Q 副業を認めないといけないのですか?
【質問】
最近、「働き方改革」の一環として、「副業の容認」が新聞等で報道されています。
ただ、当社では人手不足もあり、社員に時間外労働をお願いする機会も多く、もし、副業を容認しなければならなくなると、時間外労働を拒否されてしまい、経営上、深刻な問題になりかねません。
もし、社員から副業の申請があったら、本当に認めなければならないのでしょうか?
【回答】
法律的に副業が労働者の権利となったわけではありませんので、業務に支障が出る場合には、副業を認めないことも可能です。
ただし、副業を認めないためには、従来と比較して、より合理的な理由が必要です。
【解説】
ご質問にもあるように、昨今、「政府が副業容認へ」という言葉が、頻繁に新聞等で使われています。
「政府が副業容認へ」と聞けば、「副業する権利が法律的に認められた」ような印象を持ちますが、決してそんなことはありません。
と言うか、元々、労働者の副業を制限する法律自体もありませんでした。
これはどういうことかと言いますと、政府機関である厚生労働省が、公表していたモデル就業規則の副業に関する条文を、これまでの「原則禁止」から「原則可能」に変更したのです。
先程も書きましたが、副業に関する法律は自体がないので、たとえ厚生労働省のモデル就業規則の副業に関する条文が変更されても、それ自体は、法律とは全く無関係なことなのです。
ただし、厚生労働者のモデル就業規則は、多くの企業が就業規則を作成する際の根拠としているため、副業に関する条文の内容を原則可能とすれば、多くの企業が、その内容に倣うこととなります。
結果的に、社会全体が副業を容認する流れとなっていきます。
つまり、政府は、社会全体を副業することが極々当然の社会へと変えていきたいと考えており、その手段の1つがモデル就業規則の変更だったわけです。
ですから、簡単に言えば、これは法律的な話ではなく、単に社会の風潮を変える、という話に過ぎないのです。
ただし、社会の風潮が変われば、当然、企業の対応も変わらざる得なくなります。
これはどういうことかと言いますと、例えば、退社後、3時間の副業を認めるか否かの裁判を起こした場合に、これまでは、心労による業務に対する支障等の理由で会社側の主張が認められていたとしても、今後は、労働者側の言い分が認められ可能性が高くなると、といったイメージでしょう。
つまり、副業を禁止するためのハードルが、これまでより高くなったとイメージすれば、分かりやすいかと思います。
ただ、現実に副業により、企業にとって損失となる面があることは否めません。
特に秘密漏洩は、企業にとって死活問題とあります。
ですから、いくら副業容認の流れであっても、副業を禁止する合理性も十分考えられます。
現時点では、そのガイドラインがはっきりとしないので、今後の動きを注視する必要があるでしょう。
ところで、副業容認の動きの中で、現在ある就業規則を変更する必要があるのでしょうか?
▼就業規則の見直しをご検討の方はこちら
【ここがポイント】
最近、ネット等で「働き方改革の一環で副業が容認されました。そのため、就業規則の変更が必要です。」といった文言を見かけるようになりましたが、繰返しになりますが、今回の副業容認は法律的な話ではなく、あくまで社会全体の動きの話です。
ですから、就業規則を変更しなくても、法律的に問題が生じるわけではありません。
ただし、社会全体が副業容認の動きの中で、自分の会社の就業規則が、相変わらず「副業は原則禁止する。」といった文言のままであったら、労働者からすれば、自分の会社に疑いの目を向けてしまうことも考えられます。
ですから、何処かの段階で変更をした方が良いと言えるでしょう。
参考に厚生労働省のモデル就業規則の副業に関する変更後の条文をご紹介させていただきます。
第〇〇条
1 社員は、勤務時間外において、他の会社等の業務に従事することができる。
2 社員は、前項の業務に従事するにあたっては、事前に、会社に所定の届出を行うものとする。
3 第1項の業務に従事することにより、次の各号のいずれかに該当する場合には、会社は、これを禁止又は制限することができる。
① 労務提供上の支障がある場合
② 企業秘密が漏洩する場合
③ 会社の名誉や信用を損なう行為や、信頼関係を破壊する行為がある場合
④ 競業により、企業の利益を害する場合
また、副業に関してはこちらの記事で詳しく書いてあります。
副業に関しては意外な盲点もありますので、是非、お読み下さい。
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