Q アルバイトに与える有給休暇の日数の計算方法は?
【質問】
先日、アルバイトから有給休暇を取らせて欲しい、と申し出がありました。
「アルバイトに有給休暇?」と思ったのですが、ネットで調べてみると、法律でアルバイトにも有給休暇は発生することが分かりました。
当社においてアルバイトも貴重な戦力なので、有給休暇でリフレッシュでき労働意欲を高めてくれれば、有給休暇を取得してもらうのは良いのですが、ただ、アルバイトの中には、正社員に比べ労働時間や労働日数が少ない者もいます。
労働時間や労働日数が少ないアルバイトにも正社員と同じ日数の有給休暇を与える必要があるのでしょうか?
【回答】
正社員より労働日数や労働時間が少ない労働者の有給休暇は、1週間の労働日数と労働時間によって与えられる日数が労働基準法により決まっています。
【解説】
法律(労働基準法)により、労働者は、雇用された日より6ヶ月経過した時点で、出勤率が8割以上の場合には、10日間の有給休暇が付与されます。
労働基準法で規定される労働者とは、正社員はもちろんパートタイマー、アルバイト、嘱託社員等全ての者を言いますので、アルバイトであっても正社員と同じように有給休暇を取得する権利は発生します。
ところで、アルバイトであっても法律上は労働者ですので、有給休暇を取得する権利が発生するのは当然としても、アルバイトやパートタイマーは、正社員と比べて、労働時間や労働日数が著しく少ない場合もあります。
そんな労働時間や労働日数が著しく少ないアルバイトやパートタイマーにも正社員と同じ有給休暇の日数を与えるというのは、合理性に欠けるところがあります。
そのため労働基準法では、1週間の労働時間と労働日数が一定以下の場合には、有給休暇の付与日数が、労働時間と労働日数に応じて10日より少なく規定されています。
これを比例付与と言います。
比例付与の具体的な日数はこちらをご参照下さい。
※1.(2)の週所定労働日数が4日以下かつ週所定労働時間が30時間未満の労働者の付与日数をご覧下さい。
>>年次有給休暇の付与日数(厚生労働省)
この比例付与ですが、少し分かり難いところがありますので、解説したいと思います。
まず、比例付与に該当するためには、
①週の所定労働日数が4日以下
※週の労働日数が決められていない場合は、年間の所定労働日数が216日以下
②週の所定労働時間が30時間未満
の2つの条件を満たしている必要があります。
ここで注意が必要なのが、比例付与に該当するのはどちらか一方を満たしているのではなく、同時に2つの条件を満たしている必要があります。
ですから、1日1時間しか働かない労働者でも、1週間の所定労働日数が5日の場合は、①の週所定労働日数が4日以下に該当しないので、比例付与には該当せず、通常通り入社後、6ヶ月経過後、出勤率が8割以上であれば、10日間の有給休暇取得の権利を得ることとなります。
そして、比例該当した場合には、週の労働日数(又は年間所定労働日数)に応じて、付与される有給休暇の日数が決められることとなります。
例えば、先程の①②の2つの条件を満たして、1週間の所定労働日数が3日の場合には、入社6か月後の有給休暇の付与日数は、5日となります。
ところで、アルバイトやパートタイマーの場合、雇用の途中で労働条件が変更される場合があります。
では、アルバイトやパートタイマーが比例付与に該当する場合、付与日数は、どの時点での労働条件で判断されるのでしょうか?
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【ここがポイント】
有給休暇が付与される時点は、最初は入社後6ヶ月を経過した時点で、その後は、1年経過ごとに付与されていきます。
この付与される時点を、一般的に「基準日」と呼ばれます。
例えば、4月1日に入社した労働者は、半年後の10月1日に最初の有給休暇が付与され、その後、毎年10月1日に新たな有給休暇が付与されていくので、10月1日が基準日となります。
有給休暇の付与日数は、この基準日の時点での労働条件によって決まります。
ですから、例えば、週の所定労働日数が3日で週の所定労働時間が25時間で、4月1日に雇用されたアルバイトは、比例付与に該当するため、入社6ヶ月の経過後の10月1日に5日の有給休暇が付与されます。
しかし、このアルバイトが、その後の12月1日に正社員へ登用され比例付与に該当しなくなったとしても、5日の付与日数が変わることはなく、そのまま正社員で次の基準日を迎えたら、その時点で通常の労働者の入社後1年6ヶ月後の付与日数である11日の有給休暇が付与されることとなります。
このように有給休暇の付与される日数は、基準日時点での労働条件で決まることとなります。
ただし、これはあくまで付与される日数であって、有給休暇を取得した日の給料については、また別の法律の規定があります。
有給休暇を取得した時の給与は、労働基準法で
① 通常の給与
② 平均賃金
③ 健康保険の標準報酬日額の
いずれかで支払うことが定められています。
通常は、①の通常の給与が使用されます。
ですから、先程の例で、有給休暇の取得日に通常の給与を支払っている場合には、正社員に登用された時点では、有給休暇の日数が変わることはないのですが、正社員へ登用された後に有給休暇を取得した日に対しては、正社員としての通常の給与を支払うこととなりますので、ご注意下さい。
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