Q 正社員からパートタイマーになった場合の有給休暇の日数は?
【質問】
先日、当社の正社員(平成29年4月1日入社)から、親の介護のために、令和1年8月1日より、1日6時間、週4日勤務のパートタイマーとして勤務したい旨の申し出がありました。
当社としては、有能な社員でもあるため、この申し出を受けるつもりですが、1日6時間で週4日勤務の場合、有給休暇は比例付与に該当するため、正社員より付与日数が少なくなるかと思います。
しかし、現在、この労働者の有給休暇は、正社員としての日数が付与されています。
このように労働者の区分が変わった場合の、本年度の有給休暇の付与日数は、どのように取り扱えば良いのでしょうか?
【回答】
有給休暇の付与日数は、その基準日時点での雇用形態によって判断され、年度の途中でご質問のように正社員からパートタイマーへ雇用形態の変更があった場合でも、次の基準日まで付与日数が変更されることはありません。
【解説】
有給休暇は、出勤率の条件を満たした場合、入社後6ヶ月経過後に10日間付与されます。
そして、その後は、1経過後毎に下記の表の通りに新たな有給休暇が付与されています。(原典:厚生労働省)
また、1週間の勤務日数が4日以下(又は年間の労働日数が216日以下)かつ1週間の所定労働時間が30時間未満の場合には、上記表より少ない日数が、比例付与により下記の表の通りに付与されます。(原典:厚生労働省)
例えば、4月1日入社した場合には、6ヶ月後の10月1日に最初の有給休暇が付与され、以後、毎年10月1日に新たな有給休暇が付与されていきます。
この有給休暇が付与される日を基準日と言います。
ところで、今回のご質問のように、基準日から基準日の間に正社員からパートタイマーへ雇用形態が変わる場合があります。
雇用形態が年度の途中で変更されても、有給休暇の付与日数は、あくまで基準日時点の雇用形態によって付与日数が決められ、いったん付与された有給休暇の権利は取り消されないこととなっていますので、次の基準日までは、たとえパートタイマーの身分になっても、正社員として付与された日数は変わらないこととなります。
ご質問の労働者は、平成29年4月1日に正社員として入社しているので、平成29年10月1日に有給休暇が10日付与されています。
そして、翌年の平成30年10月1日に新たに11日の有給休暇が付与されています。
仮に、この労働者が、入社後1日も有給休暇を取得していなかったとした場合、パートタイマーへ雇用形態が変わる令和1年8月1日時点では、21日の有給休暇の権利を有していることとなります。
ですから、この労働者は、パートタイマーへ雇用形態が変更した後であっても、次の基準日である令和1年10月1日までは、21日の有給休暇の権利を有していることとなります。
そして、令和1年10月1日に比例付与により、新たに9日の有給休暇が付与されることとなります。
なお、この場合、次年度に繰り越される有給休暇も11日(平成30年10月1日付与)となります。
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【ここがポイント】
今回、ご説明したように、有給休暇の付与日数は、基準日時点での雇用形態によって付与される日数が決まります。
ですから、今回のご質問では、正社員からパートタイマーへの変更でしたが、考え方は、パートタイマーから正社員へ変更となった場合も同じです。
また、身分はパートタイマーのままですが、年度の途中で週の出勤日数や週の所定労働時間が変更となった場合も、考え方は同じとなります。
最後に少し余談となりますが、平成31年4月1日より有給休暇5日取得が義務化されましたが、それとの関係について少しお話ししたいと思います。
有給休暇5日取得の義務化は、全ての労働者が対象となるわけではなく、平成31年4月1日以降の基準日において、新たに付与される有給休暇の付与日数が10日以上の労働者となります。(なお、この10日には繰り越し分は含まれません。)
先の表を見ていただければわかるかと思いますが、正社員等の原則的な付与日数が適用される労働者は、最初の付与日数が10日ですので、原則的な付与日数に該当する労働者は全て有給休暇5日取得の義務化の対象となります。
しかし、比例付与に該当する労働者で新たに付与日数が10日以上となるのは、太枠で囲った部分の労働者となります。
ですから、今回のご質問の労働者の場合、法律が適用される令和1年10月1日で、付与される日数が9日ですので、有給休暇5日取得の義務化の対象となりません。
ところで、この労働者は雇用形態が変更されず正社員のままでしたら、有給休暇5日取得の義務化の対象となりました。
このように雇用形態が変更されることにより、これまでは有給休暇5日取得の義務化の対象となっていた労働者が、雇用形態が変更された次の基準日から対象とならなく場合があり、またその逆もあります。
特に法律の対象でなかった労働者が法律の対象となる場合には、気が付かないと法律違反となってしまいますので、注意が必要となります。
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