Q 就業規則に社宅費を給与控除できる規定があるのですが・・?
【質問】
当社では、就業規則に社宅費を給与から控除する規定を定めてあります。
会社も滞納を防げるし、社員としても集金の手間も省けるので、社員からも特別異論は出ていませんでした。
しかし、先日、ある新入社員が、「給与から社宅費を引くのは労働基準法違反だ。」と言ってきました。
就業規則に社宅費を控除する規定を定めても、労働基準法違反となってしまうのでしょうか?
【回答】
就業規則に社宅費を給与から控除する旨の規定をしたとしても、労働基準法違反となります。
給与から社宅費を控除する場合には、社員を代表する者との労使協定を締結する必要があります。
【解説】
労働基準法では、給与支払日に支払いが決定している給与については、その全額を支払わなければならないとしています。(労働基準法第24条)
これは、言い換えれば、「給与から一切控除してはいけない。」という意味です。
一般的に全額払いの原則と言われています。
確かに、給与が全額支払わなければ、労働者の生活は安定しないため、このような原則が定められたのですが、この規定をあまりに厳格に運用してしまうと、会社だけでなく労働者にも大きな不便が生じてしまうため2つの例外を認めています。
①法令に別段の定めがある場合
所得税法による源泉徴収や健康保険法、厚生年金保険法による社会保険料の源泉徴収など法令により給与から控除できる旨が定められている場合には、原則払いの例外とされています。
②労使の書面協定がある場合
組合費、社宅費、購買代金、厚生施設の費用等事理明白なものについては、労働者代表との労使協定が締結した場合には、給与からの控除が認められています。
従って、ご質問の社宅費は、②の例外の項目には該当はしますが、就業規則に規定するだけでは給与より控除することはできず、労働者代表との労使協定の締結が必要となってきます。
ですから、現状では、その新入社員の方が言っているように、労働基準法違反の状態と言えますので、早急に労使協定を締結するようにして下さい。
なお、締結した労使協定は、労働基準監督署への届出は必要ありません。
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【ここがポイント】
今回、ご説明した労使協定よる給与からの控除ですが、これには重要なポイントがあります。
給与からの控除は、労使協定を締結すれば、どのようなものでも控除できるわけではなく、あくまで事理明白なものに限ります。
事理明白とは、物事の道理や筋道がはっきりとしていることを意味しますので、組合費や社宅費、購買代金、社内預金、給食費等が考えられます。
ここで注意していただきたいのが、よく、社有車や設備、備品等の修理代を給与から控除しているケースがありますが、修理代は事理明白なものには該当しないため、たとえ、労使協定を締結しても、給与からの控除は、労働基準法違反となってしまいます。
この点については、誤った認識を持たれている経営者の方が、本当に多いですので、ご注意下さい。
なお、あくまで給与から控除できないのであって、労働者が負うべき額を負担させることは差し支えありません。
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