1.10であるという労働契約を締結したとします。
また、その会社の就業規則には、時間外労働の割増率が、1.20と定められていたとします。
この場合、労働契約が、就業規則の定めの基準に達していないので、労働契約の時間外労働の割増率の部分は無効となり、就業規則の定める基準(1.20)となります。
しかし、労働基準法では、時間外労働の割増率は、最低で1.25と定められています。従って、就業規則で定める基準の1.20は、法令に抵触しているため無効となり、1.25が適用されます。
となると、就業規則の時間外労働の割増率は、1.25となるため、労働契約の時間外労働の割増率も結果的に1.25となります。
もう1つ先程少し触れた通勤手当を例にしてお話したいと思います。
通勤手当といった手当の支給に関して労働基準法等の法令では制限がありません。
つまり、手当を支給するか否かは、使用者の自由に任されています。
ですから、「通勤手当を支給しない」という定め自体は、法令には抵触しないこととなります。
となると、労働契約を締結するに当たり、通勤手当が就業規則に定められた基準に達している必要があります。
仮に、就業規則で、「通勤距離等に応じて通勤手当を一定額支給する」と定められているにもかかわらず、ある労働者と労働契約を締結する際に、その労働者が、通勤手当を支給されている他の労働者と同じ通勤距離等であるにもかかわらず、「通勤手当を支給しない」としたら、就業規則の基準に達していないので、締結された労働契約の通勤手当の関しては無効となり、その労働者にも通勤手当を支払う必要が出てきます。
就業規則、労働契約の関係で、法令の制限を受ける場合は、法令の基準を満たす必要があるため、かえって注意がいくのですが、法令の制限を受けない事項についての方が、労働契約が就業規則の基準を満たさない場合が起こり易いのでご注意下さい。
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