Q 1時間以上の手待ち時間を休憩時間として取扱っても良いでしょうか?
【質問】
当社は運送業を営んでおりますが、荷物の積み降ろしをする際、配送先の都合等の理由で手待ち時間が発生する場合があり、長い時には2時間以上となる場合があります。
手待ち時間中は食事や仮眠等、基本的に自由にしてもらって構わないので、手待ち時間が1時間以上に及んだ場合には、休憩時間として取扱ってきました。
しかし、先日、ある社員から「手待ち時間は労働時間だから、過去の休憩時間とした手待ち時間分の給料を支払って欲しい。」という申し出がありました。
手待ち時間中は自由に過ごすことを認めているわけですから、休憩時間として取り扱っても問題ないと思うのですが、本当に労働時間として取り扱わなければならないのでしょうか?
【回答】
使用者からの指揮命令の支配下から完全に開放されており、自由利用が保障されていなければ、実際に労働していなくても休憩時間として取り扱うことはできません。
【解説】
手待ち時間の取り扱いについては、運送業の経営者の方からよくご質問を受けます。
確かに、手待ち時間を労働時間として取り扱うか否かによって、人件費に大きく影響を与えます。
ところで、労働時間の定義ですが、これは、実際に労働に従事する時間はもちろん、使用者の指揮命令に入っている時間は全て労働時間とされています。
手待ち時間は、実際に労働に従事しているわけではないので、手待ち時間が労働時間となるか否かは、使用者の指揮命令に入っているか否かによって判断されます。
通常、荷物の積み降ろしのための手待ち時間は、荷物を積み降ろしできる状態になったら、その時点で業務に服する必要があります。
つまり、手待ち時間中は、実際に労働に従事していなくても、いつでも積み降ろしの業務を開始できるように、その場を離れることができないなど、完全に業務から離れてことができない場合には、使用者の指揮命令下にあると解されます。
これは、昼休憩の電話当番も同じような考え方です。
結果的に、電話が1本もかかって来ずに、形としては休憩時間と同じであっても、電話がかかってきたら、いつでも取れるように待機しているわけですから、完全に業務から解放され自由にその時間を利用できるわけではありません。
従って、手待ち時間や昼休憩の電話当番等は、使用者からの指揮命令の支配下から完全に開放されているわけではないので、労働時間となり当然その時間に対する賃金は支払われなければなりません。
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【ここがポイント】
ここでは、手待ち時間についてより理解していただくために、少し違った視点からもう少し考えてみたいと思います。
例えば、ある配送先に午後2時に荷物を下ろす約束をしていて、午後12時30分にその配送先に着いたとします。
この場合、準備が整えば、午後2時前でも荷物を降ろして欲しいと配送先から言われれば、ドライバーは、車両の中にいたとしても、常に、荷物を下ろすことができる状態でいる必要があります。
そして、配送先の準備が整ったのが、結果的に午後2時だった場合、午後12時間30分からの1時間30分は労働時間となります。
それに対して、配送先の方で、午後2時前に準備ができても荷物を下ろすのは午後2時になってからで良いですよ、と言われた場合には、午後2時まで、他の業務がなければ、自由利用が保障されていると考えられますので、午後12時30分から午後2時までの1時間30分は休憩時間として取り扱うことが可能となります。
このように、荷物の積み下ろしの時間を取り決めることにより、積み下ろしの開始時刻まで自由利用が保障されれば、労働時間を削減することも可能となりますので、是非、ご参考になさって下さい。
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